2017年4月13日 第15号

やせたいと思っている皆さん、コレステロール値が高い皆さん、それぞれ「Fat Free」の文字を探して買い物をしているのではないでしょうか。今回はFAT(脂肪)に関する話をしたいと思います。

 

FAT / 脂肪とは…

 中学の理科の実験の時間に動物細胞の勉強をしたのを覚えていますか。細胞膜を説明するためにPhospholipid bilayer / 脂質二重層の(水、油と発泡スチロールを使った)模型を見せられたり、それを授業中に作成したのではないでしょうか。まさしく人間の細胞は水と脂肪(油)によってできており、完全に脂肪をなくすことはできないのです。それでも病院に行けばコレステロールが高いので脂肪の摂りすぎには注意してほしい、HDL / LDLの数値が悪いからもっと野菜を食べてほしいなどのアドバイスをもらうと思います。単純に脂肪といっても、いろいろな種類の脂肪があるので、ここで簡単に説明したいと思います。もっと詳しく脂肪の分類に関して話をすべきなのですが、コラムのスペースがなくなってしまうので、大雑把な情報でご了承ください。

 

Saturated Fat (飽和脂肪)

 一般的に動物性脂肪といわれ、乳製品や肉、ココナッツオイルやパームオイルの中に多く含まれています。沸点(沸騰する温度)が高いため、油の酸化が一番しにくく、揚げ物や炒め物などに使うと最適の油です。ところが摂取しすぎると心臓病や炎症などを引き起こす原因になると考えられています。

 

Unsaturated Fat(不飽和脂肪)

 必須脂肪酸のオメガ3、オメガ6、オメガ9を含む。酸化しやすいが体にとても重要な脂肪で、魚やナッツ、Flax seed(亜麻仁油)、Hemp、Borageなどの植物油に多く含まれています。日光や熱、温度により、すぐに酸化してしまいます。近年ではトランス脂肪酸といわれる賞味期限や加熱にも強い人工的に作られた油も、この仲間に含まれます。具体的には植物性ラードやマーガリンなどが有名です。ところがトランス脂肪酸は不飽和脂肪酸を加熱し、酸化させることによっても作られます。トランス脂肪酸は必須脂肪酸の吸収をさまたげ、体内の異常に対応するための物質の生成を阻止し、発ガン性物質の一つでもあると考えられています。そのため揚げ油を長期間使いまわしているレストランやファストフード店の揚げ物はトランス脂肪酸の宝庫なので、摂取量を注意したいところです。

 

なぜFAT/脂肪が必要なのか…

 脂肪は人間の体に必要なホルモンやエネルギーを生成し、栄養分を運搬し供給させ、体温を安定に保ち、外敵から内臓を守る働きをしています。人間はコレステロールを使い、あらゆるホルモンを生成し、肌では太陽の日差しを使いビタミンDも生成します。しかも、ビタミンA, ビタミンE、ビタミンDは脂肪を使って吸収します。ところが血液内のコレステロールの数値が高いと、血液をどろどろの状態にするため、血栓(血の塊)を血管内に作る確率が高くなります。運が悪いと、その血栓が血液を心臓に供給する血管内にできたり、または血栓がそのほかの血管内にできたとしても、心臓近くの血管に流れ着くことがあります。すると、心不全、心筋梗塞を発症するため、医師はFat Freeの食品を勧めます。

 ところが、人間の体は大変順応性があるため、体内のコレステロールが低下すると肝臓でコレステロールを作り、ホルモンバランスの異常を安定させようとします。そのため、医師にいわれて食事を変えてみたけど、逆にコレステロール値が上がってしまったなどという経験をされた方も多いと思います。食事によって摂取した脂肪を分解するのに重要なのが、肝臓の働きです。肝臓によってコレステロールが上手に活用、運営されないと血栓ができる要因が高くなるということです。コレステロールをうまく運用させるのが、HDLと呼ばれる善玉コレステロールです。これは心臓病を起こりにくくするといわれ、LDL(悪玉コレステロール)との比率が重要視されています。たとえコレステロール値が高くても、HDL値がLDL値よりも高ければ、心臓病を引き起こす原因は低いと考えられています。 

 それに加え、トランス脂肪酸といわれる人工的に作られた脂肪などは体内で代謝する方法がなく、体のどこかに蓄積されると考えられています。つまり、体はトランス脂肪酸のように人工的に作られた脂肪を脂肪と認知しないため、脂肪代謝の方法を使わず、そのまま消化、排出されていると考えられています。そのため、体のどこかにたまって、脂肪の塊として、腕や目の周りのつぶつぶとして出てきているのではないか…といわれています。逆にFat Freeと書かれている食品を長期間摂取すると、体内でもコレステロールが生成できなくなり、体がいつもだるく、肌にも潤いが無く、ストレスに対応できない体になってしまうので気をつけたいところです。

 

なぜ太ってくるのか…

 人間は脂肪を耐久性のあるエネルギー源として脂肪細胞として体内に保存しています。食事での脂肪摂取を減らし、体内に蓄えられている脂肪細胞の燃焼の比率が、摂取量の燃焼の比率を上回ると痩せていきます。逆に、食事での摂取量が増えると、脂肪細胞として蓄えようと体は思うので、太っていきます。また太る理由には脂肪分をたくさん摂っているから太ってしまうのではなく、炭水化物ばかり食べていても、糖質から脂肪細胞を作る方法を体は知っているので、燃焼する量よりも摂取している量が増えると太ってしまうのです。あとは甲状腺の問題や、そのほかの健康異常などから新陳代謝が低い人がいます。そういう方も食べ過ぎていなくても、どんどんと太っていってしまうので、気をつけなくてはいけないところです。そこで今流行のダイエットに効くGarcinia Cambogiaは、食欲を低下させ、脂肪燃焼を活発にさせ、Rasberry Ketoneは、お腹回りの脂肪の分解に貢献し、Green Coffee Beanは、摂取した物の燃焼率を高め、脂肪細胞を作らせない働きをする効果があるため、早く痩せたいと思っている方は日頃のエクササイズに加えて、これらのサプリメントを摂取しています。使い方によっては、とても良い働きをするので、絶対に痩せないといけないという人にはオススメのサプリメントです。

 ずばり何が良くて何がいけないのか、というと、飽和脂肪の摂りすぎに注意し、トランス脂肪を摂らず、不飽和脂肪の摂取を高めるということです。それでも何が飽和で何が不飽和か、なんていちいち考えていると面倒なので、とりあえず商品ラベルのFATという項目を見てグラム数の少ないものを摂取すればいいやと考えてしまいがち。一度自分の食生活において食品で摂取できるもの、できないと思われるものを考えてみましょう。また自分に足りないものがあると思ったときは食品から摂取することも大事ですが、大量に必要と思われるものに関してはサプリメントで補充することがオススメです。

 例えば、飽和脂肪酸はバターやベーコンなど動物性油の摂取を控え、炒め物や揚げ物をするときはココナッツ油やパーム油を使うのをオススメします。ウチは天ぷらやフライなどするとき、特にケーキを焼くときはショートニング(代表的なトランス脂肪です)を使わず、ココナッツ油を使います。サラダを食べるときも自分でオリーブオイルを使ってドレッシングを作ると、必須脂肪酸のオメガ6と9が補われます。外食でも極力、揚げ物は避け、加熱しないオイルを摂取することを心がけるといいと思います。現在の食品事情により、オメガ3の摂取が一番困難になっています。魚に多く含まれますが、酸化しやすいため、焼き魚や蒸し焼きなどでもオメガ3は酸化してしまいます。そのため、寿司や刺身などで新鮮な魚を生食をするのがオススメです。それでも毎日摂取というのは難しいので、サプリメントでの摂取が一番良い方法であると思います。

 今回は脂肪のことを少しだけ知ってもらえたので、次回はもう少し掘り下げて必須脂肪酸についてお話したいと思います。

 


草野明美 自然医学博士/Naturopathic Doctor

1989年にカナダオンタリオ州に父親の転勤で引越しをし、2002年にトロントにあるCanadian College of Naturopathic Medicine にて修業後、2年ほどバンクーバーの指圧学校で講師/カウンセラーとして自然治癒力の素晴らしさを教えていたが、日本でも同じことができないか一度帰国。その後日本で結婚、出産をし2013年7月に再度家族を連れてバンクーバーに戻ったあと、カルガリーMarket Mall内のNutrition Houseにてサプリメント健康アドバイザーとして勤務。現在は2児の母としてバンクーバーに在住。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。