SPECIAL 2010

2010年2月25日 第9号 掲載


オリンピック出場 スピードスケートの太田選手、及川選手を囲んで
グラッドストーン日本語学園


子供たちからはどっきりするような質問も

教室を訪問する両選手

学園からの寄せ書きを渡した生徒と共に記念撮影

15歳の高木美帆選手に生徒たちからの寄せ書きを渡す村上学園長と学園事務の中野衣梨さん

生徒や保護者、学園スタッフと共に記念撮影

 

「及川選手、太田選手、ようこそいらっしゃいました」。喜びの笑顔で村上陽子学園長が出迎えた。グラッドストーン日本語学園の生徒や保護者など、2百人を超える人たちがオリンピック出場選手を囲んで、楽しく心温まるひと時を過ごした。

1秒の中で競い合うスピードスケート短距離選手たち

 2月15日に競技を終えたスピードスケートの及川佑選手と太田明生選手。及川選手は06年トリノ五輪5百メートルで日本選手として最高の4位に輝き、昨年12月ワールドカップ・ソルトレークシティ大会で日本新記録(34秒27)を樹立した力を持つが、今回は男子5百メートルで1回目35秒17、2回目35秒25の合計で13位。06年全日本選抜で優勝の実績のある太田選手は自己最高が34秒75だが、今回1回目35秒31、2回目35・34の合計で17位となった。同種目では長島圭一郎選手が銀メダル、加藤条治選手が銅メダルと日本人選手が活躍し、20位までの入賞人数で日本の4人は、金の韓国と並んでトップ。短距離スピードスケートにおける日本のレベルの高さがわかる。

選手を迎えて

 この日、選手を一目見ようと集まった人たちが同学園のある日系プレースのロビーで待つ中、両選手は授業中の様子を駆け足で見学。その後、村上学園長から学園の紹介を交えた歓迎の挨拶があり、5千羽鶴の制作で日本選手団を応援している企友会の会長・猪田雅公さんが5千羽鶴の紹介を、そして本交流会の準備に尽力したナショナル日系博物館・ヘリテージセンター会長の林光夫さんからの挨拶で交流会がスタート。その後、会は子供たちから選手への質問の時間になった。

無邪気な質問をしっかり受け止めて回答する太田・及川両選手

■何時間練習していますか?
太田 7時間くらい練習しています。

■スピードスケートを
 始めたきっかけは?
太田 僕が通っていた小学校は冬に校庭が凍るので、水をまいて生徒の親たちがスケートリンクを作ってくれて、授業中や放課後に滑るうちに好きになりました。
及川 地元がスケートの盛んな町で、3歳頃から滑っていましたが、小学生になってから父が厳しく指導してくれました。

■スピードスケートの魅力は?
太田 日本にも世界にも速い選手、ライバルがたくさんいる。そこで対戦して勝った時が一番うれしいです。
及川 僕は短距離選手なので、速い時は60キロを超えるスピードで滑るんですが、そのスピードでコーナーを回ると、別の世界が広がる。光のラインが見えるような感じなんです。

■滑る以外にはどんな練習をしていますか?
太田 走ったりジャンプしたり、ウェイトトレーニングや水泳、そして自転車に乗っています。自転車が結構多いです。

■金メダルをもらったことがありますか?
 (会場にどよめき)。
太田 あまりもらったことがないんですけど、中学校の時にもらいました。
及川 僕も今回はもらえなかったんですが、ワールドカップなどでもらったことがあります。(会場から拍手が沸き起こる。)

■オリンピックの試合の時は緊張しましたか?
太田 すごく緊張していて吐きそうになっていました。(会場に笑いが起こる。)本当は緊張しなければよかったんですけど、これからそこを反省してがんばりたいです。
及川 オリンピックは今回で2回目なんですが(*トリノ大会に出場)、1回目の時より落ち着いてスタートラインに立っていたつもりでしたが、やっぱりすごく緊張していました。

■辛い時はいつですか?
太田 今回オリンピックでいい成績が出せず辛かったです。でも日本から応援してくれる人がたくさん来てくれていたので、すごくうれしかったです。
及川 やっぱり一生懸命練習して、それがレースで発揮できなかったときが辛かったです。

■練習が嫌いと思ったことはありますか?
太田 毎日思っています。でもやっぱり強くなるために毎日練習しないとだめだから・・・。皆さんも勉強いやだなと嫌いになるときもあると思うけれど、でもやっぱりがんばってほしいですね。
及川 嫌いというか苦手です。でも苦手だからどうやったら練習が楽しくなるか考えながらやっています。

■バンクーバーはどんなところが好きですか?
太田 選手村とリンクの往復しかしていないのでまだよくわかりません。今度は遊びに来たいです。(会場拍手)。
及川 まだ僕もあまりわからないけれど、周りの人が温かく、食べ物もおいしい。自分の地元の帯広に似ているし、空気が澄んでいると感じます。

 そのほか、食事についての質問に「試合が終わったので、今は毎日マクドナルド」と両選手が答えて会場にどっと沸く場面や、「子供の頃、勉強をしましたか?」の問いに太田選手が「勉強しないでスケートばかりしていました」と答えた後に、及川選手が「勉強・・・しました」と答えた「間」に、生徒や学園への気遣いが感じられる場面もあった。終始、子供たちを温かく見つめながら、誠実に回答しようとする両選手の姿が印象的だった。

 質疑応答の後、学園生徒から両選手への寄せ書きと記念品としてオリンピックのマスコットが贈呈され、色紙へのサイン、記念写真撮影と続いた。その後、両選手は大勢のサインを求める生徒や保護者たちに長時間にわたって快く応じていた。

高木美帆選手への応援の気持ちがきっかけ

 そもそも今回の選手との交流のきっかけは、高木美帆選手のオリンピック出場にあった。「学園の生徒と同年代の15歳の中学生ががんばっていること、その姿は学園の生徒にとっても励みになってくれるのではと思いました」(村上学園長)。そこで高木選手に生徒からの寄せ書きを贈ろうと企画。さらに交流の機会も持てたらと考えたという。その実現のために、ナショナル日系博物館・ヘリテージセンターと企友会に賛同、協力を求め、日本スケート連盟へ希望を伝える準備を進めた。当地の協力団体や協力者からの後押しで、日本スケート連盟の協力が得られ、オリンピック期間に入ってから交流会実現が確定した。

 スケジュール等の関係で交流会への出席は太田選手、及川選手となったが、交流会の同日、数時間前に行われた高木美帆選手の試合終了後、村上学園長は高木選手に寄せ書きを直接手渡すことができた。

念願の交流会を終えて

 「学園の生徒が直接選手たちと会って交流できたことは夢のようです」と語る村上学園長は、交流会後のエピソードを教えてくれた。選手から腕にサインをしてもらったある生徒は交流会翌日、小学校でその腕を得意気にみんなに見せていたそうだ。そのために彼は腕に布を巻いてお風呂に入ったのだという。
 参加者から「オリンピックを身近に感じるようになった」「彼らのがんばりを少しでも真似したい」と感想が聞かれた本交流会が与えた感動は、オリンピックの記憶と共に子供たちの心に残り続けるだろう。

 

(取材 平野香利)