SPECIAL 2007

2007年11月15日 第46号 掲載


大槻教授×矢野先生 面白真剣言いたい放談
後編 《ニッポンの教育を語ろう!》


矢野先生(上)と大槻教授(下)。
今年で知り合って7年目になるおふたり

 毎年、バンクーバーで夏を過ごす大槻義彦教授。そして本紙でもお馴染み、矢野アカデミーの矢野修三校長。知り合って7年目になるおふたりは、良きゴルフ仲間であり、バンクーバーの親戚同士と言い合う仲。そんなおふたりに、日本の教育について、これまた思う存分語っていただいた。

おふたりとも教育者として、ここ最近の日本の教育をどう思われますか?
大槻 学生も教育制度も何も変わらないですね、「教育改革、教育改革」と歴代内閣はそれを旗印にしてきましたが。なぜかと言いますと、票を取るのは、地元にどれだけの経済的な潤いを与えるかということと教育改革なんです。親というのはいつも教育のことが頭にあるんです、特に日本では。だから政治家は、必ず教育改革を政策の柱にする。そうすると「何かやってくれるだろう」と人々も思う。それで実際「何か」やるんですよ。やるんですが、それがいつも裏目に出てる。だけどもやっていると、一生懸命教育改革に取り組んでいるようにみえる。たとえば、安倍内閣は「愛国心」を植え付けようとした。その前の内閣では「ゆとりある教育」をといったようにね。「ゆとりある教育」なんて結局、土曜日を休みにして、教科書のページ数を減らしただけの話ですよ。

矢野 πを3にしちゃったりね。

大槻
 そう、ただそれだけ。「教育改革」なんて声高に言ってるだけで、一度だって本当に改革がなされたことはない。じゃあ、本当に改革すべきことは日本の教育ではないのかと言えば、とんでもない!日本の教育制度は、先進国の教育制度の中でも最悪なんですよ。
 
どんなふうに最悪なんですか?
大槻 ずばり受験戦争ですよ。あらゆる先進国で日本だけが、唯一教育制度が違うんです。カナダやアメリカ、フランス、イギリスも受験地獄ってのはないですよ。中学お受験や、金やコネを使っての入学とかもね。

矢野 塾や予備校もヒートアップしてきてますよね。

大槻 ええ、こんな度を超したものはないですね。それはどういうことかというと、大学受験がすべてだからなんです。そこに諸悪の根源があるんです。先進国では大学に入ってから、理学系や医学系などは1年から2年に進むときに半分に減らされる。そして2年から3年になるときもまたその半分になる。ただし、入学の時の最初の門は大きく開いておく。

矢野 それが一番いいですよ。日本の大学生なんて入ったらほとんど勉強しないし。

大槻 大学に入ったら勉強しないってのは逆なんです。日本では単位取れなくても、8年間大学にいられる。他の国だと除籍になるんですから。

矢野 だからこっちはほんとに大学生が勉強する。

大槻 イギリスなんて日本の大学の単位数の3倍だからね。

矢野 カナダの高校生ってお化粧する子もいるけど、逆に大学に入ったらぴたっとしなくなる。化粧なんかする時間もないくらいになる。そうじゃなきゃやっていけないんだろうね。

矢野先生がバンクーバーで会う若者たちはどうですか? 
矢野 変わってきましたね。稲門会という早稲田のOB会がバンクーバーにあって、私もこっちに移住してきたとき、先輩達が世話をしてくれたり、楽しかったので、今でも続けているんです。でもね、最近会長をしていて、新しい若い子が稲門会に来る。そうするとまず私に訊くのが、「どんなメリットがあるんですか?」っていう質問なんですよ。で、「ちょっと待てよ、大学のOB会にどんなメリットがあるのかって?」。そういう発想が湧くこと自体に疑問を感じます。もちろん昔と変わらず、「先輩と一杯飲みたい」ということで来る子ももちろんいる。だから、両極端なんですね。変わってきたというより、二極化しているような気がしてしょうがない。

矢野アカデミーに来る学生さんたちはどうですか?
矢野 うちに来る生徒さんたちは、カナダに来て英語を勉強しようって人ばかりの中、日本語の教え方を勉強しようっていうんだから、これはもう変わった人間ですよ、間違いなく。でもこの「変わった」というのはポジティブな意味でね。いい方に変わってる。13年やってますが、しっかりした考えを持った人がずっと来てます。大槻先生が会う学生さんたちはどうですか?

大槻 4、5年前、ある東京の女子高に講演で呼ばれて、早めに行ったんで、ちょっと授業参観させてもらったんです。それでびっくり!世界史の時間で、まだ若い30代くらいの先生だったんだけど、「今日はロシアのとこだけど、何ページ開いて、おまえたち読んでみろ。どうせおまえたち読んだってわかんねえだろ。ロシアっていう国は昔ソ連っていったんだよな。まあ適当にそこ読んどけ」。でその後、がやがやと携帯電話は鳴るし、コーヒー飲んだり、何か食べ始める生徒もいるわで。

大槻先生がうしろにいるのにですか?
大槻 ええ、いたって平気ですよ。それで俺は二度びっくりしたのは「こういち、こういち、飲み物、買って来てよ」ってうしろの方から生徒が叫ぶんですよ。女子高なのに、なんで「こういち」なんだ?男子高校生かなんか入って来たと思うじゃないですか。そしたらその先生の名前が「こういち」だった。

 つまり、「そうか、これが実態だな」と。「この子たちはもう受験戦争の中で、落ちこぼされて無視されてる。先生が無視し、生徒たちも無視する、それでこの高校、そして世の中も滞りなくもっているんだな」と。進学しない生徒たちはじっと耐えるか、反抗するか。逆に反抗する方がまともだって思います。だってそれは拷問でしょう?世界史なんて見てくださいよ、どんなにむずかしいか。物理の教科書見てくださいよ。とにかくそういうレベルのものをやらなければ、受験戦争はやっていけないんですよ。その犠牲になるわけですから、大多数が。反抗するの、当たり前でしょう。毎日、毎日、わからない教科書で、わからない講義を聴いて、これ拷問でしょ?普通のスパイの拷問なんて3日間だけど、生徒はこれを何年やりますか?俺だってその立場だったら自己主張するために何かやらざるを得ないと思いますね。あるいはふぬけのようになって、「おい、こういち、遊ぼうよ」とそうなるかもしれない。

どこをどう変えていったらいいんでしょう?
大槻 全員入学です。受験戦争も予備校も塾もない。私は難しいことを言ってるんじゃない。先進国に学べってことですよ。他のことじゃ、学んでるじゃないですか、環境汚染のことだって、医療のことだって。学んでいないのは教育だけなんです。

矢野 たとえば日本の教育は、「いい国作ろう、鎌倉幕府」と1192年を暗記することが重要。でもこっちの人に訊くと、「鎌倉幕府はどうしてできたと思いますか?あなたの意見を述べなさい」という教育なんですよね。私は今でも1192年とおぼえてますが、それが何だったのか。

大槻 ええ、それが日本の教育なんです。哲学不在なんですよ、つまり解き方だけ。

矢野 だから知識を何に生かしたいというより、ただの知識だけで終わってしまうんですよね。

大槻 その通りです。また、それ以上必要ないんだろうと教わった方も思うんです。

今日は予想以上に真剣な話になりましたね。最後に、スポーツ嫌いの大槻先生がなぜゴルフにはまったかという話をお聞きしたいのですが。
大槻 61歳で始めて、今年で9年。それまでいっさいのスポーツはやりませんでした。特にゴルフはバカにしてました。社用族の接待ゴルフなんてこと自体、反感持ってました。あれがなんのスポーツか、パチンコと同じじゃないかと。偶然どこに玉が転がるかによって勝負が決まるなんて、ギャンブルだろうと。ところが嫌々ながらやってるうちに、人間ドックの数値がどんどんよくなったんです。尿酸値や血糖値が高いのも、全部改善するんだもの。

矢野 普段運動してない分、わかりやすいんですよね。

大槻 そう、それでこれはいいと!医者も驚いて、「あれ?数値がどんどんよくなってる。今までの血圧の薬も止めちゃうから」と。71歳の今でも血圧は75〜120。ゴルフ始める前は、下が95〜100、上が150。薬を飲まなければならない状況だったんです。肝機能もよくなったし、もうゴルフさまさまですよ。そしたら何とその医者もその1年後にゴルフ始めたんです。

 ゴルフはスポーツであってスポーツじゃない、パチンコだと今でも思ってます。だけどパチンコは指だけ動かすからスポーツじゃない。ゴルフは全身動かすからスポーツなんだと。ゴルフはギャンブルであって、ギャンブルではない。

矢野 だからおもしろいんですね!それで健康になれば言うことなしですよね。


(取材 西澤律子)

 

矢野修三氏プロフィール
1944年愛媛県生まれ。20年間のサラリーマン生活を経て、日本語教師に転職。94年から家族でバンクーバー移住し、矢野アカデミーを設立。現在当校で「日本語教師養成講座」や「ビジネス敬語」などの教鞭をとっている。

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大槻義彦氏プロフィール
1936年宮城県生まれ。早稲田大学名誉教授。日本物理学会理事。『TVタックル』など多数のテレビ番組に出演。連載執筆『だから私は上手いのだ!』(週刊ゴルフダイジェスト)。最近は中古車買取りの『ガリバー』のCMにも出演