
予選時の瀧澤選手、ゴール直前で
2月21日、雲一つなく晴れ渡ったサイプレスマウンテン。ここで男子スキークロスのドラマが展開した。
日本からの出場
瀧澤宏臣選手を応援
スキークロスは、フリースタイルスキーの一つであり、バンクーバー五輪で初めて正式に採用された種目。ジャンプ台やバンクなどの障害物のあるコース(今回は1・4キロメートル)を4人の選手で同時に滑り、順位を競う競技である。
レース開始前、実況のアナウンサーが観戦客に向かって各国の名を呼び、それに応えて観客たちがにぎやかに拍手に旗振り、足を踏み鳴らす。もちろんカナダの時がものすごい歓声だが、南国からたった一人出場したジャマイカのエロール・ケール選手は注目を集めて、ジャマイカへの声援はカナダ並みの大きさだった。日本からは瀧澤宏臣選手、カナダからは3人が出場した。瀧澤選手のサポーターグループの一人、金子尚弘さんは「彼の神がかったところがいい。スキークロスの第一人者です」と瀧澤選手の魅力を競技前に語ってくれた。
そして早朝始まった予選。実況アナウンスが「彼ほどのビッグスマイルの選手はいない」と紹介して滑走スタート。瀧澤選手は首位から2・5秒遅れた記録で予選を通過し正午の決勝トーナメントに進んだが、1回戦で残念ながら敗退した。ひときわ大きな声を上げて瀧澤選手を応援していたグループのメンバーは「彼は今年1月のワールドカップで大腿骨に大きな怪我を負った。それにもかかわらずよく健闘したと思う」と語り、試合終了後もそのがんばりを讃えるように旗を振り続けた。
試合後、瀧澤選手は記者団に、今回で現役を引退し、指導側に回る意向を表明。初出場のオリンピックは新たな人生を踏み出す記念すべき日となった。
無念のカナダ
決勝の最終戦、カナダで期待のかかったクリストファー・デル・ボスコ選手はレース後半、観客の視野に入り、歓声が最高潮に達したときに、ジャンプ着地で惜しくも転倒、メダルを逃した。結果、男子クロスは前評判通り、スイスのミヒャエル・シュミット選手が金、オーストリアのアンドレアス・マット選手が銀を勝ち取った。
試合だけではない面白さ
斜面の下側でゴールを眼下に臨む。その必要な高さのために、観客席へは階段に次ぐ階段でようやくたどり着く。空中にはロープウェイ状に素早く移動するカメラ、特設ステージではライブ演奏、通路では「ミーガ」と「クワッチ」の着ぐるみたちが手を振る。笑顔で声をかけるボランティアの人々、共に興奮し、一緒に肩を落とす観客―こうした諸々の体験がオリンピックの楽しみでもある。選手と観客、舞台裏の人々で織り成すドラマは、早くも後編であるパラリンピックへと向かおうとしている。
|
写真撮影にひっぱりだこの、クワッチ(右)とミーガ(左) |
(取材 平野香利)
この記事掲載は2010年2月25日第9号です
|