MAPLE 2008

2008年1月31日 第5号 掲載
 

ショッピングよりハイキング! この達成感がたまらない〜
ダイヤモンドヘッドの早朝トレッキング


 ワイキキといえば、浜辺で一日のんびり寝そべるか、ショッピングに歩き回る、というのが定番でしょう。でも、ちょっと「達成感」が足りないなぁ…と思う人にイチオシなのがダイヤモンドヘッドの頂上を目指すハイキングです。

 実は、オアフ島には上級者向けの本格的トレッキング・ルートから、ゆったり海辺を歩く朝の散策向けルートまで、たくさんのハイキング・コースがあります。どのコースも、ハワイの自然に触れ、深い緑のトロピカル森林浴やバードウォッチング、ダイナミックな海岸線や滝などに出会える変化に富んだものです。中でも、「短時間で大きな達成感を感じることができる!」と人気なのが、ダイヤモンドヘッドのハイキング。オアフ島のシンボルとも言えるこの山は、ホテルの部屋やビーチから眺めるだけでも十分に感動的ですが、自分の足で歩いて頂上に達したときの満足感は言葉を一瞬失うほど。できれば早朝、朝日が昇るのを眺められる時間に行くのがおすすめです。


ワイキキ海岸が一望に見渡せる



 

あなどれない標高差170メートル


 ダイヤモンドヘッドは、およそ30万年前に噴火した火山の火口。海からの強い風や雨に侵食され、現在のユニークな姿となったのだそうです。ハワイの伝説では、火の女神ペレの妹、ヒイアカが、この山頂をマグロ(アヒ)の額(レア)のような形をしているので「レアヒ」と名付けたのだといいます。今もローカルの人は「レアヒ」と呼んでいるようです。

 ハイキング・ルートの入り口から山頂までの距離は約1.1キロメートル。標高差は170メートルほどなので、聞いただけではそれほど大したことがないルートのように思えます。実際、地元民の中には、エクササイズ代わりにここを一日何往復もする人もいるらしい。しかし(!)、初めての人、特に私のように日ごろ運動不足がちな人にとっては、この170メートルがなかなかあなどれないものでした。

 ダイヤモンドヘッドは、ワイキキ・ビーチを中心に、ココヘッドからワイアナエまで一望できる半島の突先にあります。そのため、この山は早くから軍事的に重要な場所とされてきました。1904年には米国の連邦政府に軍用地として買い上げられ、砲台の設置や攻撃統制所などが建設されました。第二次大戦中には407台もの砲台が並んでいたそうです。

 現在は州立の自然公園になっていますが、ハイキングルートのほとんどは、軍事施設だった時代に作られたもの。物資を運ぶために何度も曲折して作られた道、トンネル、急勾配の階段など、普通の山道をたどるハイキングとはかなり違う雰囲気です。

 


階段を登りきるといよいよ頂上




『地獄の直登』の後は素晴らしい景色が待っている


  私たちがホテルを出発したのは6時半。朝日を眺めながら、頂上付近で朝食を楽しもうという計画でした。ワイキキから市バスでもアクセスできますが、停留場は登山口のだいぶ手前にあるので要注意。ちょっと料金は高いですが、日本人のガイド付きのツアーに参加するのも手です。

 噴火口の北側に作られたトンネルを抜け、火口底を横切るようにして登山口に着きました。ぐるりと周辺を見回すと、太古の噴火の様子が想像できるような切り立った岩壁が輪を描いて続いています。登山口からしばらくはゆるやかなコンクリートの歩道が続くので、周辺の木々や野鳥などを眺める余裕もありました。しかし、何度も何度も折れ曲がる山道にかかったころから、一緒に歩いている人の声が聞こえなくなりました。みんなうつむきがちに黙々と歩いているのです。ところが、もう頂上から降りてくる人がいます。日の出を見ようと登った人でしょうか?英語でも、日本語でも、「おはよう」という声をかけてくれますが、こちらはハアハア言うばかりで、ちょっと笑顔を見せるのがせいぜい。そんなとき、習ったばかりの「アロハ」の指サインはありがたい。手を上げてサインを作り笑顔(少々ゆがみがちだったかもしれませんが…)を見せればOKです。相手も「アロハ」と声をかけてくれました。


人一人通るのがやっとの不気味な(?)トンネル



 やがて、ちょうど中腹あたりに、かなり傾斜のきつい階段が見えてきました。このコースを歩いたことがある知人から、「いやぁ、あの階段はきつい。階段の途中で座り込んでいる人もいたからなぁ」と聞いていたので、少々不安。しかし、その直前に『励ましのごほうび』が待っていました。ココヘッドの方向が見渡せる展望台です。空は雨雲に覆われて、ほんの少し海面が金色に光っているだけでしたが、「わぁ!」と思わず声が出てしまうほどの美しさ。弾んでいた息がゆっくりと整っていくまで、しばらく海を眺めていました。

 そしていよいよ階段。前日の雨で滑りやすくなっているので、足元を見ながら、一段、一段上がっていきます。76段の階段をようやく登り終えると、その上にはトンネルが待っていました。狭いトンネルなので、かなり圧迫感があります。閉所恐怖症気味の人には少々つらいかもしれません。その上、トンネルを抜けるとまた急勾配の階段が待ち受けていたのです!「座り込みたい…」とまでは思いませんでしたが、正直かなりきつい。短距離のハイキングとあなどれないものがありました。十分な水は必携でしょう。


登山口は火山の火口底


 しかし、旧軍事施設の螺旋階段を登りきると、目の前に真っ青な空とあふれるような光が広がっていました。ようやく頂上に出たのです。ツルツルとすべる金属製の階段をあがり、頂上の展望エリアへ。目の前には雄大な太平洋。右手にはワイキキの浜辺とダウンタウンの白い高層ビル群、左手には深い緑に覆われた山並み、そして目の下にはクラシカルな美しい灯台が見えました。それまでの苦労(?)が一挙に報われた瞬間です。海から強い風が吹いてくるのがなんとも心地良い。歩いている途中では、正直「まだ続くのか?!」と思いましたが、頂上にたどりついてみれば、実際に歩いたのは1時間足らず。こんな短時間で、これほど深い達成感を感じられるハイキングルートはあまりないのではないかと思いました。

 残念なのは、頂上付近にはそれほど広いスペースがないので、のんびりと座って休憩する場所がないことです。私たちも、山の中腹まで降りてからお待ちかねの『スパムおにぎり』を味わうことにしました。これは、日系人の人が発明した(?!)といわれるハワイの名物。カナダのスーパーでもよく見かける、スパムという缶詰のハムを薄切りにして握り飯の上に乗せ、ノリでまいたもの。ご飯とスパムは一見ミスマッチですが、塩分の強い肉のうまみがごはんにピッタリ。少し疲れたときにはなおさらおいしいのです。


これがハワイ名物のスパムおにぎり



ハイキングの後はファーマーズ・マーケットへ


 ダイヤモンドヘッドの山裾に広がる、カピオラニ・コミュニティカレッジの駐車場では、毎週土曜日の朝7時半からファーマーズ・マーケットが催されます。オアフ島内の農家から運ばれてくる新鮮な野菜を中心に、蜂蜜やトロピカルフラワー、タロイモを使ったディップや手作りのジンジャーエールなど、おいしそうな品を並べたお店が50軒以上並んでいました。


のんびりした雰囲気のファーマーズ・マーケット

まだ青いトマトの薄切りに衣をつけて揚げた、フライド・グリーントマトの熱々や、焼きトウモロコシを食べながら、のんびりお店を見て回ります。お店の人もお客も、気軽に声をかけあって、いろいろな話をしているので、観光客の私たちもローカルの人に自然に溶け込める雰囲気なのが嬉しい。蜂蜜や手作りクッキーなど、おみやげ向きのものもあるので、ローカルらしい品を探してみるのもおすすめです。ハワイらしく、色とりどりの蘭の花を売っているお店もありました。これは持って帰るわけにもいかないので眺めるだけでしたが、ちょっと残念な気がしました。



ワイキキ海岸から見たダイヤモンドヘッド

 

 

(取材 宮田麻未 写真 神尾明朗)