SPECIAL 2007

2007年7月26日 第30号 掲載


西田恒夫在カナダ日本国全権特命大使インタビュー
『何をしたいんだということを伝えていける日本人に』


日系社会の人々が集ったレセプションで
「ここの日系社会は財産です」とあいさつ


レセプションにて歓談中の西田大使

 今年3月に着任して3カ月の西田恒夫全権特命大使。今回4日間の日程でバンクーバー・ビクトリアを訪問。多忙を極めるスケジュールの中、快くインタビューに応じてくれた。

カナダの印象は?
 まだ3カ月くらいなので、本当に第一印象ということですけど、基本的には非常に景気がいいと言うことでみんな明るい顔をしているし、勤務時間も長い方ではない。7月に入るとカナダデーが終わって、政治の季節も一段落、いわゆるバカンス気分ということだから、非常に恵まれている国だなという気がしますね。

 他方、社会全体として政治を含めて、何かしなくちゃと歯を食いしばって、という印象は受けないですね。だけど何もみんなが目くじらをたてて働くことがいいことじゃないでしょうから、良い悪いの話ではないですよね。そういうところが全体としての今のところの印象ですね。特にオタワは治安もいいし、きれいなところです。

 日本に対する気持ちは温かいという感じはします。貿易経済をはじめとして、文化、若い人の交流も含めて文句のつけようがない状況の日加関係ですから、このままの勢いで順調に進んでいくことが期待されますね。

BC州と日本の関係について

 今日キャンベルBC州首相にもお会いして話をしましたけれども、『アジアとの関係を重視したい、ポテンシャルがある』と非常に熱を込めて語っておられました。僭越ですけど、好印象を受けましたね。

 もともとBC州との関係というものは非常に近いものがあるわけで、脈々とした長い歴史とか礎がありますから、そこに彼のようなポリティカルリーダーが出てきているということが我々にとっては大変に良いことでありますし、いい関係でもって話を積み重ねて、実を結ぶように持っていければいいと思っています。総領事館側もやりがいがあっていいと思います。

大使館・総領事館とバンクーバー日系社会との関係について

 いろいろな歴史的なひだみたいなものがあって、日本の政府、その出先である大使館、総領事館と、それぞれのコミュニティの中で苦労してこられた日系社会というものが、今まできちっとした形で向かい合ってお互いを確認するということが必ずしも十分じゃなかったのかなという気が私はするんです。

 日加について語るだけの知識はまだありませんけれども、ワシントンに在勤以来、個人的にはこの日系社会との関係をきちっと、言葉は大げさだけど、再構築をしていくということが、外交がどうだっていう話の前に、やっぱり日本という国として必要だと、そこに個人的には確信があります。

 日系社会と仲のいい関係を作っていくということは、お互いにとって、単に経済的な面ということではなくて、大事なことだと思いますね。お互いその方がハッピーに違いないわけだから、そんな自然の気持ちというものが脈々と流れていく上で、それに乗った形で大使館も手をさしのべる、そして日系社会も手をさしのべて頂ければ非常にいい関係が出てくると思います。

地球温暖化について。バンクーバー商工会議所の講演でもお話ししておられましたが、カナダが京都議定書を断念したことについて、どう思われましたか。

 今回、カナダ政府としてかなりはっきりものを言った感じですね。ハーパー政権になってから「できないよ、できないよ」と言っていたわけですから、ノーサプライズですが。

 京都議定書というものが立ち上がって動いていく中で、メジャーな排出国が入っていないと限界というのは最初からある意味わかっていたことです。それにClimate Change(気候変動)というのは先の長い話ですから、その過程の中でより多くの参加者を募るということの持っている重要性が、以前に比べて増している。

 京都議定書を立ち上げるということを一生懸命やっていた時と、一応動き始めたけれど限界が明らかになってきて、ポスト京都の話をすることが喫緊の課題になってきている現段階では、(多くの国が参加する重要性は)正直言ってウエイトが違うという話です。京都議定書の長所と欠点をふまえて次のフレームワークをどうやって作るのかということです。

在外投票について。制度も変わり、比例代表だけでなく、選挙区も対象になり、短期滞在者でも投票ができるようになりました。しかし、あまり情報としてこちらの人々に伝わっていないような気がするのですが。海外でも投票するという重要性について聞かせてください。
 総領事館はきちんと広報をしていると思っています。だけど、政府の公報というのは発信する力に限界があります。我々の広報手段というのは限られているわけで、その範囲の中でホームページを使ったり、少なくともオタワではわかっている範囲で個別に電話をしたりして、こういうことがありますよと言う説明は差し上げるようにしています。

 国民は主権者ですから、何らかの形で選挙があることを知っていると思うんですよ。これだけいろいろな意味で大きな関心のある参議院選挙(7月に実施)に、在外投票があるということは正直言って周知の事実だと思います。

 具体的な手続きとかそういうことは、もちろんわからない方はお尋ね頂ければていねいにお伝えします。

 権利を行使するためには努力をしなければならないと思います。そういう積み重ねがない民主主義は民主主義ではないと思いますね。あくまでも国民が主権者ですから。

来年は日加修好80周年ですが、なにか特別なイベントをお考えですか?

 今は何をしたらいいか、それぞれの総領事たちと模索中です。せっかくの機会だし、(来年の)サミットともぶつかっていますしね。

 何周年というと、文化行事がみんなすぐ頭に浮かびます。文化行事はもちろん重要な柱ですが、それが全てではないと思います。

 いろいろな形で、例えばここで経済的な活動をされている方のなかでも、十分2008年のプログラムの中で参加して頂けるものがあるのではないかという問題意識が僕の中であります。環境問題を取り上げてもいい、太鼓があってもいい、貿易上の障壁について議論する場があってもいい、FTA(自由貿易協定)締結についてシンポジウムを開いてもいいと思います。

 みんな持ち寄りでパーティをやるのと同じように、自分なりの日加関係80年を祝う、80年を考えるということに対して、自分はこういうことができるよとか、こういうものを聞いてきたよとか、そういうものを丁寧にかき集めて、うまいロゴなどをくっつけて、アピールをしていければいいですね。今年が観光年、来年が80周年、09年は飛んで、10年(オリンピック)と続きます。キャンベル首相とも「それはいい。盛り上げよう」という話をしました。

 大使館がやる、総領事館がやる行事だと思ってほしくないですね。私たちは音頭を取る、幹事役はやらせて頂きますけれども、皆さんが主役という形にしたいと思っています。

カナダでの趣味、やってみたいことなどは?
 これだけ自然が豊かな国で、日本になくてカナダにあるのはスペースの大きさですよね。これはもういくら逆立ちをしてもかなわない。ある種異文化体験があるんじゃないかなと思います。そこをエンジョイできれば。スポーツをやるものにとっては、これだけの受け皿はありませんから、ちょっと落ち着いたら久しぶりに、スポーツ三昧な時間が過ごせればいいかなと思います。テニスとかスキーとか、ゴルフも下手だけどちょっとやります。

バンクーバー新報の読者にひとことお願いします。

 日本が国際的に何かものを発信することへの努力は官民あわせて不十分だと思います。
21 世紀はぜひアサーティブなジャパンでいってほしいと。国際社会の中では日本の国だけではなく、個々人のアピールが必要です。次の世代の人には、アピールする人であってほしいし、そういう日本を作ってほしいということと、日本がより広い国の人々から受け入れられて、One of Usになることを希望しています。日本式に意見がなくてOne of Usになるのではなく、マインドを切り替えて、自分の意見を言うことがOne of Usになるんだと意識してほしいと思います。当地のコミュニティからも発信して頂いて、それを通じて日系社会が存在感のあるコミュニティになっていって頂ければ真にうれしいです。


(取材 三島直美)

西田恒夫全権特命大使
1970年外務省入省
1999年在ロサンゼルス日本国総領事館総領事
2001年経済協力局長
2003年9月総合外交政策局長
2005年8月外務審議官(政治担当)
2007年3月現職に着任
59歳。東京大学卒。東京都出身