SPECIAL 2007

2007年6月28日 第26号 掲載


ご先祖様への感謝を込めて
−東漸寺永代施餓鬼大法要−
チベット仏教高僧・ザチョゼ・リンポチェさん/
癒し音楽演奏家・松尾泰伸さんインタビュー


法要の前に参加者と「南無阿弥陀仏の歌」を合唱する橋本随暢住職


日本からも総勢25人がこの日のために集まった

 バンクーバーで久しぶりに青空が顔を出した6月14日、コキットラムにある東漸寺で永代施餓鬼(せがき)大法要が行われた。毎年『東漸寺の日』に行われるこの行事に、今年はアリゾナ州フィニックスよりチベット仏教高僧のザチョゼ・リンポチェさんと和歌山県海南市の永楽寺住職京谷昌豊さん、和歌山を拠点に活動している癒し音楽演奏家の松尾泰伸さんが参加した。

 法要は午後7時から1時間ほど行われた。東漸寺願主第一世橋本随暢さん、主管キース随玄さん、ザチョゼ・リンポチェさん、京谷昌豊さん、4人の合唱でお経が読まれている間、参加した人々はそれぞれに自分たちの愛しい人や先祖への思いを込めて手を合わせていた。

 法要の後には、松尾泰伸さんによる癒し音楽の演奏会が行われた。心が洗われるような音色に、目を閉じて聞き入る人、体全身で音楽を体感する人、静かに演奏を見つめている人、参加した人々は自分なりに心を見つめる癒しの時間に浸っていた。

 演奏が終わった後、「すばらしい演奏をありがとうございます。こうしてみなさまにここでお会いできたのも、すばらしい演奏を聴かせて頂いたのも何かの縁でございます」と橋本住職。

 「私たち凡人には先のことはわからない。しかし、今この時に生きている喜びをかみしめ、私たちがさまざまなものに生かされていることに感謝をする。仏様のお導きによるご縁によってこうしてみなさまにお会いできたことに感謝をする。そして南無阿弥陀仏を唱え、明日の幸せを願うのです」。そうして私たちは日々与えられた命を大切に生きていかなければならないと説いた。

チベット仏教高僧・ ザチョゼ・リンポチェさん
プロフィール
 16歳の時ダライ・ラマ法王14世より東チベットにおいての最高僧として承認される。現在は、第一高弟として重要な役割を担いながら、アメリカ・アリゾナ州フェニックスとインドで、西洋とチベット文化の融合などの活動に尽力している。今年は著作 The Backdoor to Enlightenmentがアメリカで出版予定。
ウェブサイト: http://emahofoundation.org

「バンクーバーは美しい町ですね」と初めて来た印象を語ったザチョゼ・リンポチェさん










 




リンポチェとしての役割を教えてください
 私は高僧の生まれ変わりとしてダライ・ラマより認知され、その高僧が持っていた役目と同じ役目をこの世で果たしています。宗教的なスピチュアルリーダーという役目です。

そのことについてどう思いますか

 私は16歳の時にこの道に入ったのですが、その前は普通の男の子として生活していました。ですので、普通の学生生活も経験しています。リンポチェになる前に興味があったのは教師になることでした。そう言う意味では『教師』というのは私のやりたいことだったのだと思います。

ダライ・ラマについて聞かせてください

 一緒に活動すると言うよりは、彼からいろいろなことを学ぶという感じです。私にとって理想の人で、とても尊敬しています。

 彼がすばらしいのは、自分のことをただのひとりの僧だと思っているところです。多くの人が崇拝しますし、西洋社会ではある意味有名人です。チベットでは彼は生きている仏陀です。しかし、彼の性格はとても謙虚で、出会う人みんなに手を合わせてお辞儀をし、ほほえみを絶やしません。

 それに最も重要なのはどの宗教も尊重していることです。世界の宗教指導者たちと話をするのが大好きです。彼の宗教理念はとってもシンプルです。それは『親切』です。『愛情』『情け深さ』がメインメッセージです。それに彼の目的は人々を仏教徒に変えようとするものではありません。ここが彼のすばらしさです。

 個人的には、とてもすばらしい教師として尊敬しています。それなのに私に会う時はいつもカジュアルです。『元気?最近はどう?』など気軽に話しかけてくれます。

日本に年に1回は行くと聞きましたが?

 2000年からです。もう7年になります。

印象は?

 好きですね。なんというか日本の人々と強いコネクションを感じますね。どう表現していいかわからないですけど。私には別に人々を仏教徒にしようという意志はありません。どんな宗教であれ、自分が信じているもの、ありのままの自分でいることが大事で、私は必要に応じてそこにいるだけです。日本の人々はそれを心地よく思ってくれているようです。

松尾さんと一緒に活動することについては?

 彼の音楽はとても心に響きます。彼を友達としてよく知っていますが、彼の音楽は彼の心から出てくるものだと思います。音楽があるというのはいいですね。人々も音楽がある方がリラックスできると思いますね。

 リンポチェさんと松尾さんは日本で何度も一緒に活動をしている、言ってみれば顔なじみ。先に到着していた松尾さんの前に現れたリンポチェさんは、満面に笑みを浮かべバンクーバーでの再会を喜んでいた。



癒し音楽演奏家・松尾泰伸さん
プロフィール
 作曲家・キーボーディスト。「本来の意味」の癒し音楽を目指し、高原熊野神社、熊野那智山西岸渡寺など多くの奉納演奏を重ね、映画音楽、CD・DVDを数多く手がけるなど、幅広く活動している。去年リリースされた2枚組CD 『RED rlung(赤いルン)』は、東漸寺で購入できる。
連絡先: 東漸寺・橋本宣子さん(604-994-0894)

ウェブサイト:http://02ma.com


音楽に向かう姿勢が以前とは違うという、松尾泰伸さん
















癒し音楽を始めたきっかけについて聞かせてください

 最も大きな変化だったのは、2004年、和歌山の高野熊野、吉野熊野高野山が世界遺産に登録された年(※)です。その時熊野本宮大社の宮司さんから、世界遺産に登録されたことを報告する『報告祭』の中で演奏してくださいという連絡が入りまして。それからですね。

※2004年、三重県・奈良県・和歌山県にまたがる『紀伊山地の霊場と参詣道』が世界遺産に登録された。

癒し音楽というのは?

 僕の癒しというのは、バランスを取って治癒するという意味です。単に気持ちがいいとか、心地よいというだけでなく、バランスを取るということですね。だから時には荒療治も必要になります。例えば、小さな静かな音だけでなく、大きな音も必要だと思うんですよ。バランスが崩れているものほど、両極端が必要であると思うんですね。音のダイナミクスでバランスを取っていく。

リンポチェさんとのコラボについて
 得るものはありますね。音楽をやっていてこの歳になってあんまり新鮮なものってないんですけど(笑)。彼はお坊さんなので人助けですよね。音楽も本質は一緒だと思うんですよ。僕はたまたま楽器を使っていますけど。音楽で人の心が癒されたりとかバランスが取れたりとかできたら、それは自分にとって、人のお役に立てることだと思っています。

音楽ができることとは?
 音楽というのは優秀な道具であるのに今はその正しい使い方がわかっていない。だから正しい処方箋を広めていったら、助かる人がもっとたくさんいるのになと思います。

 自己治癒力、免疫力を高めていく媒体になるものが音楽です。そう感じてくれる人が出てきています。演奏の最中、わんわん泣いてくれる人など、つらい人ほどよく泣いてくれるんです。泣くことは浄化なのですっきりして帰ってもらうのもいいですね。

 僧侶が唱えるお経もそういう意味では、音の波動『音魂』があるから、聞くだけで癒されてしまう部分が昔からあったと思いますね。たどっていけば同じものですよね。

 極論を言えば、人に聴かせる音楽というのではなくて、大自然とのエネルギー交換に音楽を使う。そのエネルギーの循環を提供できることで聴いている人の心身のバランスが取れていく。そういうのが役割だと思っています。

 橋本住職、リンポチェさん、松尾さんを引き寄せたのは、和歌山県のお寺だった。「不思議なご縁によってこうしてうれしい出会いがありました」と橋本住職が語っていた。見えないけれどさまざまな『縁』によって私たちが生かされているという橋本住職の言葉が改めて心に浸みた。


松尾さんがリリースした "Red rlung"を含むCD3枚


(取材 三島直美)