MAPLE 2008

2008年4月3日 第14号 掲載
 

カーリング女子日本代表、『チーム青森』にインタビュー
「技術力も、精神力も、世界トップレベルを目指して」


 チーム青森が世界選手権に向けて3月15日からニューウエストミンスター市で合宿を行っていた。今回の遠征メンバーは、石崎琴美さん、目黒萌絵さん、本橋麻里さん、山浦麻葉さん、近江谷杏菜さん、阿部晋也コーチ、フジ・ミキコーチ。

 3月22日から30日までブリティッシュ・コロンビア州バーノンで開催された2008カーリング女子世界選手権に日本代表として出場するためである。

 この大会は2010年冬季オリンピックバンクーバー大会の出場権獲得に大きく影響する大事な大会に位置づけられているため、選手たちの練習にも熱が入っていた。


(取材 三島 直美)



 

■世界選手権に向けて


 世界選手権の始まる3日前の19日にインタビューした。次の日はバーノンへ向けて出発。調整具合を聞いてみると、「すごくいいと思います。(バンクーバーに入って)うまくゲームもコントロールできているし」と阿部コーチ。目黒さんは、「そうですね、それにどれだけバーノンのアイスのコンディションを早くつかんでやれるかというのが大事だと思います」と語った。

 重要な大会を前にして気が引き締まる感じがあるんですかとの質問に、「ハイ!!」と声を揃えて明るく笑いながら答えていた。

 大会の目標は、「チームとしては最低でも6勝を挙げていきたい」と目黒さん。6勝とは上位グループに入る勝ち越しライン。阿部コーチは、「4位以内に入れば決勝トーナメントに進めるので、そこに食い込んでいける可能性が出てくるラインです」と説明した。

 さらに目黒さんは「特に世界選手権レベルの大会だと、技術だけではなくてメンタルや作戦面でも、世界レベルのチームが出てくるので、自分たちも負けずにやっていきたい」と意欲を語った。


ここを目指してストーンをと目標位置を指定するスキッパーの目黒さん

 


■チーム青森について


 2006年トリノ五輪の活躍で一躍脚光を浴びたチーム青森とカーリング。日本ではチーム青森と言えばカーリングの代名詞ともなった。あれから2年。結婚のため二人が引退、プレーを続ける目黒さんと本橋さんに新たに石崎さんと山浦さんが加わり新生チーム青森としてスタートを切った。

 五輪前からチームコーチを務めているカナダ人日系3世のフジ・ミキさんは、「トリノ五輪のチーム青森も非常にいいチームだったので二人が引退したのは残念だったけど、このチームもとってもよくまとまったいいチームに仕上がってきています」と語った。

 五輪経験者の本橋さんは、「上位に食い込んでくるチームはやっぱりメンタルでも、技術面でも、ショットでも安定性があると思いますね。そこがまだやはり足りないところでもあったかなと思います」と振り返った。目黒さんは、「新メンバーで(世界の)高いレベルのチームと、海外遠征や合宿でやってこれたので、経験は積めていると思います。(トリノ)オリンピックの時以上に、メンタル面とか作戦面でも上を目指していきたいと思っています」

 「若いチームで、いい意味ですごく勢いがあるかなという感じを受けますね」と他チームから移籍してきた新メンバーの石崎さん。同じく新メンバーの山浦さんは、「一人ひとりがしっかり自覚を持っていて、カーリングに対して強い意志が感じられるチームだと思います」と語った。


カーリング独特のフォーム。氷の状態やストーンの形で滑るコースが微妙に変わってくる



■メンタル面の安定が試合を左右する


 カーリングの不安定さはとの質問に、みんなが顔を合わせて「メンタル、精神面」と答えた。「メンタルが崩れると技術が崩れます。技術はずっと持ってるはずだしね…」と照れ笑いで語った目黒さんに一同も爆笑した。「技術というのはそれほど短期間で極端に上がったり下がったりするものではないですからね」と阿部コーチの助け船が出て、みんながまた笑顔になった。 

 精神面の強さが世界の強豪に勝てる条件のひとつというコメントは、ここまででもすでに何回も出てきた。『氷上のチェス』と呼ばれるカーリングは、ストーンを投げる技術だけでなく、作戦の組み立て、そして作戦を成功させるために必要な精神面の充実が勝敗を分ける大きなカギとなる。

 「崩れかけた時にでも、団結力とまだいけるという気持ちが大切になってくると思います」というコーチの言葉には説得力があった。


ミキコーチの指導を受ける近江谷さん。まだ高校生の彼女がカーリングを始めたのは4年生の頃。「チームワークで勝利する瞬間が一番楽しい」と語った


 

■2008カーリング女子世界選手権、チーム青森は惜しくも表彰台届かず


 今大会ではアジア旋風が吹き荒れた。22日から27日まで行われた予選では、中国が優勝候補カナダを破り9勝2敗でカナダ、スイスと並びトップ通過。続いて日本、デンマークが7勝4敗と2位タイとなり、決勝トーナメントへのタイブレーク試合となった。

 決勝トーナメントは、28日から3日間行われた。チーム青森は、28日早朝に行われたタイブレーク試合でデンマークを破りプレーオフに進出。同日午後にはプレーオフ第1試合でスイスを破り準決勝に進出した。

 29日の準決勝は前日プレーオフで中国に敗れたカナダとの対戦となった。11エンドまでもつれる接戦の末、惜しくも8-9で敗れ、3位決定戦に回った。

 3位決定戦は、プレーオフ1試合目で破ったスイスが相手だった。しかし、この日2試合目となるチーム青森は7-9で敗れ、日本代表初の表彰台には一歩及ばなかった。優勝はカナダ、2位中国、3位スイス、4位日本。来年は韓国で開催される。


■オリンピック出場に大きく一歩前進


 カーリングのオリンピック出場枠は、前回のオリンピックから次まで3年間に行われる3回の世界選手権の順位で決定する。各世界選手権の順位をポイントに換算し、多い順に10位までが出場権を獲得する。

 去年の大会もチーム青森が出場。8位で4ポイントを獲得した。今年は4位と大躍進。9ポイントが加算され、オリンピック出場に向けて大きく一歩前進した。

 「今大会でオリンピックへの大きな道筋が見えてくるかなという大事な試合となります」と試合前語っていた阿部コーチの言葉通りとなった。ミキコーチも、「このチームなら今回いいところまでいくだろう」と語っていた。

 これで残すは来年のみ。しかし、チーム青森が日本代表として再び世界選手権の氷上に立つためには、パシフィック選手権で優勝するという大命題があり、さらにオリンピック出場には国内選考がありと、オリンピックへの険しい道のりはまだまだ続く。

 今回世界4位に食い込むという素晴らしい成績は選手たちの自信になったに違いない。私見を言わせてもらえば、優勝できるのではないかとカナダ戦を見ていて実は思っていた。それを思うと少し残念ではある。

 しかし、まだまだ『上を目指していく』というチーム青森。オリンピックがますます楽しみになってきた。


ストーンの位置を確認しながら、一投一投作戦を練っていく

 

■2010年の目標


 選手それぞれに2010年バンクーバー五輪の目標を聞いた。

 目黒さん「出場できることがまず第一。(出場)できたら上を目指していきたい」

 本橋さん「一回経験があるので、2006年の時のアイスに立てた自分を振り返って、さらにタフになってまたオリンピックのアイスで戦いたいと思います」

 山浦さん「オリンピックの目標というのはまだ明確にないですけど、当面の目標として世界選手権で食い込んでポイントを取ること、来年のパシフィック選手権で優勝することを重要視してそこで勝ちたいなと思います」

 石崎さん「私も山浦さんと同じで、2010年まで(先のこと)は考えられないけど、目の前の大会一つ一つ、1試合1試合をどうこなしていくかというのが大切なのかなと思います」

 近江谷さん「まだ世界の経験が少ないので、もっと強い気持ちで世界に臨めるようにあと2年でいろいろな経験を積んで安定したショットとか精神面を持てるようになれたらいいなと思います」

 


左上から、ミキコーチ、石崎さん、近江谷さん、阿部コーチ。左下から、山浦さん、目黒さん、本橋さん。みんな仲が良くて、チームワークはバッチリ