2011年4月7日 第15号 掲載

エビ、まぐろ、サーモン、かにかま、きゅうり、アボカド、貝割れ、まさご、錦糸卵の色が鮮やかなハウス・スペシャル・ロール。外側にはローストした赤ピーマン。アボカド、アスパラ、きゅうり、貝割れなど、細やかな味が絡み合ったベジタブル・ロール。色彩も鮮やかな絶品

刺身盛り合わせスペシャル、ハウス・スペシャル・ロールとベジタブル・ロール

10周年を迎えた Sushi Bar Ajisai『味彩』

池田ヒデさん

 

現場で覚えた包丁さばき
池田さんが料理と出会ったのは高校生のとき。学生アルバイトで始めたレストランの皿洗いと配達が飲食業への第一歩だった。料理は働きながら少しずつ覚えていった。 学生としてカナダに来た1984年、ウエストエンドで日本レストラン『いろは寿司』を経営していた叔父を手伝うようになり、仕事を覚えた。「その頃はカナダで食べられる新鮮な魚の種類が少なく、ここにない魚介類はすべて冷凍でした」 日本で食べる赤身のマグロに比べ白っぽいローカルまぐろには最初抵抗があったが、食べてみるとおいしかった。次第に当地の素材を生かした寿司や、巻物のレパートリーが広がっていった。魚の見分け方、おろし方など板前としての修業を積みながら、無駄なく素材を使うことを学んだ。これはオーナーになってからも、とても役立っているという。


自信を持った仕事
『いろは寿司』が閉店してからは別の日本レストランに移り、約10年以上の経験を積んだ後、独立を決意した。ケリスデールの目抜き通りを一本入ると、レンガ造りのビルに囲まれたおしゃれな小路につながる。ベンチが置かれたその吹き抜けは、まさに知る人ぞ知るローカルな一角。ここに20席ほどの店を構えた。 開店当初は経営者として不安もあったと話すが、もともと食べるのが好きで、舌には自信があった。自分がおいしいと思えるものをお客さんに提供するために、研究しながら料理の奥の深さを感じていったという。


新鮮な魚を味わえる店
新鮮な刺身と寿司に重点を置くため、天ぷらや餃子などはメニューにない。ほかの店のメニューには載っていない日本人好みな細巻きもある。例えばきゅうりと山芋、山芋と梅肉を巻いたものなど。今までカリフォルニア・ロールとダイナマイト・ロールばかり注文していたお客さんがそれを口にすると、おいしい!のひとこと。いろいろな味を楽しんでもらいたい、と命名した『味 彩』。新しい味覚を楽しんでもらう姿は、料理人にとってこの上ない幸せだろう。 経営者になっても『人を使っている』のではなく、常に『人に助けられている』と感じているという。「この10年続けてこら れたのは、スタッフを始め周りの人の支えがあったからでしょう」と、人と人との関係の大切さを強調した。

 

(取材 ルイーズ阿久沢)


池田ヒデさん プロフィール

大阪府高槻市出身。1984 年に学生として来加。『いろは寿司』、その他のレス トランで修業を積んだあと、2001 年2月オーナーシェフとして『Sushi Bar Ajisai 味彩』をオープン。妻と3人の息子(13歳、10歳、4歳)とバンクーバー在住。

オーナーシェフ、池田ヒデさんケリスデールのおしゃれな一角にあるA j i s a i S u s h i B a r

 

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