SPECIAL 2007

2007年11月8日 第45号 掲載


大槻教授×矢野先生 面白真剣言いたい放談
前編 《ニッポンの政治を語ろう!》


名(迷?)コンビのおふたり。
大槻教授(左)と矢野先生(右)

 毎年夏になると、バンクーバーで3カ月を過ごす大槻義彦教授。そして本紙でもお馴染み、矢野アカデミーの矢野修三校長。知り合って7年目になるおふたりは、良きゴルフ仲間であり、バンクーバーの親戚同士と言い合う仲でもある。

 そんなふたりの対談が行われたのは、去る9月13日。折りしもその2日前、日本では安倍総理が退陣表明をし、話題の流れは自ずと日本の政治となった。前編では日本の政治、後編では日本の教育とゴルフについて、歯に衣着せず思う存分に語ってもらった。さて、どんなホンネが飛び出すやら、乞うご期待!

ここ最近の日本の流れは先生方から見てどうですか?どんなことに特に興味を持たれていますか?
大槻 日本にいる日本人も、外国にいる日本人もそうだと思うのですが、やっぱり興味があるのは、自民党がどうなっていくだろうかということだと思います。こっちのCTVニュースでたった12秒しか放送しなくたって、やっぱり自民党と公明党が大敗したということは、心ある人達は非常に注目していると思いますね。

矢野
 ええ、こちらにいる日本人の人達も、もちろん注目していると思いますよ。

大槻
 そうですね。というのも、バブル崩壊までは日本の経済が非常によかったですからね。だから、政治なんてどうでもよかったんですよ。

矢野
 経済の方が気になっていたわけですね。

大槻
 というより、経済の方が発展していたから、政治的なコントロールが必要ないほど日本の経済がしっかりしていたんですね。だから政治が非常にろくでもないことになっていったわけで。ただ戦後、日本という国を建て直していくためには、非常に政治が重要だったんです。その頃政府はしっかりしてたんですよ。たとえば、私は好きではないのですが、吉田茂とか、岸信介とか、安保条約に持ち込んだあの辺りは、日本有数の政治家がちゃんとした哲学を持って政治をやってたんですね。あの頃、歴代東大総長ってのは左翼なんですよ。だから政府批判するわけですね。普通の政治家は東大総長に対して真っ向から罵倒するなんてことはしませんよ。自信がないから聞こえぬふりをすると。ところが当時の連中は違った。吉田茂は、当時の東大総長に対して『曲学阿世』って言ったんですね。
 
キョクガクアセイとは?
矢野 ああ、学問を曲げて世を欺くってことですね。

大槻
 そうです。つまり、一部の東大の教授たちは、偉そうに学者面して真の学問を曲げて教えて、この日本を間違った方向に導く輩であると。それを国会で言ったんです。東大総長を名指しで批判して。私は学者として吉田茂は大嫌いですけど、それにしても東大総長をつかまえて、国会で名指しで罵倒するなんて、それだけの自信をもって当時の国作りをやっていたんですね。
一方、経済の方はどうかと言いますと、東京オリンピックの後あたりからどんどん成長していくんですね。高度経済成長で万々歳。その頃になると、もう政治、要らないんですね。

矢野
 そうそう、経済界がしっかりリードしていってましたからね。

大槻
 そこで登場するのが田中角栄なんですね。吉田茂なんかと比べるとレベルが2つも3つも下の連中が、総理大臣になってもやっていけるということで、そのままいろんな連中がそれに続いた。中にはみなさんがあっと驚くような「あれが総理大臣かよ」というような人物まで出てきた。バンクーバーの日本人が「日本はどうなってるんだ」って心配になるような連中まで。私はね、『文化系が国を滅ぼす』っていう本に、歴代総理大臣の偏差値まで推定して、それと経済成長、一人当たりのGDPの変化をグラフにして書いてるんです。一人当たりのGDPがヨーロッパ並みになってくる時代から、総理大臣の偏差値ががくんと下がってくるんです。

ちなみに田中角栄の偏差値はどれくらいですか? 
大槻 今、本がないので確かなことは言えないけど、確か60〜70を査定しました。

矢野 頭はいいよな、彼は。

またまたちなみに一番低くつけたのは?
矢野 宇野さん!

大槻
 やっぱり、森さんだね。60点ぐらいだったかな。つまり私が何を言いたいのかというと、あのバブル崩壊をして大変な騒ぎをしたのにもかかわらず、この流れは政治を軽視するというか、政治的指導者を軽視するという風潮があるんですよ。残念ながら、日本の政治だけです。バブルが崩壊して大変な騒ぎをして、国がどうなっていくかということを騒いだその時ですら、そのような政治機構なんですよ。これは即刻変えるべきだったのに、なかなかやっぱり変わらないですね。本気になって日本の政治をいいものにしようと思わなかった。これは先進国で非常に例を見ないことです。

 何を言いたいかというと、今の動きに話を戻せば、やはり自民党が大敗したということは結局、みなさんが考える以上に歴史に残る大敗だということなんです。考えることもできなかったほどの大敗だと。日本の指導層にとっては大変なショックですよ。だからこそ、今度選ばれる総理大臣ってのは相当な大物だと思います。そうでなければ、いよいよ自民党、日本の政治がもたなくなってきてる。私は今度出てくる総裁というのは、自民党有数の大物が出てくると思っています。

矢野 もうだいたい決まっているんでしょ。先生はだれがいいと思うんですか?

大槻 私は福田康夫がピカ1だと思います。

どんなふうに福田さんがいいんですか?
大槻 やっぱり、しっかりした自分の考え、つまり哲学を持ってる。先ほど言った日本のGDPがどんどんよくなっているのに政治は悪くなった、とここへ来て初めて、ごく優秀な自民党きっての逸材を出す。今まで冷遇されてた福田康夫を。

矢野 麻生さんなんてなったらたまったもんじゃないよなぁ。そうなったら、安倍さんの続きですよ。

大槻 安倍さんが参議院でも数年間滞りなく大敗しないで、なんとなく切り盛りしてれば、麻生さんにいきますよ。でもそういう時代じゃないんですね。それほどショックなんですよ。だから自民党として体制を建て直していくためには最後の切り札を出す以外にはないと。そういう点では今候補に挙がっている中で、やっぱり福田康夫がピカ1ですね。それともうひとり私が注目しているのは、今(取材時)官房長官やってる・・・

矢野 ああ、与謝野さん。東京一区ね。

大槻 そう、与謝野鉄幹の孫の与謝野馨。彼はほとんど目立たないし、あまり有名じゃないけれども、東京一区ってめちゃめちゃうるさいところで連続トップ当選するというのは、なんか理由があるんですよ。あの人は官房長官になってもほとんど何も喋らない。地味なんだけど、話を聞けば、もうなんでも知ってる。びっくりするほど、とにかく日本の経済指数から歴代内閣の大臣のポストから、その場で何も見ないで喋りますよ。だから私は与謝野さんでもいいじゃないかと。ただ、彼はまだちょっと若いしね。たぶん、私は福田さんが総理になると思います。もしそうでなければ、もう自民党は本当につぶれる、どうしようもないでしょうね。(後編に続く)

  *   *   *

 この対談の13日後、福田内閣が発足した。果たして大槻教授の名言通り、この新総理が今後、自民党をそして日本を建て直す求心力となっていくのだろうか、大いに注目したいところです。  


(取材 西澤律子)

 

矢野修三氏プロフィール
1944年愛媛県生まれ。早稲田大学法学部卒。20年間のサラリーマン生活を経て、日本語教師に転職。94年から家族でバンクーバー移住し、矢野アカデミーを設立。現在当校で「日本語教師養成講座」や「ビジネス敬語」などの教鞭をとっている。また、日系コミュニティーの公共活動も幅広く行っており、アイカス・日本語放送の理事を長年務めた。

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大槻義彦氏プロフィール
1936年宮城県生まれ。早稲田大学名誉教授。理学博士(東京大学)。放射線の「水切り運動」を発見。火の玉のメカニズムを世界に先駆けて究明。物理学雑誌『バリティ』編集長。日本物理学会理事。名古屋大学客員教授、ミュンヘン大学客員教授などを歴任。『TVタックル』など多数のテレビ番組に出演。連載執筆『だから私は上手いのだ!』(週刊ゴルフダイジェスト)