Dr. ワイズ(Brian L. Weiss, M.D.)の前世療法
―7月、バンクーバーの講義に参加して― (1)
ウィンザー原田直子

7月27日、前世療法についての多くの著書・翻訳書で、日本人の間でもよく知られているDr. ワイズ(註1)が、バンクーバーにて一般の人々対象の前世療法の講義と催眠の実習をされた。私自身は、ニューヨークで、2011年に初級コース、2012年に上級コースの前世療法のトレーニング・ワークショップ(註2)を受けているが、ここバンクーバーで講義を聞けることをとても楽しみに、何人かの友人たちと、そして夫も誘い、参加した。会場のバンクーバー・コンベンション・センターは、1200名の参加者で埋め尽くされた。

 どこかのスーパーで無料で貰ったのかもしれない、グリーンのエコバッグを提げて、Dr. ワイズが飄々として壇上に上がると、「私のワークショップを受けたことがある、あるいは本を読んだ、CDを買って練習している方?」と会場の参加者に手を上げてもらったあと(参加者の約90%以上の人々が挙手)、「では本も読んだことがない、CDも聴いたことがない方」と聞き、ぱらぱらと数少ない人が挙手すると、「その方たちは、すぐ会場を出てください」(会場爆笑)、「冗談です、私にもエゴがあります」この冗談で、一気に会場の空気が和むのがわかる。
 Dr. ワイズの謙虚で飾り気のない、しかし深く響く柔らかな話し声は全ての人々を魅了するものがある。このゆったりとした話し振り(聞いているだけで、思わずすーっと催眠にかかってしまいそうな)については、ニューヨークのワークショップで、奥様のキャロルが仰ったことがある。「よく聞かれるんです、Dr. ワイズは家でもあんな話し方なんですかって。ええ、そうです、家でもいつもああなんですよ。(会場笑い)」

I 心を開く
 講義のたび、いつもDr. ワイズが強調されることは、「前世療法のワークショップに参加したからといって、どうしても自分の前世を見なくてはならないと言うことはないのです。あなたの抱えている恐れ、不安、哀しみが少しでも癒され、リラックスでき、希望が持て、周りの人に愛を持って接することができるようになれたら、本当に素晴らしいです。また、心をオープンにするためには、前世療法以外にもいろいろな扉・方法があるのも忘れないで下さい」と。

 この例として、Dr. ワイズがマイアミのクリニックで前世療法を行っていた当時のクライアントAさんの話をされた。Aさんは非常に成功していたビジネスマンで、彼はDr. ワイズのCDを買い込み、それを何日も聴いては催眠から前世に移行する実習を続けていたのだが、自分の前世のビジョンを全く見ることができず、業を煮やして、Dr. ワイズのクリニックを訪れたのだった。最初のセッションの催眠療法の誘導によって、彼は非常にリラックスをし、パープルの美しい光に包まれる。その催眠状態から醒めたあと、Dr. ワイズが「それは本当に素晴らしい」というと、「でも、前世のビジョンが見られなかった」と大きな不満をもらし、また次回の予約をして帰った。
 そして、次のセッションで彼が言うには、彼の妻が、彼の買い込んだDr. ワイズのCDに関心を持ち、自分で催眠の実習を始めたところ、「何と彼女は4回も自分の前世を見たといっている!自分はあなたのクリニックに何度も通って、自分で実習も続けているのに、まだ一つも前世を見ていない。なのにここに一度もいたこともなく治療を受けていないと妻が4回も前世を体験するとは!」と強いジェラシーを表現し、これはフェアではないと、苛立っていた。Dr. ワイズが人と比較したり競争しないようになだめ、再び催眠状態に入らせたところ、Aさんは天使のマイケルの姿を見る。その天使のマイケルが、Aさんに「You are too serious.(あなたはまじめすぎる)」といったそうだ。Dr. ワイズは(too seriousという言葉に笑いをかみ殺しながら)天使のマイケルが現れるなどと、これはまたすごいと思い、それを伝えたが、彼はまたしても「でも、前世のビジョンを見ていない」と言った。
 そうこうしているうちに、彼のビジネスの方法が変化し始め、自分のビジネスで得た利益を多くの団体に寄付をしたり、公共のための多くのチャリテイを行うようになってきていた。そんなあるとき、彼はついに、彼自身の前世を見ることができるようになったという。Dr. ワイズはこの教訓として、私たちはあまりにも自分自身のエゴにとらわれていて、これが欲しい!と、自分の欲求のみに焦点を当てがちである。自分の欲求に執着をするあまり、その欲求以外に自分が授かった幸運や受けた恵みを全く無視し、感謝しようとしない。その狭い心を解き放って、自分の心をオープンにしたとき、突然ギフトが降りてくる。前世療法をしているからと言って、前世をどうしても見なくてはと、「too serious (深刻)」になりすぎることが、かえってそれから遠ざけてしまうことになると。

<続く>

註1:Dr. ワイズ(Brian Weiss, M.D.):精神科医。イエール大学医学部卒。FL州マウントサイナイ病院の精神科部長兼マイアミ大学医学部精神科の教授を勤め、西洋医学の正統的精神医学の主流を歩んでいた。ところが、ある日、長く重篤な不安障害を患い、何人もの精神科医、治療者によっても治癒できなかったクライエントがDr. ワイズを訪れる。そして催眠療法によって、彼女はDr. ワイズ自身も全く予想だにしなかった前世を語り始め、その結果重篤な症状が完治してゆく。これまでの現代の科学・医学では説明できないその事実がDr. ワイズの精神科医としての伝統的な考えを大きく転換することになる。多数の前世療法につしての本を出版、現在はクリニックでの診療を離れ、前世療法のワークショップを世界各国で行っている。 www.brianweiss.com

著書:
・Brian L. Weiss, M.D., “Many Lives, Many Masters”, Fireside, 1988
(『前世療法―米国精神科医が体験した輪廻転生の神秘』山川 紘矢、山川 亜希子訳、PHP文庫 1996)
・Brian L. Weiss, M.D., “Through Time into Healing”, Fireside, 1992
(『前世療法2 ― 米国精神科医が挑んだ、時を越えたいやし』山川 紘矢、山川 亜希子訳、PHP文庫 1997)
・Same Soul, Many Bodies: Discover the Healing Power of Future Lives through Progression Therapy (2005).
・Miracles Happen: The Transformational Healing Power of Past Life Memories (2012)など、多数。

駐2:Dr. ワイズの前世療法のワークショップの報告は、「私にとっての前世療法」の題で、バンクーバー新報(2011年10月 20日~2012年3月8日)において、9回にわたり掲載したので、それをご参照下さい。

プロフィール:
Dr. Naoko Harada Winther, R.C.C.
東京医科歯科大学医学部において、精神医学の研究で医学博士号取得。
アメリカ、カナダで、従来のカウンセリングの方法を超える、Three
In One, BodyTalk, などのApplied Kinesiology(筋反射テスト)に加え、
Quantum-Touch などのエネルギーワーク、そしてDr. Weiss による前世療法
のトレーニングを受ける。<心と身体と魂>の統合をめざす新しい心理療
法を目指している。BC 州公認クリニカルカウンセラー、Broadway にカウンセリング・オフィスを持つ。

読者の皆様へ

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