How to Live
貸し部屋探し時に注意
トラブルの多いセキュリティデポジット(1)



  アパート賃貸契約におけるデポジットでのトラブルの報告が後を絶たない。残念ながら学生やワーホリの場合、カナダを離れて帰国する。そのため、デポジットをなかなか返してもらえず、泣き寝入りするケースも多い。また、言葉の問題があり、うまく苦情を言えない場合もある。悪辣な大家はそれを承知で色々理由をつけて返金しないことがあるそうだ。

◆トラブルについてのケーススタディ
 最近にも日本人入居者がデポジットで大家とトラブルになり、調停になった事件の報告が2件入っている。ケースを見ながらトラブルに合わないためのポイントを探ってみよう。1件は大家から調停を依頼、もう1件は入居者側からだ。今週号では大家から調停の依頼を出した件だ。

◆事件は引渡し時に

◎部屋を出た後、故障したところが見つかるはずなので、その修理費が必要
◎2ヵ月ごとに大家側が立替払いしていた光熱費(電気、ガス)が発生する
◎業者に部屋の掃除を依頼
などの理由で、デポジットを返してくれなかったことから始まったそうだ。
 入居者側で色々調べたが、大家側はデポジットを返金する義務があることは明確だ。そのため、
◎州の賃貸に関する法律に従い、正当な理由なしにデポジットを返さないという事は出来ない。15日以内に速やかに返すこと
◎返さなければ支払ったデポジットの倍額請求する
といった内容の英語の書状を友人の助けで作成。大家に渡した。入居者がカナダを出国することになっていたため、友人が代理人になっている。
 対して大家側からデポジット返金を拒否する書状が届いた。さらに、
◎最後に支払ったチェックの文字が汚くて、現金化に時間がかかったので、その月の家賃を再請求
◎部屋を引き渡したのは契約期間の半月前なので半月分の家賃
◎未払いだった光熱費
◎電話代などの未払いの料金
◎部屋を出る1週間前の部屋チェックが、部屋が汚いためにきちんと出来なかったため必要とされた清掃料
などの理由で、合計1000ドル以上を逆に請求されてしまった。あまりの対応に入居者側でついにBC州政府機関Residential Tenacy Officeを通して、略式裁判ともいえる仲裁を頼んだ。

◆仲裁の準備

 入居者は既に、日本に帰国していて出廷できなかったので、代理人として友人をたてることになった。代理人を立てるための書類、部屋を借りている期間内にあったこと、出る直前のトラブルなどを克明に記載した書類を作成した。トラブルの内容については、退室希望を知らせた詳しい日時、大家との会話の内容など。証拠書類は仲裁が行われる日以前に提出する必要があった。

結果

 調停の結果は、
◎『退室届け』を出していなかった入居者にも落ち度があり、最初に支払ったデポジットは契約の半月分の家賃に相当するので、それを諦める
◎大家側も大家としての義務を果たしていたとはいえない。大家が請求する全てをデポジットで処理する
というような内容だった。
 そのため、入居者は、『退室届け』さえ出していればデポジットは戻ってきたという考えだ。

セキュリティデポジットって何?

 貸し部屋に入居する際、デポジットの支払いを求められるのが普通だ。このデポジットは、レントの不払いや部屋の損傷により大家側を損害から守るために使用する。契約を解除して部屋を出る際、1ヵ月以上前に通知することになっているが、この通知が時間内に行われ、かつ部屋も通常の消耗以上に損害がない場合は、大家側は返却する義務がある。
 セキュリティデポジットは、1ヵ月の賃貸料の半額まで、また契約時以外に求めることはできない。既に支払っていてその額が半額を越える場合は、大家に差額分の返還を求めることができる。また、契約時ではなく、たとえば入居後しばらくして支払いを求められても、入居者は支払う必要はない。

◆契約時 契約期間は明確に
 契約期間についてのトラブルも多い。契約書に記載された契約期間の前に部屋を出たくても、入居者は契約期間中、賃貸料を支払う義務があるためだ。今回の事件では、入居時に契約書と異なる期間に部屋を出ることがある旨を説明して、口頭でOKをもらっていたが、文書で証拠がなかった。書面で何も残っていないなら、部屋を出る際、契約書を理由に大家側は賃貸料を請求できるので、必ず期間については文書で明確にしておこう。

◆入居前にインスペクション(点検)

 入居前に大家と借り手で部屋の内部を点検。カーペットや壁の傷み、汚れなど細かくチェックしておく。状況を書き留めるレポート「Condition Inspection Report」を作成して、双方でコピーを持っておく。用紙はTenancy Officeで直接入手するか、ウェブサイトからダウンロードできる。双方ともに証拠のために写真、もしくはビデオを撮ることもできるので、後々問題があったときに円滑に解決するためにもオススメする。
 点検せずに鍵だけを入居前に受け取ったりすると、あとで自分がやってもいない破損の修理費を保証金から差し引かれるということが起こることがあるので注意しよう。

入居者が部屋を明け渡す際

 入居者は大家に対して、書面で通知を行う。通知は明け渡しの1ヵ月以上前に行わなければならない。この書面には
・通知日
・大家の名前、住所、借りている物件の住所
・引渡し(転出)予定日
・入居者の名前、住所、署名
を忘れずに。決まったフォームがないので、転出を希望する旨とともに、上記の事項を明記して、大家やコンドのマネージャーなどに手渡しする。直接、渡せない場合は
・大家の家のドアに貼り付ける。3日後から有効
・できれば書留(Registered Mail)で郵送という、5日後から有効となる手段も可能だ。
 注意すべきなのは、入居時に交わした契約書の賃貸期間の終了前に部屋を出ることはできないということだ。出る場合も賃貸期間分の賃貸料を支払わなければならない。

◆控除に合意しない場合

 双方の話し合いで控除額に合意ができればよいが、合意できない場合は、今回の事件のようにResidential Tenancy Officeに連絡。調停(Arbitration)を申請することで、解決を求めることができる。申請を行うのは大家、入居者の双方とも可能だ。

デポジットの返金がない場合

 日本に帰国する人は、友人など信頼できる人を代理人にたて、氏名と連絡先を家主側に知らせる。テナントが賃貸契約終了後1年以内に転送先の住所を家主に知らせないと、家主は保証金を預かったままでもよい。
 デポジットが返金されない、もしくは15日以内に調停請求の連絡がない場合(控除に双方が合意しない場合、大家側は明け渡しから15日以内に調停を求めなければならない)は、借り手側は大家にデポジット返金を求めることができる。大家側が何も通知などを行なわない場合は大家は15日以内にデポジットを返金する義務がある。

調停費用

 調停額が5000ドルまでなら$50、5000ドルを超えると$100

(取材 西川桂子)

Residential Tenancy Office

400 - 5021 Kingsway Burnaby (メトロタウンのそば)
Tel: 604-660-1020、604-660-3456
e-mail: HSRTO@gov.bc.ca

月〜金、8:30amから4:30pmまで
各種用紙や細かい情報はホームページ、www.rto.gov.bc.ca
インフォメーションオフィサーには日本人もいるので、日本語で相談したい場合は『Japanese Information Officer, please』とお願いしよう。



※この記事は2006年1月26日(第5号)掲載