2017年2月23日 第8号

 第二次世界大戦中の、旧日本帝国陸軍による南京大虐殺を否定する自著を、経営するホテルチェーンの各部屋に配布したことで中国から非難を受けているアパ・グループの元谷外志雄代表。その彼が、今度は反ユダヤ主義ととられる発言をしていたことがわかり、ユダヤ人団体から抗議を受けている。

 自民党の参議院議員、片山さつき氏との対談形式の記事が掲載されたのは、同グループが北米に展開する38のホテルの各部屋に置かれていた月刊誌『アップルタウン』の2月号。バンクーバーのユダヤ人コミュニティのメンバーがこれを見つけ、アパ・グループに抗議し謝罪を求めている。

 記事のタイトルは『トランプ氏の大統領就任は、憲法改正の機会』だが、その副題『ユダヤ人グローバリズムへの、アメリカの反撃』は、ユダヤ人団体からの抗議を受けた直後にオンライン版から削除されている。(印刷版は、すでに3月号に置き換えられている)

 この中で元谷氏は、ユダヤ人はアメリカの情報、金融、また法律をあやつり、そこから得た巨額の利益を租税回避地に送り税金逃れをする、いわゆるグローバリズムの恩恵を受けている、またユダヤ人の多くは民主党を支持していると発言している。

 またユダヤ人に対するアメリカ人の怒りが、トランプ大統領を選んだと指摘。選挙活動中に不謹慎な女性蔑視の発言を繰り返した同氏を、白人女性の50パーセント以上が選んだ理由は、この怒りの爆発以外考えられないと語っている。

 この元谷氏の発言を、トロント在住で元カナダユダヤ人議会(Canada Jewish Congress)CEOのバーニー・ファーバー氏は「歴史的かつ典型的な反ユダヤ主義」だと非難している。メディアの取材の中でファーバー氏は、これがネオ・ナチからのコメントなら、そういうものだと理解もできるが、日本経済のけん引役ともいえる人物の発言だとは、正直あきれてものが言えないと語っている。

 また、イスラエルおよびユダヤ人問題センター(Center for Israel and Jewish Affairs)も、この発言に激しく抗議。これに対し元谷代表は自分が反ユダヤ主義ではなく、イスラエル国民との友好関係を維持し文化交流を通じ会話を続けていきたいとの声明を発表。しかし同センターは、自身の反ユダヤ発言をただはぐらかしているだけで、責任を取ろうとしていない元谷氏の姿勢を糾弾している。

 また元谷氏は同じ記事の中で、北米の同グループのホテルでは日の丸を掲揚してほしいという提案に対し、カナダ国内には想像以上に反日派の人々が多いと、激しく非難もしている。

 さらに別の号では、第二次大戦でもし旧日本帝国陸軍と海軍が共同でハワイ真珠湾を攻撃・占領し、その施設を利用すると共にパナマ運河を破壊できていれば、もっと有利な講和条約に持ち込めたはずだと発言し、カナダ人から抗議を受けたこともある。

 

 

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