How to Live
住宅賃貸法トラブルに関するワークショップ(1)
「住宅賃貸法トラブルを回避するための賢い選択と対処法」


 

 「日本人を巻き込んだ住宅賃貸法に関するトラブルが一向に減らない」という危機感から、こうした相談を多く受ける隣組が主催となって、邦人関係機関を対象に、住宅賃貸法トラブルに関するワークショップを行った。

 講演者として、Residential Tenancy Branch(RTB:住宅賃貸法事業部)*1からバストン・知代さんを迎え、入居者/借家人(Tenant)としての立場から、住宅賃貸法に関する知識とトラブル回避のための対処法などの説明が行われた。

 移動の多いこれからの季節に役立つ情報として2月に行われたこの講演内容を、要約してここに紹介する。


レジデンシャル・テナンシー・ブランチから、
講演に訪れたバストン・知代さん

 

『住宅賃貸法』“Residential Tenancy Act”について
 ブリティッシュ・コロンビア州政府管轄による、家主と入居者との間のさまざまな問題を解決するための法律。2004年さらに2006年に改正された。
 ただし、これに適用されないケースもある。

1. 旅行者のホテルなどへの滞在
2. 治療を目的とした滞在
3. 教育機関の所有、管理による場合
4. 家主とキッチン・バスルームを共有している入居形態などが適用外となっている。

 バンクーバーの日本人滞在者に多く見られる、ホームステイや間借りは、4の場合に相当するため、この法律では取り扱っていない。ホームステイに関しては、個人の責任となるので注意してホームステイ先を選び、契約にサインする場合は、よく理解して納得してからサインすること。

物件探しから、転居までの流れと問題解決方法
 入居先を探すときの注意点から、入居中、転居後まで、BC州で滞在するために必要な知識と、知っておくと問題が起こった時に役立つ情報などを、状況ごとに解説。ホームステイの場合でも、これらに留意することで、入居後の問題回避に役立つだろう。

入居前 / 契約前
 入居後のトラブル回避に最も有効な手段は、「気になるところは入居前に聞いておくこと」。部屋を見せてもらう時に、いろいろと質問しておく。

 例えば、たばこの煙や臭いが嫌いな人は、アパート全体が禁煙なのか、入居者全員に禁煙が適用されるのか、ある時点から禁煙となったため、その前からの入居者には禁煙が適用されないのかなど、気になるところは些細な点まで質問しておく。また、最近問題の多い南京虫(bed bag)についても、入居する以前にそういった問題があったかどうかをたずねる。

≪契約前の注意点≫
 家主によっては入居申請する時点で、Application Fee(申請料)やDeposit(保証金)を要求してくる場合があるが、その場で支払う必要はない。

【!知っておこう】
 ■申請料の請求は法律で禁止されている。
 ■もし保証金の支払いが、契約書に署名してから、あるいは入居後30日以内になされない場合、立ち退き請求されることがある。
 ■こうしたものを一度支払ってしまうと取り戻すのが大変なため、契約書に署名するまでは一切支払う必要がないことを覚えておこう。

≪ベースメントを探す時の注意点≫
 Basement Suiteと呼ばれる一戸建てのベースメントには、市の検査を受けて認可されたAuthorized Suiteと、これを行っていないUnauthorized Suiteがある。前者の場合は、住所が家主と別であるのが普通で、後者は家主か他の借家人と同じとなる。そしてバンクーバーには後者が圧倒的に多く存在している。

 そのため、契約する前には、郵便物の受け渡しや電気使用量、光熱費の支払い方法などを確認し、契約書に記載されているかも確認すること。

知っておこう】
 ■市の認可の有無に関係なく、『住宅賃貸法』が適用される。

入居前 / 契約前
住宅賃貸法契約書(Residential Tenancy Agreement)について

 必ず文書にて契約を交わすこと。借家契約書は、BC州政府をはじめ、さまざまな機関が発行している。必ずしも政府発行の文書を使う必要はない。どんな書式でも家主・借家人の署名があれば、すべて契約書となる。賃貸契約書と賃貸法の間に矛盾があれば、法律が優先される。

契約書内容の注意点
●賃貸形態 / 期間(Length of Tenancy)
 月ぎめ契約:入居した時から1カ月更新の借家契約。

 リース契約:期限付き借家契約。一定期間は入居していることを条件に契約を結ぶ。1年契約の場合が多い。リース期間終了後は、
1.自動的に1カ月更新に切り替わる
2.退出が義務付けられている
3.新たなリース契約を結ぶ
というパターンがある。これらは契約時に内容を確認すること。いずれにせよ、リース期間中は、家賃が定期的に支払われることが期待されている。

≪注意点≫リース契約で最も問題になるのは、期限前に退出しなければならない事態が生じた場合。この問題の解決方法としては、家主の認可のもと、次の入居者を自分で探すと解決する場合が多い。また、次の入居者を探す時間もない場合は、最低でも1カ月前には書面で家主に報告し、家主が次の借家人を探すことになる。
次の入居者が決まらないまま転出することになった場合は、次の入居者が決まるまでの家賃を請求されることがある。

●契約内容の確認(Rent)
 賃貸料と支払い日、賃貸契約の中に何が含まれているのか確認する。

 例えば、電気代や暖房費は含まれているのか、倉庫、食器洗乾機、冷蔵庫、ケーブル、駐車場などなど、家主が説明した条件がきちんと反映されているかはこの部分で確認すること。洗濯設備を他の人と共同で使う場合、どの時間帯、どの曜日に使えるのかを明らかにしておこう。また、電気・ガス代を他の人と分割する場合、自分が何パーセント、あるいは何ドル支払うのかが契約書にきちんと書かれていることが重要。駐車場では、どのスペースで何台までとめられるかを話し合っておくこと。

【!知っておこう】入居中に家主が変わっても、新たな契約を交わさない限り、入居時の契約書は有効のままである。家主の都合で勝手に変えることはできない。新しい契約書にサインする必要もない。

入居前 / 契約後
●現状点検レポート
(Condition Inspection Report)
 入居時、家主もしくは管理人と同行して入居予定の部屋の状態をチェックする。破損している箇所はないか、修理が必要な備品はないかなど、調べて規定のフォームに記入する。

 これは退去時にも行われ、その時に破損などが見つかると、両者が話し合って家主が一定金額を保証金から差し引いて返却することを借家人が認める場合、そのようにこの書式に書いておくことができる。

【!知っておこう】
 ■これは2004年から義務付けられていること。
 ■入居後に破損箇所が見つかった場合は書面にて報告すること。

●保証金の支払い
(Security Deposit / Pet Damage Deposit)
 保証金は最高で家賃の半月分と規定されている。それ以上の金額を請求してきた場合は違法となる。家具付きの部屋を借りた場合も条件は同じ。
 また、ペットによる破損の保証金も一般保証金とは別に家賃の半月分まで。支払時期については前述した通り。

     *      *      *  
 
 以上が入居するまでの注意点である。ポイントは何ごとも、契約までにきちんと確認しておくこと。ここを怠ると入居後や明け渡し時に問題が生じる確率が高くなる。次回は、入居中、転出時の注意点などについて紹介する。
(取材 三島直美)


隣組で行われた講演の様子

*1 Residential Tenancy Branch
 (RTB:住宅賃貸法事業部)
BC州政府Ministry of Forests and Range内に設置されているOffice of Housing and Construction Standardsに所属する、居住用の賃貸契約に関する問題を解決する部署である。必要書類などはホームページから入手できる。
Website: www.rto.gov.bc.ca
バンクーバー地区TEL:604-660-3456

*2 Tenant Resourse &Advisary Centre
 (TRAC:借家人リソース&助言センター)
BC州の借家人を対象に、借家人の権利についての知識普及活動を行っている。無料電話情報サービスや、「借家人サバイバルガイド(Tenant Survival Guide)」なども提供している。刊行物はホームページからダウンロードできる。
Website:www.tenants.bc.ca
借家人ホットライン:バンクーバー地区
TEL604-255-0546

 


※この記事は2008年4月3日掲載