SPECIAL 2007

2007年6月14日 第24号 掲載


企友会主催2007年度第1回特別講演会


バンクーバー日本国総領事館・領事の星勇一氏


スイモン・エンジニアリング・カナダ
代表取締役の久保克己氏

 現在世界の経済を大きく揺るがすアジアの2大発展国、中国・インド。それに加えNAFTAの締結に伴い誕生した巨大な北米自由貿易圏になったカナダ・米国・メキシコ。そんな現実に直面し日本は果たして世界第2位の経済大国として現状を維持できるのか、また日本と BC 州の今後のビジネスチャンスはどうなるのだろうか。バンクーバーでビジネスに携わる者には気になるこの話題が、5月22日企友会主催第1回特別講演会で取り上げられた。

バンクーバー日本国総領事館領事・星勇一氏
「アジアのゲートウェイ日本と北米のゲートウェイBC州」


日本の現状
 これから日本は少子高齢化が進み日本経済を支える労働力が減少する傾向にある。結果、他国と競う国際競争力まで低下する可能性が出てきている。GDPの規模だけで言えば、遅かれ早かれ日本が経済大国世界第2位の地位を退くことは容易に想定される。

 BC州のアジア・パシフィック・イニシアティブによると、中国は急速な都市化により今後10年で1億人が中産階級になると予想している。そして中国の今後の経済発展に関しては専門家によっても意見が分れるところであるが、10年後に現在の日本規模の市場が1つ、20年後には5つも世界に現れるといわれている。もしそうなると、単に日本が経済大国第2位から退くというのみならず、世界は食料やエネルギーといった資源の奪い合いになり、資源の確保・地球環境問題への対応という点でも大きな問題が潜んでくる。こうした中で日本経済は、主要先進国の中で戦後初めて、継続的に人口が減少するという逆風の中でも成長が可能であることを示す、という新しい成長に挑戦しなければならない。

日本の経済戦略

 日本政府が取り組む経済戦略の鍵となるのは「イノベーション」。労働力や資本増加には限界がある一方、私たちの作り出すアイデアには限界がない。それなら新しい産業をつくろうではないか。技術革新を起こすことによって、世界に通用する経済力の維持を可能とするのだ。

 また各分野でのイノベーションの連携により、新しい産業分野(燃料電池、情報家電、ロボット、コンテンツ等が期待される)を創設できる。そして、こういったイノベーションを核として2つの好循環を実現する。ひとつは高度成長過程にあるアジア近隣国との友好的なパートナーシップにより、アジアの発展に貢献し、共に成長すること。ふたつめは戦略的な地域の活性化である。この地域の活性化では国内の需要喚起はもちろんのこと、海外と直接地方がつながる関係を構築する必要がある。

アジアのゲートウェイ構想

 安倍内閣が「美しい国日本」を実現する施策として打ち出した我が国の「アジアのゲートウェイ構想」。これはまさしく上述した視点を踏まえた構想であり以下の3点を目的とする。

1 アジアの成長と活力を日本に取り込み、新たな「創造と成長」を実現する。
2 アジアの発展と地域秩序に責任ある役割を果たす。
3 魅力があり、信頼され、尊敬される「美しい国」を目指す。

 例えば、現在日本はアジアのゲートウェイとして、日本の価値観を世界に発信しようとしている。それは「日本らしさ」をブランドにし、工業製品、農業・食料品、さらには文化まで海外に発信しようという取り組みだ。日本政府は「ジャパンブランド育成支援事業」に取りかかり、各都道府県・市町村の商工会・商工会議所で独自のブランドを確立し、3年後には世界に通用するブランドを紹介する予定だ。これらのジャパンブランドは、今後、アジア、そしてバンクーバーを含めた北米、さらに欧州の市場を目指している。

BC州の現状
 ここ約10年間、カナダはNAFTAの進展に伴い米国との関係が強くなっており、日本との貿易量は減少傾向にある。すぐ隣に出来た米国という巨大市場に輸出すれば十分利益が得られるわけであって、太平洋を挟んだ遠い日本への関心が薄れたのだろう。だがそのような状況下、カナダの中でBC州は、他州に比べ対日輸出度が最も高い州である。

 BC州アジア・太平洋貿易協議会・日本市場部会の報告書によると、2006年度のBC州からアジア諸国への輸出においては、依然、日本への輸出が半分以上であり、中国・インド・その他の総計より多い。日本への輸出品は95%が天然資源(木材、金属、石炭、農水産物など)で、ここ数年エネルギー価格の高騰に伴い金属・石炭の輸出額が急増したことにも注目したい。また、カナダ全体の議論として日加FATAがなかなか検討されない要因は日本との貿易構造で農産物が多くを占めるためである。

省略語解説
GDP:Gross Domestic Product 国内総生産
NAFTA:North American Free Trade Agreement 北米自由貿易協定
FTA:Free Trade Agreement 自由貿易協定 スイモン・エンジニアリング・カナダ



代表取締役・久保克己氏
「日本とカナダの掛け橋について考える」


掛け橋とは

 地域Aと地域Bがあるとする。このふたつの地域を結ぶためにできた掛け橋。この掛け橋のおかげで人、物、お金、情報などさまざまなものが流通するようになる。橋が掛けられた理由はどうであれ、この橋が各地域に果たしてきた役割は多大なものになる。

 ここバンクーバーでビジネスをする私たちについて考えたい。日本から見ると「掛け橋」のちょうど反対側に存在する私たち。この異国の地で一体何ができるのだろうか。まずは信頼関係の構築がキーになってくる。現地に根付いて隣近所と仲良くするといった基本的なことから日本の文化・生活・伝統を周囲の人に知らせることができる。そうすることで「日本人とはこういう人だから信頼できる」という信頼関係をこの地で暮らす方々と築きあげることが可能になる。草の根レベル的だが、「日本人は感じがいいな〜」「日本人は約束はちゃんと守るな〜」といった信頼関係を勝ち取って行くことは今後ビジネスをするベースを築く。この地で生活しているということだけで、もうすでに掛け橋の形成に貢献していることを忘れてはいけない。

日本とカナダの掛け橋の歴史

 ここで日本とカナダの掛け橋になった代表的歴史的人物を紹介すると、まずは1877年(明治10年)にカナダに密入国した長野万蔵氏。そして水安丸で83人もの密航人を連れてビクトリアに上陸した及川其三郎氏に、1933年(昭和8年)に客死した新渡戸稲造氏。

 また日本とカナダの正式外交関係は1889年(明治22年)に初の在バンクーバー日本国総領事館が姿を現す。1962年にはニューウェストミンスター市と大阪の守口市が初の姉妹都市関係を築く。2003年までにカナダの の都市が日本の都市と姉妹都市締結しその半分以上がBC州に集中する。

 日本とカナダ間には約130年もの歴史を誇る橋が掛けられており、この橋を今後どのようにしっかりとしたものに築き上げていくかが課題になってくる。

掛け橋となる中でのビジネス

 そこで掛け橋となる中でビジネスをするにあたりキーポイントを3つ紹介する。

 まずは「日加相互の文化尊重」。自分の文化を理解してもらうには相手の文化も理解する必要がある。お互いの文化を理解して初めて友好関係が築かれる。そしてそれがビジネスへとつながる。

 次に「個人としての信頼関係の構築」。ビジネスにおいてコミュニケーションの手段になる英語に磨きをかけるのも大切だが、いくら英語が出来てもビジネスの基礎となる信頼関係が揺らいでいては元も子もない。誠意を相手側にきちんと見せる姿勢が必要となってくる。

 最後に「日本政府関連機関と個人・民間団体との協力」。いわゆる日本政府関係者と現地日系移住者の相互協力だ。日本政府関係者は地元に根をおろし日常生活で現地に溶け込んでいる日本人を活用することで効果的なサポートが得られる。またそうすることで現地日本人の仕事も増えお互いに得をするというわけだ。

 そしてこの3つのキーポイントの基盤になるのが「日系人同士の中での橋」。同じ日本からはるばるカナダに来たというもの、互いに協力しあうどころか避けあい敬遠する人も多く、結果「日加相互の文化尊重」「個人としての信頼関係の構築」「日本政府関連機関と個人・民間団体との協力」が難しくなってくる。最終的にお互いのビジネスの足を引っ張るということにもなりかねない。

 5年ほど前の話になるが、この現実に直面し危機を感じた日系コミュニティはカナダの各地域から日系コミュニティの代表を呼び集め「日系人同士の中での橋」の大切さを強調した。私たちも日系新ビジネスや新移民が増える中、今後も強い日系社会を作りあげる努力をするべきだ。そうするには企友会や地元日系コミュニティに積極的に参加することが今後の橋作りに大いに貢献するのではないだろうか。


(取材 小林昌子)