2017年2月2日 第5号

 アルバータ州カルガリーに本社を置くトランスカナダ社は1月26日、アメリカ国務省にキーストーンXLパイプライン建設計画承認のための許可申請を提出したと発表した。

 同月24日にトランプ大統領が同計画とダコタ・アクセス計画の2件の石油パイプライン建設計画を推進する大統領令に署名したことを受け、トランスカナダ社が早速対応したもの。

 同社は「(パイプライン建設計画が)アメリカのエネルギー安全保障を強化し、国益を維持するだろう」との声明を発表した。

 同パイプライン建設計画は、アルバータ州中東部のハーディスティから米国ネブラスカ州スティールシティまで1900キロメートルのパイプラインを建設し、そこからガルフ湾まで延びるパイプラインにつないで石油精製所にオイルサンドを運ぶ。完成すれば一日80万バレルを運ぶことになる。

 この計画は長年同社とカナダ保守党前政権が推進してきたが、2015年後半にバラク・オバマ前大統領が中止を決定。アメリカの環境政策に影響すると反対理由を説明した。さらにネブラスカ州では、パイプラインが通ることによって影響が出る土地の所有者が買収に応じておらず、パイプライン建設に関しては徹底的に戦うとしている。

 大統領令は発令されたものの、申請書提出後すぐに承認されるというわけではない。今後60日以内に承認の是非が発表される。

 今回の発表をカナダ政府やアルバータ州政府は歓迎している。連邦政府ジム・カー天然資源相は24日、「自由党政権は発足した時から同プロジェクトについては推進してきた」と述べ、カナダにとっても、アメリカにとっても、利益があると信じていると語った。

 アルバータ州レイチェル・ノッテリー州首相も、トランプ大統領の決定は歓迎できるものと、原油価格急落以降苦しんでいる同州の天然資源産業にとっては朗報と語った。その上で、アルバータ州としてはカナダの天然資源をアメリカ以外の市場に輸出することも重要との認識を示した。連邦政府は昨年、アジア市場への輸出を目的としたアルバータ州エドモントン市近郊からブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市までのキンダーモーガン社によるトランスマウンテン・パイプライン拡張計画を承認している。

 カナダは世界で3番目に多い石油埋蔵量を保有しているが、97パーセントをアメリカに輸出している。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。