SPECIAL 2009
2009年8月13日 第33号 掲載
![]() 公的年金について講演するステファニー・ソエバジオさん(右・サービスカナダ)と日本語に通訳するスコットモンクリーフ知保里さん(左・隣組)。参加した人たちは皆、年金の受給資格や受給額について熱心に質問していた |
![]() 講演の第2部では、ファイナンシャルアドバイザーのテイラー・ルリ子さんから、私的年金を含むリタイア後の収入についての講演が行われた |
6月25日、隣組にてカナダの年金制度に関する講演会が行われた。講演会ではサービスカナダのステファニー・ソエバジオ氏からカナダの公的年金の種類や受給条件、申請方法、日本の年金を受給する場合のカナダの年金との関わり、ファイナンシャルアドバイザーのテイラー・ルリ子氏からはカナダにおける私的年金についての講演が行われた。
カナダや他の国で働いてきた人にとっては、どこの国から年金が受け取れるかというのは重要な問題であることだろう。講演の内容を基にカナダの年金制度を取材した。
カナダにおける公的年金
カナダ国内における年金制度は老齢保障制度(OAS)とカナダ年金制度(CPP)の2つがある。
老齢保障制度(OAS)は申請者の年齢、法的ステータス、居住期間に基いて審査され、雇用などの条件は考慮されない。また、年金は収入として課税の対象となる。
OASを全額(月516ドル)受給する場合は、年齢が65歳以上、カナダの市民権もしくは永住権を持っていること、また18歳以降カナダに最低40年間居住していたことが条件となる。居住期間が40年に満たない場合でも、カナダに最低10年以上住んでいた人には18歳以降カナダの居住期間満1年毎に全額の40分の1として一部を受け取ることが可能(例えば、18歳以降カナダに半分の20年間住んでいた場合は、全額の2分の1を受け取れる)。ただし、1度申請が承認されるとその後居住期間が増えても年金額は変わらないので注意が必要だ。さらに、1952年7月1日以前生まれ、18歳から1977年7月1日までカナダに居住、申請承認直前の10年(55歳~65歳)の間継続的にカナダに居住、という3つの条件を満たした場合、10年居住ルールが適用され、その場合年金が全額で受け取れる。ちなみにOASはカナダ国外からでも受給可能だが、その場合はカナダに最低20年間住んでいたことが条件となる。
その他OASプログラムには所得補足保障(GIS)、手当て、遺族手当てなどの援助金制度がある。
所得補足保障(GIS)は低所得高齢者への補助金で、所得および婚姻状況を基にOASに加算される。GISは所得課税対象外だが、受給者はカナダ国内に住んでいることが条件となる。手当てはGIS受給者の配偶者もしくはコモン・ロー・パートナーに対して支払われる援助金で、年齢が60歳から64歳、さらにOASと同じくカナダの市民権もしくは永住権保持者、カナダに10年以上居住などの条件が必要となる。遺族手当ては手当てとほぼ同じ条件・内容で受給者の遺族に対して支払われる。ただし、再婚した場合は受給できない。GIS、手当て、遺族手当て共に低所得者が対象となるので、受給の可否は前年度の収入を基に審査される(所得額などの情報問い合わせ先は記事の最後に記載)。
カナダ年金制度(CPP)は日本の厚生年金に近い制度で、カナダの労働者は全て収入額に基きCPPファンドに収入の一部を支払っており、それが65歳になった際に、その貢献度に応じて年金が受給できるという自己支援型の年金制度である(法的ステータスや居住期間は関係しない)。自身の貢献度および受給額は、ステートメント・オブ・コントリビューションズで確認することができる。これは定期郵送以外にも電話による郵送依頼、またはウェブサイト上で確認できるので、受給希望者は申請前に確認しておくことが望ましい。
CPPから支払われる年金の種類には退職年金、障害者(所得保障)給付金、遺族給付金がある(全て課税対象)。主な給付金である退職年金は基本的に65歳から受給可能である。また、年金を受給する場合に仕事を退職する必要は無い。ただし、毎月の受給額が減少する代わりに受給開始を60歳にする、もしくは70歳から受給開始する代わりに受給額を増加させるフレキシブルという方法があるが、もし60歳から受給開始する場合は、一時的に退職する必要がある(申請承認後は再び仕事を始めてもかまわないが、年金を受給していることは雇用主に知らせる必要がある)。また、60歳で受給開始すると年金受給額は65歳以降も減少したままになるので注意が必要だ。
配偶者、コモン・ロー・パートナーがいる場合、CPPを分割することが可能である(ペンション・シェアリング)。これは片方のみが多額の年金を受給している場合に、両者の年金額を足した上で再分割することで年金に対する課税額を抑えることができる。また、離婚、別居時にもクレジット分割という形で同様に受給額を分割することが可能。
退職年金はたとえ1年でも貢献すれば給付を受けることができる。しかし、障害者(所得保障)給付金および遺族給付金においては、それぞれ受給のための最低貢献期間を満たす必要がある。障害者給付金を受給する場合、年齢65歳未満で貢献要件(過去6年間に4年間はCPPに貢献し、最低レベルの収入があった)と医療要件を満たす必要がある。遺族給付金では、故人が貢献期間(18歳以降から亡くなるまでの年数)の3分の1をCPPに貢献している必要がある。
さらに遺族給付金は死亡保険金、遺族年金、遺族児童手当に分けられる。死亡保険金は故人の算定した退職年金月額の6倍(最高2500ドルまで)が葬儀費としてのみ支払われる。遺族年金は故人(亡くなったCPP貢献者)の遺族(配偶者、コモン・ロー・パートナー)に支払われる。OASの遺族手当てと違い、遺族年金は再婚しても受給可能。また、65歳以降は退職年金と併せて受給ができる(最高額908ドル75セントまで)。遺族児童手当は亡くなったCPP貢献者もしくは障害者給付金受給者の子供に、一律で月213ドル99セントが支払われる。
OAS、CPPの支給額は2009年現在のもので、金額は変更される場合がある。また、カナダ国外で各年金を受け取る場合は非居住者税が毎月差し引かれて支給されるので注意したい。最後に年金の受給は全て自動では開始されないので、受給希望者は自分で申請を行わなければならない。
日本の年金に関してはカナダと日本は国際社会保障協定を結んでいるので、カナダから申請し日本の年金を受給することができる。また、OASの居住期間が日本に帰国していたなどの理由で条件に満たない場合も、条約に基き日本での居住期間を合わせて計算できる場合があるので、サービスカナダ(国際業務)に確認することが望ましい。
その他退職後の収入
公的年金以外に、カナダにはRRSP、RRIFといった制度がある。銀行のセービング口座やGIC(定期預金)、投資信託などを行う際に政府にRRSPとして登録し、登録した金額分年収を下げることで税率が下がり税金の還付が受けられ、利子などにかかる税金も先に延ばすことができる。RRSP、RRIF共に引き出し時に収入に基き税金がかかるので、リタイア後に引き出すことで税額が抑えられるというものだ。
さらに退職後の収入としてアニュイティというものもある。これは生命保険の逆で、初めにまとまった金額を払うことでその後毎月個人年金が得られるというものだ(一生涯受け取れるものや、受給期間を定める代わりに途中で死亡したら残金が戻ってくるものなど色々なタイプがある)。
ファイナンシャルアドバイザーのテイラー・ルリ子さんは、充実したリタイアメントライフを送るためには日頃から健康に気をつけること、人生の目的を持つこと、そして金銭面での人生設計をしっかり立てること、必要な分野は専門家に相談することが大切であると話す。
公的年金をはじめ各情報は左記の番号かウェブサイトなどで調べることができる。
(取材 前田 一也)
サービスカナダ ステートメント・オブ・コントリビューションズ 国際社会保障協定(国際業務) 私的年金などに関する相談 隣組 |