VIII 前世療法の実際

その7(1月26日号)では、個人的無意識について取り上げ、子ども時代の記憶の身体的・潜在的意識の統合について述べました。今回は、その個人の意識・個人の無意識を超えた意識(ユングの集合的無意識)から見た前世療法の実際の過程について、述べたいと思います。
以下に述べる前世療法のセッションは、Dr. Weissの前世退行の技法だけでなく、筋反射テスト、BodyTalk、中国医学の理論などによる身体療法を用いています。

 

身体の痛みを前世療法で解放
Aさんは、長い間腰痛で苦しんでいて、カイロプラクター、フィジオセラピー、マッサージ、鍼灸などあらゆる身体治療を試してきましたが、常に一時的によくなってはまた症状が再発するという状態を繰り返していました。それで、前世療法で何かその原因が見出せないかと、私のオフィスを訪れたのでした。
前世退行で、彼は1450年頃(註1)パプアニュギニアのシャーマンでした。『私自身は何か長い棒(杖?槍?)のような物を右手に持って立っています。自分の回りや前に立っている人たちは皆裸の上半身だけ見えます。今GunとPain(註2)ということばが出てきたようですが…』(註3)と語り始めると同時に、いきなり全身をねじりうめき声をあげながら、痛みに耐えている状態が見られました。あとで明らかになったことですが、実はこのとき、このシャーマンは島を襲ってきた白人に銃で、卑怯にも背面から腰〜右足を撃たれたのでした。『セッション中、右足の裏側が痛み始めると同時に骨盤左上部が非常に痛みました。』『セッションが終わりマッサージテーブルから降りると、不思議なことに左骨盤上部と右側の同じ部位から空気が漏れ出すように腰全体の痛みが消えていきました。』
Aさんの場合の腰の痛みは、解放されないまま記憶の底に深く眠っていた、シャーマンだった前世の身体記憶と深い関連があったと考えられます。

 

怒りの根源を探る
Bさんは、瞑想、ハワイアン・シャーマン、ガイドライト、リコネクションなど、様々なスピリチュアルなワークのトレーニングを受けている人でした。しかし、そうしたスピリチュアル・ヒーリングや代替医療に関心を持たない人々、さらに古い既製概念からこれらを批判・非難する人々に理由のない強い怒りを覚えていました。それを見つけるために、前世療法を受けてみたいと私のオフィスを訪れました。彼女が見たのは、1550年頃(註1)のイタリア。キー・ワードは「Church, Pain, Healer, Medicine Man, Body」(註2)で、本人の前世は40代のフェルメール風の質素なドレスを着た女性。様々なハーブを使って、病気の人々を治療していましたが、『私が処方したハーブで人々が癒されることを、教会が快く思っていない。私の元を訪れる人々に対し、それは信仰に背くことになる、地獄に落ちるとか言っていると聞いた。魔女というレッテルを貼られ、捕らわれる恐怖を感じている、徐々に包囲網が狭まっているのだけれど、自分が仕えている貴族のご主人が病のためその方を治療しなければならない責任感を感じていて、その町を去ることができない、逃げることができない。』『…最期は、捕らわれてプリズンにいる、灰色のチュニックを着て、悲しみと閉塞感、結局仕えていた方は亡くなり、彼の死に深い絶望感。自分は助けることができなかったという悲しみ、さらにその上、その方が亡くなったのは私のせいと無実の罪をきせられ囚われてしまった。異端とされ、怪しい悪しきことをしたという疑いをかけられた、これは明らかに私を排斥するための口実。そのことに対する憤り、怒り、絶望感。』
Bさんは、カソリックの学校で教育を受けたのですが、カソリックの教育そして教会に対し長い間ずっと強い敵愾心、憎しみを感じていましたが、その理由が初めて明確になったと語っていました。さらに、代替医療、スピリチュアル・ヒーリングなど新しい考え方を伝統的な古い既製概念から批判する人々に対する怒りも、充分納得がいったのです。さらに、その中世のイタリアで非業の死を遂げたヒーラーの女性に対し、『人々を助けるために自分の役割を全うしたのだから、自分の人生に誇りを持っていい、自分を曲げず偽ることのない悔いのない人生だったと思う。』と現在の彼女から肯定的なメッセージを送ることで、その女性も、そして現在の彼女自身も癒されることができたのです。

 

註1:この年代は、筋反射テストから得られた情報です。
註2:Dr. Weiss は前世につながるためのキーワードとして、「戦争、兵隊の行進、銃、処刑、痛み、洪水、飢餓、動物、馬、教会、奴隷、葬儀、誕生」など、36のリストを作成しています。1)その人の問題に密接に関係しているキーワードを筋反射テストによって、見つけることができます。
註3:『』はセッション中にクライエントによって語られた言葉。

この二人の方の体験をここに記載することについては、本人の了解を得ています。

参考文献
1)Brian L. Weiss, M.D., “Through Time into Healing”, A Fireside Book, 1992

 

2012年2月9日号(#6)にて掲載

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