SPECIAL 2009
2009年5月21日 第21号 掲載
![]() 水野副会長。スポーツと環境の会議に出席したカナダプレースで |
今年3月下旬、スポーツと環境の世界会議がバンクーバーで開催された。今回で8回目を迎えたこの会議は、オリンピック開催地で大会1年前に開催されている。テーマはスポーツと環境。日本からは日本オリンピック委員会が参加した。
来年2月の冬季五輪開催を前に、バンクーバーに期待すること、スポーツと環境、そして2016年東京五輪招致などについて、今回、水野正人副会長に話を聞いた。
「日の丸を振ってもらうのが何よりの応援」
世界がバンクーバーにやってくる。日本選手団のサポートをしたいと思っても、どうしたらいいのかわからないというのが、邦人・日系社会の本音である。日本選手団はバンクーバーでどのようなことを期待しているのだろうか。
「そうですね。我々はオリンピック大会に行く時は、基本的にはまず現地の大使館、領事館に協力をお願いして、日本人コミュニティーとの共通のミックスゾーンができるようにしていただくということをやっています。
たとえば、北京オリンピックの時も、大使館の庭で選手と在中国の日本人の方が来て交流をするとか、日本人学校に場所を提供してもらって、選手が皆さんや子供たちと交流をするとかということもありました。
選手は基本的に競技に専念するわけですが、競技が終わった選手は、国際交流も大事なオリンピックの一部ですから、他の選手の応援に回ったり、応援してくれた方と交わったりということが大事だと思っています。
それから、やっぱり日の丸を振ってもらうことですね。それは、選手にとって大変な励みになります。日の丸がずら〜っとあれば、みんなうれしいですよね。もし、チケットが取れて観戦できるのであれば、ぜひ小さな旗でもいいので、振ってもらえたらうれしいですね」
バンクーバーでは大会期間中にジャパンハウスという交流の場を設けることも検討している。日の丸を持った観戦や、交流の場での触れ合い、ボランティアへの参加などと、サポート方法はいろいろとあるようだ。
オリンピックと環境
1990年代前半に環境対策はオリンピック精神の一つに組み込まれるようになり、今やオリンピックと環境は切っても切れない関係にある。水野副会長は国際オリンピック委員会(IOC)のスポーツと環境委員会メンバーでもあり、今会議でもパネルディスカッションにゲストとして参加したひとり。
2016年夏季大会東京招致のキーワードでもあるスポーツと環境の関係について聞いた。
オリンピックと環境は共存できるのでしょうか?
「オリンピックと環境が相反するということはなくて、基本的にはサマランチ前会長が1990年代初頭に、環境に対して我々の組織がしっかりと応えるべきだと提唱して始まりました。オリンピック運動というのは、それまでスポーツと文化をテーマにしていたのですが、それに環境を加えてスポーツ、文化、環境の3本柱で成り立っています。95年にはスポーツと環境の委員会ができ、私もその時からずっと委員をさせてもらっています。この地球に住む者は誰もが、いわば宇宙船地球号のクルー、乗組員であって乗客はいない。みんながほんとに環境を保全する義務があるんです。
スポーツも例外ではなく、義務があるわけですからそれを果たさなくてはならない。それと同時に、逆にスポーツはより多くのメッセージを送ることができるかもしれないと思っています。だからより役に立てるかもしれないと。それで、アウェアネス(意識)、インプリメンテーション(履行)、この二つのおおきな活動を推進しています。
アウェアネスとは、よく調べて、地球上でどういった変化が起こっているか、スポーツに関連して、どう対処すればいいのかを我々がよく知って知らせる必要があるということです。
インプリメンテーションは、当然まずはオリンピックゲームを中心にして、できることを全てやっていかなくてはならないということです。建物一つをとっても、どのように環境に対して配慮しているか、観客に対してどのようにゴミの処理をしてもらうか、あるいはいろんな準備をするのにマテリアルをできるだけ少なくしましょう、植林活動をやりましょうなど、できることはベーシックなことですが全部やるということです。
さらに、IOCの下には205のNOCという各国オリンピック委員会がありますから、そこに対して声をかけて、きちっと活動をやってもらう。日本オリンピック委員会(JOC)はこのIOCの205の中でトップランクの働きをしていると思います」
バンクーバー五輪委員会の環境に対する取り組みは?
「もちろん、基本的にはよくやっています。数字をつけるということはできないですけど。この環境に対するグリーンオリンピックという表現は1994年リレハンメルオリンピックからスタートして、毎回、回を追うごとによくなっています。これは我々がレガシー、遺産と呼んでいるもので、ハードの遺産は当然スポーツ施設とかが残ってそれがスポーツの発展につながるということ、もう一つのソフトのレガシーは、いろんなノウハウを確実に次へと伝えていってなるべく次のオリンピックを良くすることにあります。いろんな努力を過去から未来へつなげていくということをやっていくことが大事です。それから、広く知らしめることで皆さんに環境に対する意識を持ってもらうということも大事なことだと思っています」
2016年東京オリンピック招致活動
現在、東京は2016年夏季大会の開催候補地として最終選考まで残っている。ライバルは、オバマ大統領の出身地アメリカのシカゴ、南米初のオリンピック開催を目指すブラジルのリオデジャネイロ、そして、ヨーロッパからはスペインのマドリッドとどこに決まってもおかしくない都市が名乗りを上げている。
「今はどんぐりの背比べというところですよね」と現状を説明する。しかし、東京で開催されれば世界のショーケースとなり、Showcasing for the future metropolitanという位置づけで、環境も、技術も、もてなしも、すべてを世界最高のレベルでオリンピック開催ができると自負している。開催都市が発表されるのは今年の10月。もし、東京開催が決定すれば、バンクーバーオリンピックが招致成功後、初めての五輪となる。
がんばれ、日本!
地元が最も気になるのはやっぱりバンクーバー五輪での日本代表の活躍。これについては、「ほんとにがんばってほしい」と水野副会長も力を込めた。前回の冬季五輪トリノ大会では、メダルが金1個に終わった
。
「0・何秒という差で4位になった選手もいるんですよ、残念ですけど。トリノはほんとに僅差でメダルを逃しているんです」と残念そうに語った。バンクーバーではフィギュアスケートやスピードスケートなどメダル獲得が有力な種目が多いだけに、日本選手団を迎えるバンクーバーでも応援に力が入る。『アウェイをホームに』、地元の応援が大きな力と期待を込めた。
(取材 三島直美)