SPECIAL 2007

2007年12月6日 第49号 掲載


“出会い!感謝!友情!”
愛媛県の先生方がバンクーバーで研修
日加の教育関係者の温かい交流の輪が広がる


日加の教育関係者の温かい交流の輪が広がったこの研修を振り返り、「まさに“出会い・感謝・友情だった」と語る参加者のみなさん


あでやかな着物姿で「はい、どうぞ」。
茶道の紹介コーナーも人気

左から、アドバイザーの筑波教育大学の長田友紀氏、団長の文部科学省の白石良夫氏、副団長の愛媛県教育委員会の城戸茂氏

答礼レセプションでは、書道(上)、茶道、地酒(下)の体験コーナーもあり、日本のカルチャーの紹介が活発に行われた

 11月14日〜25日までの12日間、平成19年度教育課題研修指導者海外派遣プログラムにより、愛媛県の先生方がバンクーバーにおいて研修視察を行った。今回訪れたのは、文部科学省の白石良夫氏を団長に、アドバイザーの筑波教育大学の長田友紀氏、そして愛媛県の小中高校の先生方17名。一行は、BC州教育省、教育委員会、学校、SFU、図書館などを視察し、バンクーバーの教育関係者の人々との交流を図った。
 

 この海外派遣プログラムは、教育現場が抱える重要な教育課題に対応する研修指導者を養成するために設けられたもの。派遣テーマに関し先進的に取り組んでいる派遣先国において、調査や情報収集を行い、学校を訪れ授業や子供たちの日常活動を視察するとともに、現地の教職員などとの意見交換、情報収集を行う。

 今回の愛媛県のチームはリーディング、すなわち読解力の向上について、カナダではどのように指導、実践がなされているのかを研究するテーマを携え、この研修に臨んだ。その研修も終盤を迎えた11月23日、ランドマークホテルにおいて、カナダでお世話になった教育関係者を招いての答礼レセプションが行われている中、参加者のみなさんにこの研修の感想を聞いた。

■外から見た日本の教育のすばらしさ
 まずは愛媛県の小学校で教鞭をとっている現場の先生方に話を聞いてみた。

 「本当にいいチャンスを与えられ、これからの教師生活で生かしていきたいことがたくさんあります。カナダはさまざまな人が集まって互いを尊重し合っているマルチカルチャーな国。バンクーバーの街に着いたとき、そして学校を訪問したときも心からそう感じました。

 国際的な学力調査(PISA2003)で、読解力において日本14位に対し、カナダは3位。こちらでいくつか授業参観をさせてもらいましたが、子供たちに十分な時間を与え、何度も繰り返し考えさせる指導方針がすばらしいと思いました。日本では現場はとにかく忙しく、学力やモラルなど、たくさんのものが学校に求められている。そういう意味での葛藤はありますが、こちらの学校に通わせる保護者から、『参観日がない。カリキュラムが明確ではない。そういう意味では日本の教育が安心だ』という声も聞き、日本の教育の良さを外から見ることができたのも大きな収穫でした」

■国の違いを超え、それぞれの良さを見習っていきたい
 また、今回の訪問先のひとつであるブレントウッドパーク小学校の日本人の保護者にも話を聞いた。

 「初めてこのように日本からの先生方を招いて、見学をしていただいた。少しでも日本から来られた先生方に伝えたいとお手伝いさせていただきました。先生方みなさんとても熱心で、意見交換もお互い活発でした。校長も大変好意的に受け入れ、こちらの小学校がどういうふうに教育しているか、十分に伝わったのではないかと思います。スポーツの国際交流などは結構盛んですが、こういう教育の場の交流というのはそうたびたびあることでもないので、日本人の保護者としても大変いい経験になりました。これからもこのような場が少しずつでも増えていくことを望みます。国ごとにさまざまな問題を抱えていますが、それぞれにいいところをお互いに見習っていけばいいなと思います」

■日本再発見
 今回の研修はこれまでの個人研修と違い、グループとしてディスカッションを行っていく形態をとっている。現場の先生方に加え、文科省や大学からアドバイザーを迎え、一団となって幅広い視野で深めていこうというところにその大きな特徴が見られる。団長を務める文部科学省の白石良夫氏、アドバイザーの筑波教育大学の長田友紀氏に話をうかがった。

 白石氏「研修前、『カナダに行って、日本文化を見て来てください。外国を知る前に、そこにある日本文化を体験して来てください』と先生方に言いました。日本の漫画や映画などがいかに世界に浸透しているか、日本の文化ソースが世界に発信しているその様子を肌で感じてもらいたいと思いました。『なんだ、日本も捨てたもんじゃない』と日本再発見につながるのではないかと」

 長田氏「読解力の指導において、カナダと日本はそれぞれ、逆の方向からのアプローチで近づきつつあるのではないかと思います。カナダの学校には日本のような入学式もないし、掃除の時間もありません。当たりまえだと思っていた年度初めのセレモニーや、先生と生徒が一緒になって行う清掃活動から、子供たちが学ぶことはたくさんあると思います。あらためて日本の教育の良さを再発見することができたのではないでしょうか」

■いい授業をすること。それが子供たちの笑顔につながる
 さらに副団長の愛媛県教育委員会の城戸茂氏は最後にこう語った。

 「先日、午前中はサイモンフレーザー大学でレクチャーを受け、リーディングの指導法の理論を学び、午後はブレントウッド・パーク小学校で6、7年生の授業を参観し、読解力を中心に見てきました。まずは内容があってという日本の指導と違って、カナダでは内容よりもどんな能力を身に付けさせるかというところに重点を置いているなど、授業のスタイルは違いますが、子供たち誰もがのびのびと自分の意見を述べ、書いている姿にたいへん感銘を受けました。『いい授業をすること。それが、子供たちの笑顔につながるんだ』とあらためて確信しました」

 2003年の国際学力の比較において、日本が全体的にレベルダウンしたことで、文科省や教育関係者はかなりのショックを受けた。受験戦争に対するアンティテーゼとして始まったゆとり教育にその原因があるのではないかという考察もあり、揺り戻して以前の詰め込み教育に戻っていく流れも現れ始め、さまざまな議論を呼んでいる。そのような模索が行われている中、このような先生方の研修が、今後の日本の教育に明るい一筋の光を投げかけてくれるのではないかと大いに期待したい。



(取材 西澤律子)