MAPLE 2008

2008年11月13日 第46号 掲載
 

スピードスケートショートトラック日本代表インタビュー
『4年に一度の舞台で足跡を残したい』



リレーでアンカーを務める第2走者の藤本選手

1500メートル男子決勝に進んだ高御堂選手(中央)。レース後、「力不足を感じた。世界に並ぶように技術、スタミナをつけたい」と語った

リレー第3走者の寺尾選手(中央)。体調不良のため2日目からリレー種目に参加。それでも4位という結果を残し、ベテランの存在感を見せた

女子リレーチームの酒井、伊藤、小澤、清水各選手


 バンクーバー市パシフィック・コロシアムで10月24日から26日まで開催されたスピードスケートショートトラックW杯第2戦バンクーバー大会。中国、韓国、アメリカ、カナダと強豪がひしめく中、健闘した日本代表。リレー男子決勝で惜しくも表彰台は逃したものの、2010年同じリンクでの表彰台を目指して手ごたえを感じていたようだった。
 今回、主力3選手、寺尾悟選手、藤本貴大選手、伊藤亜由子選手と柏原幹史強化部長に、大会2日目を終えて話を聞いた。


 

―2010年オリンピック会場になるこの会場の印象を聞かせてください


寺尾選手:

オリンピックの会場って、どこも共通性がありますね。氷を見たときもなんとなく、オリンピックやりそうな雰囲気があって。こんな感じかなっていうイメージはできたかなって。それに、長野やトリノと一緒で、一番前の観客席が結構リンク側に来ているので、臨場感は非常にあるんじゃないかなと思います。

藤本選手:
僕も、前回のトリノと比較して、お客さん何人入るのかとか、照明どれくらい強いのかなとか、これは明るくなるなとか、だいぶオリンピックの感じというのはつかめました。それに技術的にも手ごたえがあったので、そういった面では、バンクーバーにいい方向につながるんではないかと思います。


「日本人が多いと思ったんです。アジア系が多いので、外国に来てる感じがあんまりしないです。日本語が通じるところもお店とかにあったし」とバンクーバーの印象を語る伊藤選手

伊藤選手:
私はオリンピックをまだ経験したことがないので、わからないんですけど、リンクがすごく明るくて、まぶしいくらいで。練習の時からだったんですけど、すごい明るいなって。氷も柔らかくて。私としてはちょっと苦手な氷という感じはしたんですけど、こういう状況でオリンピックがあるんだなと思ったら、慣れていきたいと思います。

 

―韓国人の金善台(キム・サンテ)コーチを向かえて


寺尾選手:
単純にコミュニケーションが一番大変でしたね。ただ、同じスケートなので、言いたいことは分かるし、今は特に何を言おうとしているかは見えてきましたね。練習量とか内容とかも全く違いますけど、ゴールが結構見えているので、頑張れると思うんです。(金コーチの加入は)タイミング的にはよかったんじゃないかと思います。


ソルトレイク大会から体調を崩していたが、「ずいぶん戻ってきています」と笑顔を見せる寺尾選手



藤本選手:
僕は、うまくいってる方だと思うんです。難しいところというのは、さっき寺尾さんが言われたように、言葉の壁ですね。コミュニケーションっていうのは、時間がたたないとなかなか踏み込めないというところもありますし。でも、そこは時間がどんどん解決してくれると信じているので、それに伴ってスケートの技術とか、テクニックとか、レース展開とか、そういった面では優れているところを吸収して、うまく金コーチの波に一緒に乗っかっていきたいなと思います。

伊藤選手:
私は、とりあえず言われたことをやるといった感じです。練習では結構自分でも去年よりは良くなったと思いますし、サンテの言うコース取りとかも、練習ではすごい言いたいことは分かるんですけど、でも、今ワールドカップで指示を受けながら滑っていると、やっぱり「こういうときはどうする」っていうのが、まだわからなくて。レース前と後に話して、レースを重ねていくうちに、うまくコミュニケーションを取っていこうと思ってます。


―練習量がかなり増えたと昨日強化部長から聞きましたが。


寺尾選手:

一世代違う選手と全く同じことをやっても自分の場合は強くなるとは思えないので、うまく技術を使いながら、少しでも今ある体力を伸ばしていければいいかなと。その辺は最後は自分でうまく努力していくところですね。

藤本選手:
僕は結構体調的に痛くなっても我慢してやるというタイプで、そういう意味ではどんどんやりたいなっていう気持ちはあります。だから、今のメニューのままできる範囲で、こなせる範囲でこなして、こなせたらプラスアルファでやるとか、やっぱり体力の追求というのは永遠に求めていきたいなっと思いますね。

伊藤選手:
私は練習があまり嫌いではないし、逆に休む方が不安になるので、練習が多い分には言われたことをやるだけと、ついていこうと思います。


―世界トップレベルに1年ちょっとで追い付くために、どこを強化していくというのはありますか?


柏原強化部長:
体力も、技術も、精神的なものも、すべてだと思うんです。なにかきっかけがあって追い付くと早いと思うんですよ。今、ベースができてきているので、そこで何かいいきっかけがつかめるといいなと。今回の藤本にしても、だいぶそういったきっかけをつかみ始めているなというような気がします。それがもうちょっとしっかりつかめてくれるともっと上がっていけると思います。

寺尾選手:
すでに過去にそれなりのことをしてきているわけで、その上に、これからのことを徹底的にやっていくと。今、ブレークスルーしかけていると思うので、今やれることをすべて、教えられることをやっていった方が、最終的にゴールに近いような気がします。

藤本選手:
まず早い国の選手についていかないことには、技術を発揮する場もないんで、ついていって技術が試されるので、まずは体力をつけてという感じですね。

 

―バンクーバーの環境。食事は?


柏原強化部長:
食事はここはいいですね。日本食品も料理屋もあるので、やりやすいですね。

藤本選手:
トレーニングしていくと疲労とか溜まっていきますし、食事はストレス発散の一つの方法なので、ちょくちょく日本食レストランにでも連れて行ってもらえるといいですね。(笑)

伊藤選手:
日本食好きです。日本食がいっぱいあって私はうれしいです。


男子のリレーは順調だが、女子も今回参加していない桜井選手が合流すれば上がってくると話す柏原強化部長

 

―試合の合間のリラックス方法は?


寺尾選手:
読みたい本を持ってきたり、普段やれないことをやったりするのが、結構リフレッシュになります。だいたい2、3冊毎回持ってきてますね。フィクション系はあんまり読まないです。人の生い立ちとか、最近はスポーツ選手のとか。あとは自己啓発系ですかね。

藤本選手:
僕は基本的にDVDが大好きで、お笑いとか。遠征には必ず持っていきます。スケートの道具の次に大事というくらいお笑い好きですかね(笑)。食事と音楽とコミュニケーションがあればリフレッシュできます。

伊藤選手:
食べることです。


「コーラ大好きです。食事と音楽とコミュニケーションがあればリフレッシュできます」と笑う藤本選手

 

―どんなものが好きなんですか?


伊藤選手:
あまりお菓子とか食べちゃいけないんですけど…チョコレートが好きです。でも、あんまり食べてないです(笑)。

 

―オリンピックに向けて


柏原強化部長:
選手に頑張ってもらって、ひとつでもいいから旗を見たいですね。

寺尾選手:
最後まで行けば、(五輪出場)5回目になるので、なんか足跡を残したいなという思いが最後は支えてくれるかなって思っていますし、そういう気持ちで1年半やっていきたいと思います。

藤本選手:
せっかくなら4年に一回のチャンスで何かを残したいという気持ちはトリノの時よりも強いし、まだ時間がありますので、一生懸命頑張ってオリンピックをピークに持っていきたいと思います。

伊藤選手:
前回(五輪出場を)逃している分、今回は前回以上に気持ちは高いものがあるつもりなので、そこで自分の最大限の力を発揮できるように、今からいろいろ経験して、その頃には精神面も強くなっていられるように鍛えていきます。

 

 韓国から金善台新コーチを迎え、練習メニューは変わり、練習量は格段に増した。レース運びも金コーチの指示を受け、展開していく。選手もコーチも試行錯誤しながらも、ショートトラック新体制はバンクーバー五輪目指して走り出した。

 今季は、12月に長野で行われるワールドカップ、さらには来年3月オーストリアでの世界選手権に照準を合わせ、来季オリンピック代表選考大会へつなげていきたいと柏原強化部長は語った。

 大会3日目表彰台を逃した男子リレー決勝後、寺尾選手が「次、ここでまた頑張ります」と見せた笑顔が印象的だった。

 2010年2月、このパシフィック・コロシアムの同じアイスに立つ、ひと回り大きくなった選手たちの活躍する姿が見られることを楽しみに待ちたいと思う。

(取材 三島直美/写真 丸山勧)