−これだけはおさえておきたい−
確定申告の基礎知識



   毎年この時期、郵便局のカウンター横に山積みされた確定申告フォーム(T1)を見かける。確定申告と聞いただけで苦手意識を抱いてしまいがちだが、きちんと申告して払いすぎた税金は還付してもらおう。
 今回はバンクーバーで日本人向けの税務サービスを長年行ってきた日本公認会計士・木村吉紀(きむらよしのり)さんに、確定申告のための基礎についてお伺いした。



確定申告フォーム(T1)とそのガイド


●●●確定申告(タックス・リターン)とは

 1年間の所得や支払った税金を集計し、その額や内容に応じた税金の調整を税務署(カナダレベニューエイジェンシー)に申請するもの。もしも給与天引きの形などで既に支払っていた税金が多すぎた場合は、払い戻しが受けられる。逆に少なかった場合は追徴されるが、後述のように払い戻しの場合が多い。

●●●申告しなければならない人
 ビザの種類ではなく、2005年にカナダに居住していたかどうかで判断。以下の場合はカナダに居住していたとみなされるので注意。
○ 183日ルール:2005年に合計183日以上カナダに滞在した人は、居住者とみなされる。
○ みなし居住者:家族がカナダに住んでいたり、持ち家があったりする人は居住者とみなされる可能性が高い。

●●●必ず申告
 何らかの所得(国外での所得も含む)があった場合は申告しなければならない。また無収入でも消費税(GST、HST)還付や補助金(チャイルド・タックス・ベネフィット、オールドエイジセキュリティなど)を受け取るためにはこの申告が必要となる。

●●●対象期間、申告時期、および申告方法
 申告対象期間は、2005年1月1日から12月31日。これを今年の4月30日までに申告する。
申告方法には、
1. 各郵便局や税務署または税務署のウェブサイト(http://www.cra-arc.gc.ca/formspubs/menu-e.html)からのダウンロードで申告書(T1-General)を入手、記入して送付。
2. 同サイトのネットファイルのメニュー(http://www.netfile.gc.ca/menu-e.html)を利用し、ネットファイルを作成、オンラインで申告(受付期間:2006年2月13日〜2006年9月30日)。
3. 税務署のフリーダイアル(1-800-959-1110)を利用して、電話で申告(TELFILE、受付期間:2006年2月13日〜2006年6月30日)。
4. 簡単な申告で所得の低い人は税務署(1166 West Penderまたは9755 King George Hwy, Surrey)に予約(1-800-959-8281)を取り、記入を手伝ってもらう(無料)。
5. 有料の作成代行サービスを利用する。
といった方法がある。

 2と3の方法は前年に申告をした人のみ可能。税務署から送られてくる査定通知に記されている4桁のアクセスコードが必要になる。
 申告の結果、税金を払わなければならなくなった場合は、期限を超えた日(つまり5月1日)から滞納分について利息が加算されていく。また、期日までに申告書を出さなかった場合には最大で17%のペナルティーも課される。

●●●税が戻る可能性が高いケース
 個人によって状況が違うが、次のような場合は税金が還付される可能性が高い。
○日本の年金について、税金を日本で源泉徴収されていて、昨年の申告の結果2005年に予定納税をした。
○ 日本の年金以外の収入があまり多くない。
○ 給料が下がった。
○ 自営業の所得が赤字。
○ 不動産の賃貸所得が赤字。
○ 歯科治療も含めて医療費が多額。
○ 2005年中に結婚した。
○ 2005年の途中から働き出して給料を受けた。
○ 2005年の途中に日本に帰国した。
○ RRSPを購入した。
○ デイケアなど、子どもの養育費を払った。

●●●追加で税を払う可能性が高いケース
 申告によって税金を納めなければならない場合もあり、次のような場合はその可能性が高い。
○ 給料が上がった。
○ 税金を払わずにRRSPを戻した。
○ 2005年中に予定納税をしていない。
○ ミューチュアルファンドなど、投資の所得が多い。
○ 所有する賃貸不動産を売った。
○ 日本で給料や賞与を受けている。
○ 会社から社宅や自動車を提供されている。
○ 自営業の所得の中で交際費が多い。
○ 死亡により相続が発生した。財産を相続した人には課税されないが、死亡した人に所得税が課税される。
○ 財産を誰かに贈与した。相続と同様に財産を贈与された人には課税されないが、贈与した人に所得税が課税される。

●●●必要書類
 上記T1-Generalのほか、雇用主から送られてくるT4(給与源泉徴収票)、銀行から送られてくるT3やT5(利息や配当といった所得の証明)などが必要。そのほか医療費、寄付金、学費、RRSP購入時などの領収書は、控除申請の資料となるので大切に保管しておくこと。申告書には添付する必要がないものでも、後から税務署が提出を要求してくることがある。
 自営業や賃貸収入などの収入がある場合は、収入と諸経費の明細書が必要となる。申告で控除できる経費、減価償却率など、給与所得のみの場合に比べ申告書作成には知識が必要になってくる。専門家のサポートを受けたほうがスムーズに申告を行えるので、一考の価値あり。
◎注意すべきこと1:申告の対象は、全世界所得
 日本の銀行口座の預金の利子や、日本にある賃貸物件からの不動産所得なども申告の対象となる。
◎注意すべきこと2:外国国税額控除
 日本で国民年金や厚生年金について税金を源泉徴収されている場合でも申告の対象になる。ただし日本で徴収された分はカナダでの控除対象となるため、税金を二重には取られない。
◎注意すべきこと3:国外財産の報告
 カナダ国外に10万ドル以上の財産がある場合、これを報告する。この財産には課税されないが、報告しなかった場合はペナルティーの対象となる。財産の報告がなされているのに、その財産からの所得の申告がなかったりすると税務署から質問されるので注意。

●●●住所変更は確実に
 引っ越した場合や帰国した場合、2005年に働いていた職場の雇用主に新住所を伝えておくこと。特にいくつかの仕事をしてきた人は、以前の雇用主への通知も忘れずに。今はそこで働いていなくても、雇用主は手元にある情報をもとに2005年分のT4を送付する。その情報と現住所が違えば、T4は送り主に戻ってしまい、その分の申告が出来なくなる。また、申告後に住所を変更した場合は、税務署に手紙(Canada Revenue Agency Tax Centre:9755 King George Hwy, Surrey BC V3T 5E6)、FAX(604-585-5769)、または直接出向いて届け出る。

(取材 平野直樹)

木村吉紀(きむらよしのり)氏 略歴
 日本では公認会計士として青山監査法人にて外資系企業の監査に従事していた木村氏。15年前よりバンクーバーのプライスウォーターハウスに勤務、日本企業と個人に対し主にコンサルティングと税務サービスに従事。昨年から事務所を開いている。

Mr. Yoshinori Kimura
# 3-6031 Francis Road Richmond, BC V7C 1K4
電話・FAX:(604) 272-6693
携帯:(604) 644-0217
Eメール:yoshikimura@telus.net
ホームページ:www.kimura.ca


※この記事は2006年3月9日(第11号)掲載