IV 私たちが自分の現在を生きる
ために前世療法はある

前回、「私にとっての前世療法 その3、Ⅲ Dr. Stevensonの研究―前世を記憶する子どもたち―」での報告では、多くの子どもたちが語る前世の記憶の遡りは多くが大体20年以内で、また同じ国内に限られていることが多かったため、事実の確認の調査が可能でした。2)
この一方で、Dr. Weiss の例の場合は、あくまでも、心理療法の一環として行っていて、退行催眠で語られたクライエントの前世について、調査確認はなされていません。さらに、多くのケースが何千年前の歴史に遡ったり、あるいは本人も全く行ったことがない外国であったりすることが多く1)、直接の調査をすることは難しいといえます。
しかし一方で、Dr. Weissの同僚である内科医Dr. Robert G. Jarmon1)3)の報告で、事実が確認された例があります。Dr. Jarmon のクライエントは若いビジネスマンで、夜、月光に非常な恐怖を抱いていましたが、その理由が全くわかりませんでした。退行催眠で出て来た彼の前世は、第二次大戦に参戦し、川辺でドイツ軍に背後から撃たれ戦死したアメリカ軍の兵士であったという事実でした。その彼が撃たれたときの最後の記憶は、川面に月光の輝くシーンでした。しかも彼は、退行催眠中、その前世の名前、自分の所属していた軍の駐屯地だけでなく、卒業した大学名と1930年という卒業年まで言っていたため、後に妻がその大学に出かけ、卒業名簿からその人物が実際に存在したという事実が判明したのです。
いずれにせよ、このビジネスマンは、これは前世の体験で、遠い過去に済んでしまったことであって、現在の自分はそのことにもう苦しむ必要はないのだと、前世療法によってはっきり認識できたときに、長い間苦しんでいた月光の恐怖から開放されたのです。
実は、ここで重要なのは、前世でその人がその兵士であったかどうかではありません。その人の潜在意識と身体が現在もそう思い込んでいて、そこから抜け出せていなかった、現在にいなかったということが重要なのです。
私がこの7月、参加したDr. Weissの前世療法のワークショップでも、かなり衝撃的な事実が判明しています。それぞれ全く異なった国から参加した3名の参加者が、ワークショップの前世退行で、中国清朝末期、歴史的に特殊な状況にあった3人の家族であったと判明し、ここで劇的な再会(!)を果たしたのでした。また、その中の一人が自分の姓Z○○○を憶えていました。そして、さらにわかったことは、その後で私はニューヨーク市内に友人を訪れるのですが、その家族について語られた中国での特殊な状況の詳細とその姓Z○○○から、その友人の親友Mさんの曾祖母(Mさんの家族は父の代に中国からアメリカに移住)の家族の人生とわかり、私と友人は唖然としたのです。*註1
そのワークショップでは、3人が思いがけず劇的な再会を果たしたという報告を聞いたとき、参加者全員が衝撃で言葉を失っていました。しかし、Dr. Weissは「前世を思い出したということにあまり囚われないように。その前世から現在あなたが受け取るメッセージは何でしょうか? 常に現在の自分に焦点を当てるようにして下さい。」とコメントしていました。さらに、前世で起きたことは既に過去のことで、もう終わってしまっているのだということを、自分自身が意識レベルではっきり認識することが大切だとも述べられていました。
というのは、Dr. Stevensonの例に見られた2人の少年も、自分の現在を生きていませんでした。少年プラカシはずっと前世の家族を懐かしむあまり、常に心ここにあらず学業もおろそかになり、ついには落第してしまいます。また少年ビシェンも、かっての裕福な生活が忘れられず、現在の家族の質素な生活を軽蔑し、さらに子どもでありながらブランデーを飲む、愛人について語るなど、心理的に大きな問題を残しています。これらのアジア各地でのストーリーを読むたびに彼らのその後の人生を思い、私はつらい気持ちになりました。これらの報告の行間に読み取れる、子どもたちが自分の現在の生活の根を下ろせなかったという悲劇を考えるたび、私はこの21世紀の心理学の大きな変化と発展に感謝するのです。
その感謝とは、精神医学・心理学という科学的とされている学問が、最近急速に、スピリチュアルな精神世界の領域にも足を踏み入れざるを得なくなったという事実にです。その少年たちが生きた当時1950〜1960年代にはなかったであろう前世療法(心理療法)を、現在私たちが受けることができる恩恵を、私はいつも心しているのです。

*註1:プライバシーの保護のため、ここでは内容の詳細には触れません。また、この記載についてはMさんの了解を得ています。

引用文献
1)Brian L. Weiss, “Through Time into Healing”, A Fireside Book, Published by Simon & Schuster,1992
2)Ian Stevenson, M.D., “Twenty Cases Suggestive of Reincarnation”, Charlottesville: University ofVirginia Press, (Second edition), 1974
3)Robert G. Jarmon, “Discovering the Soul: The Amazing Findings of a Psychiatrist and His Patients”, Are Pr, 1996

 

2011年12月8日号(#50)にて掲載

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