SPECIAL 2008
2008年3月6日 第10号 掲載
![]() ユーモアを交えて予算案を説明するキャンベル首相 |
![]() 講演会前のネットワーキング |
![]() PWBの小松和子社長がキャンベル首相を紹介 |
![]() 首相と記念撮影をする日加商工会議所のメンバー |
2月22日、メトロタウンのヒルトンホテルで、日加商工会議所とバーナビー商工会議所が、ゴードン・キャンベルBC州首相を迎えて2008年州予算案についての昼食講演会を行った。
環境税である炭素税導入を盛り込み、反響を呼んでいるBC州政府の2008年予算案が発表されたのは19日。その他、州民および事業主にとって、極めて関係の深い問題である州政府予算について、キャンベル州首相から説明を受けることができるとあり、当日は約300人が集まる盛会となった。
出席者は、日本国総領事館から武藤一郎首席領事、韓国総領事、インドネシア総領事、パシフィック・ウエスタン・ブルーイング (PWB)の小松和子社長、Coast Hotel & Resortの内藤周八社長、カナダ三井物産の和田龍雅カナダ三井物産副社長兼ジェネラルマネージャーをはじめとする日加商工会議所のメンバー、バーナビー商工会議所のJack Kuyer会長、Iain Black, Richard Lee, John Nuraney各氏などのMLA、さらにバーナビー市の市議会議員、教育委員会の委員をはじめ、そうそうたる顔ぶれとなった。
将来を見据えた予算案
MLAでPacific Gateway CommitteeのメンバーでもあるRichard Lee氏の開会の挨拶、ランチの後、いよいよ小松社長がキャンベル首相を紹介。講演が始まった。
2008年の予算案の背景となったのは、好況の下で、50年後のBCというように長い目で見ていこうという姿勢だ。子供や孫たちが暮らす将来を見据えて行動する。長期的な視点で物事を見るのは難しいが、自分たちが楽しんでいる生活レベルを次世代へとつないでいく。1年や2年ではなく、さらに先を見て、Selfish(利己的)ではなくSelfless(無私無欲)で、経済的、社会的、環境上の問題に取り組もうというものだ。
10年前、BC州は不況に苦しみ、州民の中には他州へと移る人も多かったが、州民が努力した結果、現在は好況に沸いている。州政府経済も赤字を解消した上、5年連続での黒字財政を達成。雇用の創出では、過去数年、カナダ全体で最高水準を記録してきた。失業率は記録的に低い。
今回の予算案で、BC州の個人への所得税率はカナダで最低となる。BC州が抱える唯一、かつ最大の課題は、人的資源の問題、つまり労働力不足だ。優秀な人材を集めるためにも、今回の所得税減税で、さらに魅力的な州になろうというものだ。
経済へ良い影響を与えるよう、法人税も減税している。General Corporate Capital Tax の代わりにGeneral Corporate Taxを導入。さらに金融機関への資本税も今後数年で廃止を予定している。
州経済の信用格付けはAAマイナスから最高ランキングのAAAプラスへと転換した。それも10年はかかると言われていたものを、5年かけずに実現している。また、BC州はアルバータ州とともに、カナダ経済をけん引している。州のビジネスは自信を取り戻し、結果、ヘルスケア、公共教育、ハウジング、ホームレス、公共交通に投資ができる環境が整っている。
ヘルスケアへの取り組み
州民全てが直面している重要な問題で、次世代へと重荷を課そうとしているものに、ヘルスケアがある。次世代も私たちと同じレベルのヘルスケアを受けることができるようにしなければならない。
医療費拡大 ・2000 ― 2001年 93億6000万ドル ・2008 ― 2009年 148億4000万ドル ・2010 ― 2011年 165億4000万ドル |
医療費予算を拡大するのに加え、春には州民に対して、さまざまな選択肢が新たに提供されることになっている。例えば、現在、慢性的な症状で定期的に処方箋薬が必要な場合、毎回、医師を訪れて処方箋をもらう必要がある。医師を訪れなくても、薬を手に入れることができるようにシステムを変える予定だ。その他、自然療法のテストを保険負担とする。
医療費の支出を抑えるには、州民が健康的なライフスタイルを送ることも大切だ。ヘルスケアが破綻せず、次世代が同様のヘルスケアを受けることができるよう、プロモーション活動にも予算を配分する。
保健研究予算 Terry Fox Research Centre (ガン研究) 3000万ドル Brain Centre (脳疾患など)2500万ドル Hip Centre (腰の健康に関する研究) 1000万ドル Genome BC (先進医療であるゲノム研究) 5000 万ドル |
Hip Centreへの予算投入については、腰の骨を折ると、2割が死亡、5割は後遺障害を負い、大きなQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の問題を抱えることになる。転倒防止戦略作りなどに投資することで、現在、ヘルスケアの慢性的な症状で最大の出費となっている、腰の骨折の問題に取り組み、ヘルスケアを長期的に運営していくことができるようにする。
急務の気候変動への対策
昨春、州内の河川で雪解け水などのために、水位が上がり、広範囲で氾濫した。地球環境が変化していることを証明したものだ。また78%の州内の松林を壊減させた松食い虫についても、冬の寒さが退治してくれると期待していたものの、暖冬で死なず、結果、林業が大きな打撃を受けている。
生活に大きな影響を及ぼしている気候変動について認識して、対処することが非常に重要だ。2008年の予算案では所得税を減らす一方で、州民が自分たちで、気候変動への取り組みを選択するようにした。
| 導入が発表された炭素税は歳入中立の税金 ・政府予測では炭素税収は約18億ドル ・全18億ドルを個人としての州民に対してのみではなく、法人に対しても還元する ― 2億5500万ドル 小規模企業への減税 ― 4億1500万ドル 法人税減税 ― 3億9500万ドル 低所得向けの税金還付 「Climate Action Tax Credit」 ― 7億8400万ドル 所得税減税 |
小規模企業の法人税率は4.5%から3.5%に引き下げ。さらに、2011年までに2.5%まで下げるという。
低所得者向けClimate Action Tax Creditは世帯収入が3万5000ドル以下、あるいは独身者は3万ドル以下の場合は還付金を受ける。金額は年間で大人100ドル、子供30ドルだ。
化石燃料に対して課税される炭素税。省エネ努力を行うことで、税額を抑えることもできる。暖房の設定温度を少し下げる、自動車を定期的に調整する、省エネ電化製品であるEnergy Saver商品を購入する、など、各人の選択次第だ。Energy Saver商品を購入するとPSTも免除される。
政府は炭素税導入で、州民に省エネ努力を求めていることを認識している。そのため、7月1日に導入する前、6月中に、州政府財政の黒字分の一部を、気候変動の防止活動の配当、Climate Action Dividendとして分配する。金額は一人100ドル。4人家族なら世帯あたりで400ドルの配当金となる。
この配当金をどう使うかは、その人次第だ。しかし、政府としては、断熱材を補強して機密、断熱性能を高めることで省エネに結びつけるなど、できるだけ温室効果ガス排出を減らすために利用することを奨励する。
政府では炭素税導入で、州民がより“グリーン”な選択を行うことを期待している。例えば毎日5キロの距離を自動車で通勤している人が、車を使わず歩くことにすると、年間約200ドル節約することができる。健康にもよいのでヘルスケアへの負担が減る上、気候変動に対して良い影響を与える。実行するのに必要な費用は運動靴代だけだ。
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キャンベル首相はバンクーバー市長も経験している。在任中にダウンタウンのリゾーニングを行い、商業区域を住宅地に変えた。この決定には反対も多かったが、結果的に車の使用が減った。現在、ダウンタウンでの移動の62%は徒歩でのものだ。
出席しているバーナビー市の市議会議員などが、暮らしやすい、健康的なコミュニティ作りを行い、運輸需要を減らすことも期待している。
環境問題研究については、9800万ドルを用いて、気候変動の研究機関Pacific Institute for Climate Solutions を創設するほか、2010年までにカーボンニュートラルな公共部門に1億3000万ドルを投入。エネルギー効率の良い電化製品や自動車に対してはPSTが免税される。
公共交通機関に対する取り組みとして、バスの数を2倍にする。その結果、1日15時間は15分ごとにバスを運行するほか、バスルートを増やし、より便利になる。利用者が増えて、排気ガス対策となると期待している。
BC州のバイオマス資源は世界最大だ。カーボンニュートラルな発電を行い、州内で使用する分だけでなく、ワシントン州やオレゴン州をはじめとする米国各州へ輸出することも可能だ。経済推進の上で、極めて大きな機会でもあることから、予算案ではバイオエネルギーや代替エネルギーソリューションに5700万ドルの投入を盛り込んでいる。
州民が求める未来―個人所得や事業税において強い競争力を誇る未来―を築くための予算。生産性を高めるよう奨励するとともに、カナダにおける太平洋に面する唯一の州、太平洋への玄関口として、国際的にも魅力のある州であるよう引き続き努力していく。そのためにも州政府がビジネスセクターと対話を持って、協力しあうことが肝要だ。
BC
州では、2009年にWorld Police and Fire Gamesが、2010年には冬季オリンピックが開催予定だ。世界中から人々が集まるため、魅力にあふれるBCを世界に見てもらう最高の機会だ。また、素晴らしいBC州を、より良いものにするために州民としても努力していきたいところだ。
(取材 西川桂子)