MAPLE 2010
2010年12月16日 第51号 掲載
 

ニューイヤー・コンサート
『Salute to Vienna』 にソプラノの中嶋彰子さん



『ウィーン舞踏会』より

世界で有名なニュー・イヤー・コンサート『Salute to Vienna』がバンクーバーにやってくる!
美しい旋律に歌、舞踊が加わり、新年を華やかに彩るコンサート。この公演でウィーンのトップスター、ソプラノの中嶋彰子さんがバンクーバー・デビューする。(取材 ルイーズ阿久沢 / 写真提供 中嶋彰子)

 

美しい旋律に歌、舞踊
ウィーン風の新年


  オペレッタやポルカ、ワルツといった軽快な旋律で幕開けるウィーン風の新年。その有名なニュー・イヤー・コンサートを再現したものとして、ウィーン市が唯一正式なものと認めているのが『Salute to Vienna』だ。
 このコンサートにウィーンのトップスター、ソプラノの中嶋彰子さんが出演するようになって4年目。去年はニューヨーク、エヴィリン・フィッシャー・ホール、一昨年はウォルト・ディズニー・ホールなどアメリカの一流会場での公演が続いている。

 シュトラウス・シンフォニー・オブ・カナダ(ニールス・ムース指揮)が奏でるヨハン・シュトラウスほかの美しいメロディー、中嶋彰子さん(ソプラノ)とアレクサンダー・カインバッハーさん(テノール)の歌、加えてサンクト・ペルテン・バレエ団(オーストリア)のメンバーによる舞踊は、バンクーバーの聴衆を魅了すること間違いなし。
 公演に先がけ、「世界のアキコ」と呼ばれるウィーンのトップスター、中嶋彰子さんに話を聞いた。



『カルメン』を観てオペラの世界へ
中嶋彰子さん


◆音楽との出会い、本格的に声楽家になろうと思ったきっかけについて聞かせてください。

 父が音楽好きで、幼いころから家では常に音楽が流れていました。ピアノ、歌、バイオリン、サクソフォーン。父が私の歌を伴奏したり、私が父のバイオリンを伴奏したり。
 中学校2年生の時、内気だった私が音楽祭でソロを歌った時の舞台経験が、音楽家になりたいと強く感じた瞬間です。
 音大はオペラ科ではなくリートを中心とする声楽科を選びました。その頃は、オペラは大きな体格の歌手がオーケストラと戦って大きな声で長い時間歌い、衣装を着けて中途半端な演技をするものと偏見的な考えを持っていて、一切興味はありませんでした。でもある日素晴らしい『カルメン』の舞台を観た時大きなショックを受け、それ以来オペラは総合芸術の最高の舞台表現がかなう文化と思うようになり、オペラを夢中で目指すようになりました。

◆『Salute to Vienna』はどんなところが見所でしょうか?
 オーケストラと共にワルツを優雅に踊るバレエ団は、それは優雅で美しい見所です。オーケストラ・メンバーもニューイヤーで演奏する曲目を弾くときは、普段ベートーベンやブラームスを弾くときと違い、微笑が自然と出てくるものです。ウィンナー・ワルツにはそういったゆとりと楽しさがあり、観客席でもそんなムードを味わっていただけると思います。もちろんソプラノとテノールの名歌曲はコンサートの花形で、見ても聴いても楽しんでいただけると思います。

◆ご主人のニールス・ムース氏が指揮をされるそうですね。
 フォルクスオパーでキャスティング・ディレクター兼指揮者であった主人はオペレッタの謎を深く研究した指揮者なので、その波に乗って自由に歌えるのは最高です。

◆オペラとコンサートでは、ご自身の中でどんな違いがあるのでしょうか?
 大きな違いがあります。オペラの場合は、演出家の作り上げるドラマの中で私が演じる役をどう色づけていくのかが、与えられた仕事です。私の場合、その演出家のコンセプトを十分に研究し、ディスカッションした上でお仕事をお受けしています。舞台に立ったときにその役に完全に打ち込めなければ、理想通り歌えないし演じられないからです。

 コンサートの場合は、オペラとは違う繊細さが要求されます。今回のようなオペレッタ・ガラ・コンサートの場合は、登場曲ごとにキャラクターを変えてオペレッタの舞台から飛び出してきたような新鮮な演技を要求されますので、本場ウィーンでのオペレッタの経験を生かして楽しく表現していきたいと思います。

◆カナダではすでに東部で公演を経験していますね。ヨーロッパの聴衆に比べ、どんな感触でしたか?
 先日ウィーンとパリで公演があったのですが、2つの文化の都心の観客の反応の違いには常に驚かされます。ヨーロッパ内でも観客の反響が異なるので、英語圏の観客はもっと違いますね。私のカナダの初舞台はトロントでしたが、観客はとても温かくオープンで、反応を素直に表してくださいました。舞台人にとって大変ありがたいことです。

 バンクーバーでは、ウィーンの伝統であるニュー・イヤー・コンサートを皆さんと一緒に楽しめる公演にしたいと願っております。


『椿姫』より




なかじま・あきこ(ソプラノ):
北海道釧路市生まれ。15才の時に渡豪。シドニーで音楽教育を受ける。1990年全豪オペラ・コンクールに優勝。同年、シドニーとメルボルンの両オペラハウスと契約し「皇帝ティートの慈悲」セルヴィリアでデビュー。92年、ヨーロッパ・デビューし、ヨーロッパ放送連合より92年度最優秀賞を受賞。99年には有力誌「オペルンヴェルト」の選ぶ年間最優秀新人賞にノミネートされた。同年ウィーン・フォルクスオーパーの専属歌手となり、劇場のトップスターとして活躍。卓越した歌唱と演技力、自由で華やかな存在感で圧倒的な人気を獲得。99年、デュトワ指揮NHK交響楽団のフォーレ 『レクイエム』 で日本デビュー。2008年にはシュタイヤー音楽祭 (オーストリア) で 『蝶々夫人』 のタイトル・ロール・デビューほか、アメリカ、カナダなど活躍の場を広げている。
これまでにリリースされたCD、歌曲集『ラ・パストレッラ』は2005年度ドイツ批評家大賞にノミネートされた。第14回「出光音楽賞」受賞。シュタイヤー音楽祭アーティスティック・アドバイザー。2008年10月よりウィーン工科大学建築設計学部非常勤講師。
www.akikonakajima.com

 


『Salute to Vienna』より


Salute to Vienna
●1月2日(日) 2:30PM
●オーフィアム・シアター
●シュトラウス・シンフォニー・
 オブ・カナダ
●$57〜99+サービスチャージ
●www.ticketmaster.ca
●電話 (604) 280-4444