英語のため?何のため?

「ふたりの娘と3人でカナダに来たんです」と言うと、「旦那さんは?」とまず聞かれます。「夫は東京で仕事なんです」と答えると、「おもしろいね」とか「大変ね」とか「旦那さんは淋しいでしょう」とさまざまな反応が返ってきます。ある国の人には、「家族が離れ離れなんて!」と叱られたこともあります。
「留学」はわかるけれど「親子留学って?」と思う人も多いでしょう。こういう私も、「親子留学」に憧れて着々と準備を進めてきたタイプではありません。いろいろな条件が重なって気づいたら来ていたというほうが近いでしょう。
では、なぜ今ここにいるのか。いったい何をしているのか。私と子どもが経験したあれこれを綴っていけたらと思います。同じ境遇の人、同じ境遇だった人とは共感できたらうれしいですし、親子留学に興味があるという人には何かしらヒントになれば幸いです。
ちなみに私には5歳(到着時4歳)の双子の娘がいます。現在、娘たちはプリスクールへ通っています。週3回、一日2時間15分という短時間で「留学」なんてちょっと大げさですね。事実、英語がめきめき上達したわけでもありません。ただ、英語が唯一の目的というわけではありません。英語だけなら日本で英語幼稚園へ通ってもいいでしょう。留学の目的……しいて言うなら、英語を話して友達を作ること、カナダを通して世界を見ること、こんなふうにイメージしています。

そもそもの留学のきっかけは

ことの始めは昨年の5月。夏休みの予定を考え始めていた時のことでした。英語圏への旅行?いや「親子留学」に2週間ほど行ってみたいと思い立ったのです。
娘たちは週1回1時間の英会話学校に通っていたし、春や夏の長期休みは1〜2週間の集中プログラムに参加させたりもしていました。けれど動物や色の名前、簡単な挨拶は言えても、「What animal do you like?」と聞くときょとんとなってしまう。その様子に私はガクッと肩を落とすのでした。ならば短期留学でもして体で覚えたほうが英語は身につくのでは。期間、予算などを大まかに調べて、夫に切り出しました。
夫の答えは「No」。予算がネックでした。短期間でお金がかかり過ぎるのです。やはり無謀な計画だったかと諦めかけ、「本当は長く行きたいくらいだったんだけどね」と軽い気持ちでつぶやくと、夫が「それいいねえ、それで行こう」と身を乗り出してきたのです。「えっ、今なんて言った?」と思わず聞き返したほどでした。
私たち一家は、娘が生まれた後、夫の転勤により韓国で暮らしたことがあります。韓国には「キロギアッパ」という言葉があり、「母と子の海外留学を国で働いて支えるお父さん」という意味で、実際に何組かそういった親子を見てきました。「親子留学」の発想は、私たち夫婦にとって普通とはいかないまでも、あり得る選択でした。
この時、夫は日本国内で単身赴任中でした。仕事は多忙を極め、家族と会える時間はごくわずか。娘と私の3人暮らしという意味では、言ってしまえば日本もカナダも変わりません。当初4人で住んでいた3LDKの賃貸マンションを引き払うことは、家計にも悪くない選択でした。マンションの入居可能期限が数か月後に迫っているという状況も後押ししました。
この時の「ひと声」を境に、親子留学に向かって生活のすべてが動き出したのです。

ご意見・ご感想・筆者へのメッセージは、バンクーバー新報編集部This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.までお寄せ下さい

 

2013年2月7日 第6号 掲載

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。