SPECIAL 2009
2009年5月14日 第20号 掲載
![]() グローバル・スポーツ・アライアンス(GSA)の岡田達雄氏 |
![]() スポーツ大会でのエコフラッグ掲揚で環境意識を啓発。2008年9月高円宮杯第19回全日本ユースサッカー選手権大会にて |
![]() 2008年12月女性ホームレスワールドカップ(ジンバブエ)にて |
国際オリンピック委員会、国連環境計画の共催で3月29〜31日、バンクーバー、カナダプレースで行われた「The8th World Conference on Sport and the Environment」。ここで東京から来加したNPO法人グローバル・スポーツ・アライアンス(GSA)常任理事の岡田達雄氏は「スポーツマンシップはヒューマニティを救う」と題して英語で講演を行った。彼の提唱する「エコプレー」とは何か。スポーツを通じた環境運動とは。(以下は講演前日の本紙インタビューである)
―グローバル・スポーツ・アライアンス(GSA)の活動の主旨を聞かせてください。
私たちの考え方はシンプルで、どんなものにも光と影が必ずある。その影の部分をできるだけ減らそうと考えています。環境対策には、技術面での対策や社会システムからの取り組みがありますが、私たちが一番大切にしているのはエシックス。ヒューマニティという言い方もできます。そこでスポーツなのです。スポーツにはフェアプレー、チームプレーがあります。しかしこれは人間社会だけのことです。これを地球や自然にまで広げ、持続可能な環境作りにつなげたいと思いました。それを「エコプレー」と呼んでいます。フェアプレーはルールを守って公正にプレーするのに対して、「エコプレー」は自然を豊かにして、省エネ、省資源に努めることを指します。
これがどうして大事かといえば、今、世界に求められているのは、経済や環境において持続可能な社会であるからです。これがちょうど「フェアプレー:経済の健全化」「チームプレー:地元コミュニティーの強化」「エコプレー:自然の循環を取り戻す」の形で対応しています。これは新しい社会の基礎を成すものだと思います。
ー実際の活動内容は?
例えばGSAで作った「エコフラッグ」をスポーツ大会時に掲げ、プレーの後は15分くらい時間を取って競技場のゴミ拾いを行います。拾ったらゴミをよく見ることで、どうしたらいいのかと考えるようになります。そうした環境意識を育てることが活動の目的です。またペットボトル削減のための運動として、スポーツ大会でコップを持参すれば、水を無料で提供するという取り組み。そのほかマラソンコースに木を植える活動もあります。
この活動は世界各地で「GSAチームキャプテン」となった人たちが推進役となり、「パートナー(学校やスポーツ団体)」と「スポンサー(地域企業)」との三者で、環境におけるチームプレーを行っています。企業は活動資金を提供、それが地域の青少年を健全な育成に寄与しますから、企業は地域に喜ばれる。こういう仕組みができあがっています。
ー岡田さんがこの取り組みをしようと思ったきっかけは?
スキー場開発の仕事にかかわったことです。建設会社の人たちは環境を破壊しない工事の仕方を知っています。ところがコストダウン優先のために、現実にはそのノウハウを生かしていないと知りました。土は表面から数十センチまでの表土に、その土地の生態系のエッセンスである木の根、種、昆虫の卵、微生物などが詰まっていますが、工事ではこの表土をコンクリートで覆ってしまっています。環境を守るには、一度表土をよけて取りおき、建設後にまたそれを戻せばいい。簡単なことです。こうした技術を実践してもらうことがフェアプレーだと思っています。
用地交渉で農家の人たちを訪ねると、皆「後世に肥沃な土地を残したい」と言います。ところがその年の収穫を増やすために農薬を使っている。「知っていること」と「やっていること」が一致しないのです。「知行合一」という言葉がありますが、それができていない。私がもし学校の先生だったら悲しいと思います。学校で木が大切だと教えても、社会ではバッサバッサと木を切り倒している。教えたことが社会では生かされていないわけですから。知識を行動に結びつけるために必要なのは「人数×意識×行動」だと思います。
ースポーツという観点はどこから生まれましたか?
ヨットが趣味の私にとって、海が汚いのはとても悲しいように、スポーツをやる人は自然環境に敏感です。そして行動的で社会的な影響力を持っている人が多い。スポーツ愛好家は世界に10億以上ですから、この人たちが自然を豊かにしていこうと意識し、行動する「エコプレーヤー」となれば環境を変えていけると思ったのです。10年前に活動を始めた時は、ちょっと変わった考え方でしたが、今回の会議でこうして同じ思いの人が集まっていることを考えると、決して間違った考えでないとわかります。
ー現在の展開状況は?
現在56カ国174チームに活動が広がっています。カナダでは、地元フットサルリーグの会長であるガブリエル・ソーサ氏がキャプテンを務めるGSAトロントが活動しています。今秋、グローバル・スポーツ・アライアンスは設立10周年を迎えますが、活動当初は百カ国千チームの設立が目標でした。まだまだそれには及びませんね。
ー順調に展開しているGSAの活動ですが、活動への障害はなかったのですか?
私達の実際の活動である「エコフラッグ」を掲げること、マラソンコースに木を植えることなどは具体的な活動だと思っていますが、これは活動の枝葉のことで幹ではありません。私たちはよく「何が空気をきれいにするか知っていますか?」と問いかけていますが、それに『気付いてもらうために』木を植えるのです。私たちの目的は、先ほど話したように「エコプレーヤーを増やす」「スポーツマンシップのような意識を高めて、知識と行動のギャップを縮める」という人々の意識改革ですが、メディアを含めて多くの人はこういった活動に対し、目に見える結果を求めてきます。確かに植林活動自体も大切なことですが、私は「人の意識に木を植える」ことの方が、より重要だと考えます。ただしそれは当然目には見えないので、数字に表したり写真に残すことが難しい。となれば、非常に伝わりにくい。私がこれまでの10年間で苦労しているのは、そういった点ですね。
ーオリンピックと環境がテーマの本イベントで「スポーツマンシップはヒューマニティを救う」と題して講演されますが、どういった主旨ですか?
人間は地球上で唯一将来のことを考えられる動物で、それが人間の素晴らしさだとすると、現代のお金儲け主義の社会が非常に人間性に欠けることに思えます。その人間性を取り戻そうと訴えるつもりです。そしてもう一点。私はオリンピック開催地がエコフレンドリーになっただけでは意味がないと思っています。今回の講演でIOCに提案するのは、オリンピックのホストになれないような開発途上国の子供たちの教育のために、オリンピックを通じて寄付金が回る仕組み作りです。子供たちに農業、スポーツ、アートやクラフトなどの技術を身につける学校のような場が開発途上国にすでにいくつかできていますが、そうした中から将来オリンピックに出場できるようなアスリートが登場したらいいでしょうし、そうでなくても素晴らしい人間が育成できればいいでしょう。オリンピックが目を向けているのは世界のトップアスリート、いわば富士山でいう頂上ですが、私たちが見ているのは、ボトムである10億人のスポーツ愛好者。互いに協力しあえたら良いと思うのです。
ー今後の目標は
10億人のスポーツ愛好家をエコプレーヤーにすることは私の生きている間にできることではないでしょうが、世界中の辞書に「エコプレー」の言葉が載ることや、エレメンタリースクールの体育の時間に「チームプレー、フェアプレー、エコプレー」ということが教えられるようになることが一つのマイルストーンだと思っています。
(取材 平野香利)
| 岡田達雄氏プロフィール | |
1999年NPO法人グローバル・スポーツ・アライアンス設立。国連機関(UNEP、UNESCO)などと協力し、スポーツ愛好家による「エコプレー」実践のための世界的運動「エコフラッグ・ムーブメント」を積極的に推進している。著書「跳べ!エコフラッグ」ワック出版(2003年) グローバル・スポーツ・アライアンスのウェブサイト http://www.gsa-world.org/ |
![]() 活動への意欲と喜びが岡田氏の語りからあふれ出す |