土の暖かみを感じさせる花器や、涼しげな色合いの小鉢。あでやかだけれどシックな漆。そして店のあちこちに生けられた花…。店内にはたくさんのアイテムが並んでいるのに、ほっとくつろげるのは、和の空間ならではだろうか。
陶器を初めとする和の小物のお店として、多くの人に愛されてきた「むらた」が、昨年12月、ブロードウェイに新店舗をオープン。今年に入ってキャンビー・ストリートから全面移転した。「前の店舗では(裏通りだったため)、ピンポイントで来られるお客様が多かったのですが、ここに移って、通りがかった人が入ってきてくれることも。新しいお客様が増えましたね」と、オーナーの八木和恵さんは話す。
キャンビー・ストリートでは10年、その前の最初の店舗はパウエル・ストリートにあった。「時代の流れと共に店も変わりました。昔は食器がメインで、ブルー&ホワイトや赤絵などがよく出ていた。でも日本文化がカナダ人の間に広まるに連れて、肥前や信楽といった日本人好みの陶器への要望も増えてきたんです」。現在は、陶器から浴衣やのれんなど布もの、お茶やお花の道具、和紙、すり鉢や包丁といった台所用品までを扱っている。
こうした変遷を経て、新店舗で八木さんが目指しているのは、「ただ商品を並べるのではなく、日本の文化を紹介できるようなスペースづくり」だ。店内には花や掛け軸などを利用した小粋なディスプレイが随所にあり、インテリアのお手本にしたくなる。
さらに、モノを売るだけでなく、紹介していくような試みも考えているとか。「これからの新茶の季節には、お茶の飲み方といった紹介や、お茶のイメージのスペースを作る予定です」
また和と言っても伝統的なものばかりではない。「例えば花を生けるのに花器ではなくお椀を使ったり、洋のものと組み合わせたり。実は、そういった新しい発想は、お客様の方が長けていて。アイディアをもらうこともよくあるんです(笑)」。店内にはローカルのアーティストの作品もあるが、和とすんなり調和して溶け込んでいる。
同店を訪れるのは、ほとんどが地元のカナダ人。毎年、お遍路巡りをしたり、盆栽のコレクションがあったりと「私たち以上に日本人らしい」カナダ人が多いそうだ。
「お客様は、『日本の物を置いている店から、なんでも教えてもらえる』と思われているんですね。『なぜ食器には、うさぎの柄がよく使われているの?』なんて聞かれたり。背景を知っておかなくてはいけないから、日々、勉強です」と笑う。
商品以外にも、甘酒の作り方や、日本でおすすめのハイキングコースを聞かれたこともあるとか。「店をやっていると、ここが日本文化の入り口になっているのかなと感じます。私たちには国境を越えて広がる、誇れる文化がある。だからそれを、もっとアクティブに紹介していきたいですね」
そのひとつとして、5月末頃からオンラインショッピングをスタート予定。また、日本文化を紹介するようなワークショップがあれば、営業時間外にスペース提供もしたいと言う。さらに商品については、「こういうモノがほしい」という要望があれば、カタログを見て取り寄せることも可能とか。
店名には「WA LIFESTYLE STORE」という冠がついているが、八木さんは「『和』は、なごみの意味であり、ハーモニーの意味。さらに足し算の『和』であり、日本のことでもあります」と説明する。多様でフレキシブルな意味を持つ『和』。その言葉通り、八木さんは「日本だけにこだわらず、みなさんにくつろいでいただけるような、豊かな空間作りを提案していきたい」と意気込んでいる。
(取材 宗圓由佳)
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