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スイモン・エンジニアリング・カナダ
久保 克己氏

  エンジニアから起業家へ

 久保氏は20代の頃から「一生の間に一度は異文化のなかで暮らすぞ」と周りに宣言しながらも、仕事の楽しさに行動を起こさぬまま時を過ごした。

 40代に突入し、「今を逃してはもう外には出られない」と思い、本格的に海外移住を検討。今までの経験を生かせる国としてカナダを移住地に選んだ。

 1991年に渡加後、コンサルタントとして企業就職も試みたが、苦戦を強いられ、自ら事業を起こすことに進路を変更。カナダの法規や技術的な基準についての膨大な知識を得るために、毎日深夜まで独学する生活が始まった。

その傍ら、同業他社の業務内容の調査や人脈作りにも奮闘し、数年間が過ぎていった。

環境博覧会をきっかけに前進

 重要なネットワーク作りでは、建設コンサルタント業者の組織「アジア・パシフィック・マーケティング」に入会したことで徐々に同業者や政府関係者と知りあうことができた。事業に弾みをつけたのは'94年のカナダの環境博覧会。

 ここで久保氏が出展した日本の高性能な水の浄化槽に、ニューファンドランド州の役人が目をつけ、同州への浄化槽設置の計画が進むこととなった。

北米と日本に技術交流の架け橋を


 自社の強みは、北米でのネットワークと英語力によって、北米の優れた建設技術の調査や評価を日本での数分の一の経費と時間で正確に行えること。

 それを伝えながら、始めは久保氏が日本で勤めていた会社を中心にアプローチを行い、インターネットでも広報して仕事を獲得していった。

 そうしたなか、ある日本の大手企業からは、カナダの臨海開発での経費返済計画のしくみを知りたいと依頼を受けたことがある。

 やや専門外ではあったが、培ったノウハウと人脈を生かして企業や政府の要人とのミーティングの準備など周到に立ち回った。

 4年前には日本と北米の技術交流の企画「レインボー21」(www.r21.ca)を立ち上げた。

 このプロジェクトの柱は、北米で数々実施される建設技術の講演会の中から、日本企業の関心の高い会を選び、会への参加手配や主催者とのミーティングを準備し、通訳の手配を請け負うコーディネート事業だ。

 だが最近の状況について久保氏は「セプテンバーイレブン以降、日本企業が北米に来たがらないし、企業の経費節約で視察の企画が回らない」と語る。

 こうした事情に対応し、現在はスイモンのスタッフが自ら北米の講演会に参加して、講演内容をまとめるといった代行業務に移行してきた。

政府には目的と要件を短刀直入に


 スイモンは2001年の日本の環境博覧会で、カナダ企業代表8社中の1社として出展する機会を得た。これは日ごろのBC州雇用投資省との頻繁な接触の現れといえるだろう。

 「カナダの省庁の高官は日本よりもずっと身近でフットワークも軽い」と久保氏。「政府への面談の依頼でも『日本からこういう人が視察に来る。こういう情報が知りたい。ついては会ってくれないか』と短刀直入に言えばいいんですね。こちらの誠意が伝われば必ず会ってくれます」。

 誠意といえば、久保氏の語りは、丁寧でやわらかく、きめ細やか。会社の提供する資料にも細やかさがあふれている。「信用が勝負なので、ついつい細かくなってしまいます」というが、人柄による部分も大きいだろう。

 最後に久保氏は「(お金の)蓄積ができたら経営者を雇いたいくらいですよ」と言葉を漏らした。技術者から経営者に転身してからの苦労がその言葉に凝縮されているようだった。     (取材 平野香利)



Suimon Engineering Canada Ltd.
 '92年創業。主に北米の環境保全の考え方や建設技術を日本に紹介するコンサルタント事業を行う。
住 所:#618-475 Howe St, Vancouver, V6C 2B3
電 話:604-669-2021,604-669-2028
F a x:604-669-2022
ウェブ:www.suimon.com

会社命名の由来
 水の大気循環を研究する学問「水文学」。大学の先輩が経営する「水文計画」という会社の北米支社にとの話があったことからスイモンの名をつけた。



久保克己氏
(くぼかつみ)
 神奈川県出身。日本大学土木工学科卒。水資源開発を専門とするエンジニアとして、日本で公共事業の調査・設計を行う建設コンサルタント会社に20年間勤務した後に渡加。現在は企友会の会長としても活躍中。