2017年1月1日 第1号

 環境保護活動団体がトランスマウンテン・パイプライン拡張計画を承認したカナダ政府の判断に対して違法性があるとして19日、アルバータ州カルガリー市の連邦上告裁判所に提訴したことが12月20日分かった。

 法律事務所エコジャスティスを通して提訴したのは、リビング・オーシャン・ソサエティとレインコースト・コンサベーションの2団体。今回の自由党政権の決定は、絶滅の危機に晒されているブリティッシュ・コロンビア州南西部周辺の海洋に生息するシャチの生態系に大きな影響を及ぼす可能性があり、カナダの絶滅危惧種保護法に違反する可能性があると主張し、再調査をするよう求めている。

 キンダーモーガン社が手掛けるトランスマウンテン・パイプライン拡張計画は、アルバータ州エドモントン近郊からBC州バーナビー市までの現存する1150キロメートルのオイルサンドを運ぶパイプラインを拡張する計画。カナダ政府は現在アメリカだけに頼っている国内で産出されたオイルサンドの輸出先を、アジア方面にも拡大したい考えで、バーナビー市まで運ばれたオイルサンドはここからタンカーでアジア市場へと輸出される計画になっている。

 完成すればパイプラインのオイルサンド輸送量は現在の3倍に増加し、タンカーの航行数は7倍になると試算されている。バンクーバー市に隣接するバーナビー市からタンカーがバラードインレットを通り、太平洋へと抜ける間にシャチの生息地があり、タンカー航行数の大幅な増加がシャチの生態系に大きな影響を与えると訴えている。

 カナダ政府は2016年11月29日、国内で予定されていた3件のパイプライン計画のうち2件を承認すると発表。1件はアルバータ州からアメリカへと延びるパイプライン計画で、国内では特に大きな反対はなかった。そしてもう1件がトランスマウンテン計画。こちらは計画当初から、環境活動家をはじめ、パイプラインの近隣先住民族やバンクーバー市、バーナビー市などの関係市町・住民から強い反対があった。

 今回の提訴は、カナダ政府がトランスマウンテンを承認して以降としては初めてとなったが、すでに他にも、バンクーバー市、バーナビー市がNEBの調査に対して提訴、4つの先住民族も同様の提訴を行っている。

 連邦政府はトランスマウンテンの承認前に15億ドルの海洋保護計画を発表。うち3億4千万ドルがシャチを含めてクジラ類の保護に充てられるとしている。ジャスティン・トルドー首相はパイプライン計画承認発表時には、海洋保護が保障されなければ個人的にも容認することはなかったと語っている。

 ただ今後も政府に対してこの件での訴訟は増える可能性があると環境活動家らは予想している。

 

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