ブリティッシュ・コロンビア州ポート・コキットラムの自身が経営する養豚場で複数の女性を殺害した罪で、終身刑に服しているロバート・ピクトン受刑者。その犠牲者は49人にのぼるのではないかとの噂もある。この事件のいきさつを本人自ら明らかにした本が、アメリカの出版社によってインターネット上で販売されはじめたが、世間の強い非難にあい、取り下げられた。

 90年代後半、バンクーバーのダウンタウン・イーストサイドで次々と起こった娼婦の失踪事件に端を発したこの事件では、2002年にピクトン受刑者が逮捕された後、警察は殺害現場となったポート・コキットラムの養豚場を徹底的に捜査、33人の女性の遺体の一部、またはDNAを確認している。

 取り調べの過程で同受刑者は6人の殺人を認めたほか、検察はさらに他の20人の殺人について起訴の予定だったが、すでに刑が現行法で科せられる上限に達したため、保留とした経緯がある。

 22日にオンラインストア大手のアマゾンで発売が開始された、ピクトン受刑者の手記『ピクトン、自ら語る(Pickton: In His Own Words)』を出版したのは、自費出版などを手がけて成長しているアメリカ・コロラド州にあるアウトスカーツ・プレス。144ページのこの手記の背表紙には『被害者は6人にとどまらず、最高49人と言われる連続殺人の終身刑囚ロバート・ピクトンが、その現場となったポート・コキットラムの家族経営養豚場で何が起こったのか、自ら明らかにした』と記されていた。

 この本の出版が明らかになるや否や、各方面から非難が沸き起こった。BC州首相クリスティ・クラーク氏は犠牲者の家族の気持ちを思うと「言葉が出ない」とし、犯罪者が自らの犯行をネタにして利益を得ることを阻止できるよう、政府として可能な限り手を尽くすと取材に語っている。他州(アルバータ、サスカチワン、オンタリオ、およびノバスコシアの各州)では、服役囚が本を書くなどして自らの犯罪から利益を得る行為を許可するかどうかの権限を、州政府に与える法体系をすでに整備している。結局、アウトスカーツ社は同日、受刑者に出版の協力をすることは自社の方針にそぐわないとして、アマゾンにこの本をオンラインストアから削除するよう要請したことを明らかにしたとともに、このことで精神的苦痛をこうむった被害者の家族に謝罪した。

 またBC州法務次官マイク・モリス氏は、収監中のピクトン受刑者の原稿が、どのように刑務所外に持ち出されたのかを調査すると話している。

 なお、アマゾンがそのオンラインストアで服役中の犯罪者の著作を販売し非難されたのは今回が初めてではない。昨年11月にはオンタリオ州出身で、無期懲役刑に服役している強姦・殺人犯のポール・ベルナルド受刑者が書いた政治フィクション小説を発売、世間の強い非難を浴びたため2〜3日後にウェブサイトからこの本を削除して、事実上販売を停止している。

 

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