SPECIAL 2007

2007年12月13日 第50号 掲載


 日系漁師たちの伝記と写真を集大成
『潮流』Nikkei Fishermen on the BC Coast
5年の歳月をかけて遂に完成


『潮流』ブックコミッティーメンバー

さっそく『潮流』を広げて、家族や親類の名前を探す人たち

漁業に携わった子孫の名前が連なり、出生・没年 や移住の経緯なども知ることが出来る

スピーチの後に行われた即売会では『潮流』が特別価格で販売された

大塚聖一総領事とはるひ夫人も大雪の中をお祝いにかけつけた

 このほどBC州沿岸で漁業に携わった日系漁師たちの、伝記と写真で構成された本『潮流』が完成した。日系漁師リユニオン・プロジェクトの最後を飾る本書は、ブックコミッティーのメンバーが、5年の歳月をかけて調査した集大成だ。その出版記念即売会が12月2日、リッチモンドのスティーブストン仏教会で開かれた。当日は、大塚聖一在バンクーバー日本国総領事夫妻、マルカム・ブローディー・リッチモンド市長、中江新領事、クレイグ・ナツハラ日系博物館副館長らがお祝いにかけつけた。

日系漁師リユニオン・プロジェクト

 今から130余年前、新天地で苦労しながら漁業に従事し、日系社会を築いていった一世の人たち。先駆者への感謝と、その功績を残すことを目的に、2001年より委員会が設置され、日系漁師リユニオン・プロジェクトが始まった。

 第一プロジェクトのリユニオン・ディナーは2001年に行われ、約350人の漁師と家族が集まり、事業計画が説明された。第二プロジェクトは日系漁師記念像建設。日系人である岩瀬殉一朗さんが制作を担当し、旧缶詰工場跡のフレーザー河口を一望する一等地に建てられ、2002年に除幕式が行われた。
 伝記、写真集の出版は、同プロジェクトの三番目、最後にあたる。編纂にあたっては、前プロジェクトからの13人に、府川マス・スタン夫妻が加わり、15人でブックコミッティーと改名し、作業にあたった。

消えゆく日系漁師たち
 1877年以来、日本から移住した人の多くは、漁師として生計を立てた。戦争により、家も船も取り上げられ、内陸部に強制移動させられたが、戦後再びコーストに戻り、漁業に携わった。妻たちは缶詰工場で働き、子供たちも夏休みには刺し網の修理を手伝った。かつては4000人もいた日系漁師だが、現在は40人と減り、将来漁業に就く日系人もいないと予測される。そこで、過去の歴史を本として残すことが重要視された。

 ブックコミッティーは5年の歳月をかけて、漁師の子孫や現役の漁師に調査表を送ったり、プリンスルパートなどへも出向き、シニアから話を聞いて、情報や写真を集めた。BC州沿岸で漁業を営んだ日系家族から3680の氏名、769の伝記、2000枚に及ぶ写真を収集し、この膨大な資料を元に編集を始めた。本書は多くの人の協力と寄付により完成し、出版に至った。

 表題の『潮流』はジム田中さんの発案で、コミッティーが検討。日系漁師のたどって来た戦前、戦後の130余年にわたる長い歴史を表すのに最適、と決定した。

昔話に花が咲いた即売会 
 即売会当日は前日から降り続く大雪で、バンクーバー周辺はあたり一面、真っ白な銀世界を作り出した。悪天候にもかかわらず、リッチモンドのスティーブストン仏教会体育館には『潮流』を求める元漁師の家族や親類など、約120人が集まった。

 司会のダン野村さんの紹介により、日系漁師を代表してトシ村尾さんがプロジェクトの経緯と、協力者への感謝の言葉を述べた。来賓として、大塚聖一総領事、クレイグ・ナツハラ日系博物館副館長、マルコム・ブローティー・リッチモンド市長が祝辞を述べた。

 大塚総領事はスピーチの中で、膨大な資料と時間をかけて、本書を完成させたコミッティーへのねぎらいの言葉と、先駆者への感謝と尊敬の気持ちを述べた。

 続いてマス府川さんが、編集にあたっての構成などについて、パワーポイントで説明した。 

 出版記念即売会では『潮流』が特別価格で販売され、当日来られなかった知人のために、数冊購入している人もいた。手作りの饅頭やお茶が振る舞われる中、ページをめくりながら、家族や知り合いの名前を見つけては、昔話に花を咲かせる人たちの姿が多く見られた。

日系漁師の家系図
 『潮流』を開き、アルファベット順に並んだ氏名欄を見ると、漁業に携わった子孫の名前が連なり、中には5世代に渡る名前が記された家系もある。知り合いの日系人の苗字を捜し、先祖がカナダに渡ったいきさつ、どの地に移っていったかなどを読むのは、とても興味深い。写真からは戦前、戦後を通した漁業の様子や、当時の生活ぶりなどが窺える。自前の船の前で撮られた写真が多いことからも、船が漁師たちの誇りであり、生活の一部だったことがわかる。

 漁業区域を示す地図、刺し網、流し釣りの説明図、魚の種類なども描かれている。

 どっしりとしたハードカバーの表紙には、ダン野村さんの撮影による日系漁師記念像の写真が用いられた。題字の『潮流』はジム田中さんの知人で、日本に住む書道家、栄仙(岡野比奈子)さんに書いてもらったという。

 日系漁師たちの記録が集大成されたこの『潮流』は、カナダの日系史、漁業史を知る上での貴重な一冊といえる。

 

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

『潮流』ブックコミッティー
シェーグ蒲地、フランク菅野、ポール狩谷、テリー酒井、ケン高橋、ジム田中、ヘンリー田中、ダン野村、リチャード野村、林幸太郎、マス府川、スタン府川、タック宮崎、ジョージ村上、トシ村尾 (敬称略)

『潮流』 Nikkei Fishermen on the BC Coast

39.95ドル、ハーバー出版 www.harbourpublishing.com
なお、コミッティーを通すと特別価格30ドル(税込み)で入手出来る。問い合わせは菅野さんまで (604) 432-6131

『潮流』 Nikkei Fishermen on the BC Coast