2017年4月20日 第16号

 米ドナルド・トランプ大統領は18日、ウィスコンシン州で演説を行った。アメリカ国内でも酪農業が最も盛んな同州。そこに集まった聴衆を前に、カナダではアメリカの酪農業や、その他の業種に不公平なことが起こっている、これに対しアメリカ政府は「アメリカの酪農業のために立ち上がる」とカナダを標的にし歓声を浴びた。

 カナダでは、酪農業や養鶏業に対して供給管理制度を導入している。需要と供給のバランスを図り、国内産業が大きな打撃を受けないことを目的とする制度で、同産業の輸入品には高い関税をかけている。

 さらに酪農業についてはカナダ政府は昨年、チーズの原材料となる限外ろ過乳の輸入に課税を導入した。オンタリオ州の酪農家からの強い要望への対応だった。それまではNAFTA(北米自由貿易協定)により免税となっていた。

 この課税導入で、ウィスコンシン州とニューヨーク州の約70酪農家に影響が出たとされている。そのため両州からアメリカ政府に対応するよう要望が出ていた。さらに先週になってトランプ大統領は、アメリカ国内酪農業4団体から、カナダがアメリカとの貿易で協定に違反していると非難する書簡を受け取っている。

 一方、カナダの酪農関係団体は、今回のトランプ大統領のカナダバッシングは国内向けの対応とみている。これについてはカナダ政府が対応してくれるだろうと各団体が声明を発表した。

 トランプ大統領は同日、「アメリカ製品を購入し、アメリカ人を雇用する」ことを強調する「バイ・アメリカン」実施のための大統領令に署名した。ウィスコンシン州は共和党が「アメリカ・ファースト」を掲げて民主党から勝ち取った州。「NAFTAはアメリカの企業や労働者に悪影響を及ぼしている。我々は大幅変更をするか、もしくは破棄することもあり得る」と必要であればNAFTAの大幅変更もあり得ることを示唆した。

 今年初めにワシントンで行われた、ジャスティン・トルドー首相との会談後の記者会見では、NAFTAの変更は「小幅なものになる」と発言したトランプ大統領。そこから大きな方向転換となる発言とカナダ攻撃がこの日は続いた。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。