SPECIAL 2007
2007年7月26日 第30号 掲載
![]() 講演会が無事終了し、贈呈された花束を手に (左から)井上正康教授、桐島洋子氏、井上啓子氏 |
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![]() サミエル・ウルマンの詩を朗読する井上啓子氏 |
前編では活性酸素の働きについての多角的な検証を中心に、世間でよく言われる悪玉・善玉説の持つ一方的なものの見方の危険性に話が展開していった。後編では健康維持についての具体的な話に踏み込んでいく。
今回の企画が実現するきっかけとなった桐島洋子氏が司会を担当。
元気で天寿をまっとうするには何をしたらいいか
進化の過程で直面した4つの試練(飢餓、怪我、免疫、乏塩)を遺伝子レベルで克服して生き延びてきた人類だが、現代になってからは生活習慣病など引き起こし、不健康な状態で一生を終えるケースが多くなってきた。
自分のこれまでの研究成果を今度は社会に還元する意味も込めて、教授はなんとかこの状況を改善する方法はないものかと考えるようになった。その方法が運動と食事予防、それに伴う免疫予防だ。
ところで世間ではさまざまな病気に効くとうたわれている健康食品が花盛りだが、この状況について教授が一言コメントする。
健康食品で健康は買えない
これらの中には健康効果をあおるもの、食品成分の「薬効」を強調するもの、また健康食品ではないが「これは体にいい、これはよくない」と食品に対する不安を煽動するメディアなどがある。
しかし抗がん効果ありとされたベータカロテンの大量摂取で、喫煙者の肺がん発生率が増加した臨床実験の例などを紹介し、特定成分の濃縮大量摂取の効果は疑わしいと教授は指摘する。
そのような偏った食事のとりかたではなく、多様性のある食品摂取のほうが病気予防の効果があることを、調査結果を示しながら教授は語った。「つまり健康食品では健康は買えないということです」
流行に流されず、古くから伝わる温故知新の食生活に従う。完璧は求めず、そこそこの健康を目指す。そしてほどほどの食生活を楽しむことが、進化の延長線上にある人間の体がうまく機能して健康を維持できる秘訣なのだと教授は語る。
また太るから糖分はダメという考え方も良くないと教授は指摘する。脳をはじめ体が仕事をするためには糖分が不可欠だ。しかし、白米のように急速に分解されて糖(グルコース)になるものよりは、玄米のようにゆっくり分解される(グリセミックス・インデックスが小さい)もののほうが無理なく血液中に流れ込み、体全体にエネルギーが行き渡る。
また赤身の肉から摂取されるカルニチンは激症肝炎や肝がんの発症を抑える効果があることが実験からわかっているが、大量に肉を食べると今度は大腸がんを引き起こす可能性があるのと、コレステロールが気になってくる。
コレステロール悪玉説を検証
コレステロールも健康問題では必ず耳にする言葉で、多くの人はすでに「コレステロール恐怖症」となっている。
ところがコレステロール血中濃度と寿命の関係を調べてみると、実は血中濃度が220〜260の人が最も長寿だということがわかってきた。この値は高コレステロールということで、医師からコレステロール合成阻害剤を処方される範囲だ。コレステロール悪玉説も見直しの時期だと教授は指摘する。
「あとは動物である以上運動が必要。動かないと血管や脂肪にたまってしまいます」と教授は一日8000歩(一生懸命歩いて約20分)が目安だと説明した。「できれば上下運動のあるほうがいいです。血管は筋肉と筋肉の間、または筋肉と骨の間を走っているので、筋肉が一回収縮弛緩すると、その部分の血管をマッサージしたことになります」
活性酸素流・血管マッサージで老化予防
では寝たきりなど、この運動が出来ない人はどうすればよいのだろうか。井上教授は自分の手を使って血管、特に動脈ーわきの下、腕の内側、手先(指の両サイド)、鎖骨、足のつけ根の部分のマッサージを行えば、全身の筋肉を動かして中を走る血管をマッサージすることになると話す。
また腸の周りには血管と神経が多数走っているので、この部分をマッサージすれば両方のマッサージができ、かつ便通も良くなる。
また手を使っている時には脳神経の三分の一が働いているという。またもう三分の一は口を使うときに働くとのこと。教授はピアニストや歌手の平均寿命が長い理由のひとつはこれだと指摘する。
「神経が仕事をすると、脳に行く血管が開き、酸素とエネルギーが行く。その一部が活性酸素になり血管の収縮弛緩を行い、脳内血管のマッサージを行う。良く働きよく考えて血管を鍛える。これが運動の最も大切な理由です」
血管マッサージ実演
《首から上のマッサージ》
血管は筋肉と筋肉の間や筋肉と骨の間を走っているので、筋肉や皮膚を骨に押さえつけるようにしごけば、具体的な血管の位置を知らなくても自動的に血管がマッサージされることになる。
こめかみに手のひらを押しつけ、上下左右にゆする。肌をさするような軽さではなく、ぐいぐいと骨に押しつけるようにするのがコツ。
咀しゃく筋のあたりや目の上のでっぱり、鼻の周辺、口のまわりをマッサージすると、脳の中の三分の一の血管をマッサージするのと同時に、表情筋とそれに付随する血管もマッサージしたことになる。
《手、腕の血管マッサージ》
指の両脇に血管が走っているので、一本一本の指をもう一方の手で握り、回すようにしごきながら引っ張る。または両手を組み合わせて、その組み合わせ位置を指の根元からだんだん指先にずらしていけば両の指10本が同時にマッサージできる。
手首も、もう一方の手で握って回しながらしごくようにもんでいく。首から上、腕から先を中心に7〜8分、肋骨、わきの下も骨に向かって押さえつけるようにもむ。おなかは一方の手を立てて、もうひとつの手で押さえるようにすると腸のマッサージになりお通じもよくなる。
《朝のマッサージが効果的》
血管マッサージを行うのは朝が効率的と教授は話す。朝はまだ自律神経が戦闘モードになっていないので、このマッサージで神経を刺激すると体が温まってくるのが分かるそうだ。また寝たきりの人でも、まわりの人がこのマッサージをしてあげることで、筋肉に栄養が行きわたり筋肉が衰えにくくなる。
なお詳しいマッサージ方法は教授のホームページに紹介されている。
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/biochem1/index.html
詩朗読 サミエル・ウルマン「青春の詩」
講演会最後に、精神科医として活躍するかたわら、朗読のボランティア活動にも力を注いでいる井上啓子氏が有名なサミエル・ウルマンの詩を朗読した。
この詩はGHQのマッカーサー元帥が座右の銘としていたことや、松下幸之助氏の目に留まって紹介されたことなどで有名になった詩だ。
(取材 平野直樹、写真提供 ケイコ・アイ)
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「青春の詩」 作 サミエル・ウルマン 訳 井上正康・啓子 若さとは人生のひとこまを指すのではなく あやなす心の有様を言うのである 強い意志、溢れる想像力、 燃える情熱、 恐れることのない冒険心 これこそが若さの証である 歳月は深いしわを刻むが、 それだけで老いることはない 理想と情熱を失う時、初めて人は老いる 自信喪失、不安と猜疑心、怖れと失望 それが心をしぼませ、魂をむしばむ たとえ何歳であろうとも、 満天の星の輝きにも似た 驚きと感動、 好奇心とあくなき挑戦、喜びと勇猛心、 そこに若さがある 人は信念とともに若く、疑念と共に老いる 自信と共に若く、恐れと共に老いる 希望と共に若く、失望と共に老いる 心ふさぎ魂が凍てつくとき、人は若くして朽ちる 夢と希望と喝采が魂の琴線をふるわせる限り 人は永遠の青春を生きる |
| ー 井上正康(いのうえまさやす)教授プロフィール ー |
岡山大学医学部医学科卒業。同大学院医学研究科(病理学専攻)修了。 |