えぐぜくてぃぶ
東洋タイヤカナダ
社長 平塚広志 氏
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登山の厳しさと喜びを思い、仕事での苦労をかわす
今年5月、東洋タイヤカナダ社長に着任した平塚広志(ひらつかひろし)氏は今回が3 回目の海外赴任。仕事で苦労した経験としては、最初の海外赴任先であったイギリスが真っ先に思い出される。社内業務のコンピュータ化を進めるなかで、退社時間は深夜
時、 時となる毎日。
途中、勤務先である現地法人がロンドンからバーミンガムの近くへ移転。だが「子供達の日本人学校通学のため」、住まいはロンドンのままに、毎日 125キロ先の勤務先を往復した。
「高速道路で10 分仮眠して、家に着いて1 時間ほど寝てまた出社するという日が何回もありました。日本人一人での駐在でしたから、一人で何でもかんでもやらなくちゃいけない。
その代わり、営業以外に、経理から会社経営まで、貴重な勉強をさせてもらいました」。そんな激務にも耐えられる心身の基盤が平塚氏にはあった。
入社3年目のこと。平塚氏は、岡山大学が編成したヒマラヤ学術登山遠征隊の隊員に選ばれた。そして、会社から特別に 4ヵ月の休職期間を得て、山岳部 の一人として遠征隊に参加、当時世界に残された未踏峰のなかの最高峰であったダウラギリ」峰(7650m
)の初登頂を果たした。
学生時代の山登りでの、死と隣り合わせた厳しい体験や、この海外遠征の輝かしい経験などから、「いくら体力的にきつかろうと、平地での生活なら、生命の危険はない。また厳しい山登りに比べれば、こんな仕事の苦労など物の数ではない。朝の来ない夜はない」と思えることができたのだ。
自分の感覚を過信せずに
三十余年間の仕事の経験からは、「先入観で物事を判断しないこと。嫌なことほど早く手をつけること」を学んだ。「人間は、自分の第一印象などで人を判断しがちですが、例えば、嫌な印象を持っていた人達でも、思い切って近づき話をしてみると、実は全く違ったパーソナリティや知識、経験を持った人だったということが、往々にしてあるものです。
やり遂げる自信のない仕事や手ごわいと思う取引先も同様。一歩前に進めば、新しい世界が開けます。今の若い人達は、自分の感性、価値観を大事にしすぎる傾向があるように見受けられます。今現在の自分の感覚や経験だけで物事を決め付けるのはいかがなものでしょうか。
人間も世の中もそれほど単純なものではないと思いますし、感性や価値観も、新しい経験や出会い、知識の吸収によって、どんどん研ぎ澄まし進化させてゆくべきものだと思います」。
座右の銘を伺うと、「『自然体』ですね。人間ですから、喜怒哀楽は常ですし、慣れない英語でのスピーチをするときなど、気負いや緊張は相当なもので、頭にあることがなかなか出てこない。物事の判断をするときも、
心身から余分な力が抜けていないと、つまり自然体に近くないと、正確な判断が出来ないことになります。いくつになっても、そんな心境にはなれそうもないだけに、少しでもそうあるべく努めたいと思っています」と平塚氏。
清流を思わせるような氏の爽やかさは、こうした心がけにあるのかもしれない。
(取材 平野香利)
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