2016年11月17日 第47号

 アメリカ大統領選挙で共和党候補ドナルド・トランプ氏が予想外に勝利したことで、カナダへの悪影響を懸念する声が上がっている。そんな中、トランプ次期アメリカ大統領が決まった翌日の9日、ジャスティン・トルドー首相はトランプ氏に祝辞を送り、次期共和党トランプ政権と協力していくと語った。

 オタワでWEデー(若者の権利について語り合うイベント。2007年トロント発祥で、現在はカナダ全国をはじめ、アメリカ、イギリスでも行われている毎年恒例イベント)に参加していたトルドー首相はトランプ次期政権について、これまで通り二国間関係の強い結びつきには変わりはないとして、これからも隣国として、友人として、同盟国として、貿易、投資、国際平和、そして安全保障で協力していくことを期待していると語った。

 しかし自由党政権が発足して以降、トルドー首相はオバマ民主党政権と親密な関係を築き、NAFTA(北米自由貿易協定)、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)などの自由貿易を含む経済政策、安全保障、環境対策などで緊密に連携していくことを強調していた。

 今回、これらの政策への反対を主張して勝利したトランプ氏が次期大統領に決まったことで、こうした政策への先行きの見通しが立たず、米加間の関係に大きく影響するのではないかとの声が上がっている。

 トルドー首相はNAFTAに反対しているトランプ氏に対して話し合いに応じる用意があると語り、強力に継続を求める構えを見せている。

 また環境政策では自由党政権がすでに発表した炭素税導入について、トランプ次期政権が否定しようとカナダでは導入を目指して進めていくと語った。

 トランプ氏が勝利したことで、2国間で唯一確実に前進するとみられているのが、キーストーンXLパイプライン建設計画。カナダでは保守党政権時代に協力に推進していたアルバータ州と米テキサス州を結ぶパイプライン建設で、環境問題を理由にオバマ大統領が建設停止を決定した。しかしトランプ氏は同計画を再開すると選挙戦で公約し、トルドー政権も計画を後押ししている。野党保守党ローナ・アンブローズ暫定党首は、トランプ次期大統領とできるだけ早く話し合い最優先で進めるべきと語った。

 10日の記者会見では、前夜にトランプ氏と電話会談し、大統領選に勝利した祝辞を述べるとともに「カナダに招待した」ことも明かした。会談時間は短かったが、これから建設的な関係を築いていく最初としては十分だったとも語った。

 

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