SPECIAL 2007

2007年4月26日 第17号 掲載


温泉の達人が選んだ
カナダの温泉ベスト10!


Pitt River Hot Springs

 日本のものはほとんど手に入るバンクーバー。この街で日本のものが恋しくなる時があるとしたら、それは温泉だという人も多いのではないだろうか。情緒あふれる露天風呂に、心ゆくまでゆっくりと浸かってみたい。それがカナダでもできたら最高だ。

 そこで、“Mr. Hot spring”という異名を持つカナダの温泉の達人、マイク佐藤氏に登場願って、カナダの温泉を紹介することにした。題して、「カナダの温泉BEST 10!」。温泉ファンの立場に立ったカナダの温泉10傑である。


カナダの温泉めぐりの醍醐味

 カナダの温泉はアルバータ州に6、ユーコン準州に6、ノースウエスト準州に16、あとの98の温泉は、すべてBC州に集中している。公共の交通機関で行ける温泉はほとんどなく、3分の1は到達困難な原始温泉である。「日本人がイメージするような温泉施設はカナダにはありませんが、未開発の温泉でも週末は大人気の場所もあります。脱衣所もトイレもなく、川をせき止めただけの温泉が大半で、かなりワイルドですが、それが逆にカナダの温泉めぐりの醍醐味でしょう」。16年間も温泉開発に関ってきた佐藤氏はそう語る。

ホンモノの温泉とは

 北米の温泉施設の評価の目安は“源泉掛け流し”であるということ。人間の体温より高い37℃以上の“自噴泉”を温泉と呼ぶ。数年前、日本でもこの問題が大きく取り上げられ、循環湯を使用した温泉の多さに驚いたものだ。また、カナダには日本のような温泉法はない。市民プールと温泉が同じプール法で運用されている。カナダの商業温泉に温泉情緒がないのはこれゆえである。カナダの温泉プールはすべて塩素消毒の循環温泉なので、残念ながらホンモノの温泉の対象外になる。

 それでは、「天然自噴泉・源泉掛け流しの野天風呂・アクセス・ロケーション」の4条件のもと、マイク氏にベスト10を選んでもらおう。


第1位 Liard Hot Springs
 リアード川州立公園の中にあるカナダで第二の湯量を誇る日帰り温泉施設。フォート・ネルソンから3時間のドライブ。入湯料1人5ドル。カナダの日帰り温泉としてはキャンプ場の施設も充実し、トイレや脱衣所などの設備が一番整っている。湯量豊富な源泉が2箇所ある。こんな雄大な温泉池は日本でもお目にかかれない。夏季期間はブラックフライやアブが多いのが難点。


第2位 Meager Creek Hot Springs
 佐藤氏がプロデュースしたカナダ初の日本風の野天風呂。カナダで最初にプール法から適用除外になった温泉である。渓谷に点在する3温泉の総湯量は最大のスケール。源泉温度は59℃で、点在する3つの野天風呂はまさに大自然の恵んだオアシスである。バンクーバーから226km、約4時間のドライブ。駐車場から5分。大露天風呂には湯滝があり、川岸の野天風呂からはミーガー・クリークを眺望でき、感激すること請け合いである。日帰り温泉で脱衣所とトイレがあり、入湯料は1人5ドル。11月中旬から4月中旬までは閉鎖。夏はアブやブラックフライが多い。夏には再開予定。











第3位 Hotsprings Island
 クィーンシャーロット諸島の南島のグワイ・ハーナ国立公園の中にある。交通手段はアウトフィッターのボートか水上飛行機のみ。源泉温度は69℃。個人で行く場合、許可書が必要。露天風呂は3つ。断崖の上にある野天風呂からは絶景が堪能できる。塩分濃度はカナダで一番高い。源泉もかなり高温で、夏場の入浴では少し熱すぎるのが難点。本当の自然が残っている大小約百数十の島々と先住民族であるハイダ族の文化遺産など見所も多い。


第4位 Hot Springs Cove
 トフィーノから37kmほど北西のマキーナ州立公園内にある。温泉好きの日本人としては、大自然の鼓動を感じるこの温泉に一度は入湯することを薦める。ここには自然そのものが造り出した「温泉とはこんなに素晴しい」と感じられる本当の野天風呂がある。ウォーター・タクシーだと片道約1時間半で船着き場へ。あとは水上飛行機を使うか、ホット・スプリングス・ツアーに参加する方法もある。波打ち際にある野天風呂は海水が温泉とブレンドされて適温になっている。入湯料は1人3ドル。ただ有名な温泉地なので、シーズン中の週末はかなり混雑する時もある。


第5位 Dewar Creek Hot Springs
 パーセル自然保護区の中にあるワイルドな温泉。キンバレーから西に1時間半、64kmのドライブでこの温泉の登山口に到着する。まさに山峡を一人占めにした別天地である。源泉はカナダの温泉では最高の89℃。川沿いの野天風呂があり、登山者のロマンを誘う温泉で、自分たちが自然の中にいるということを実感させてくれる。野趣豊かな自然の温泉ゆえに、かなり歩かなければ行けない山岳の秘境なのが難点である。


 

 

 



第6位 Pitt River Hot Springs
 バンクーバーから直線距離だと、僅か67キロの一番近い温泉である。ただし恐ろしいほどアクセスの悪い温泉ゆえに、ほとんど知られていない幻の秘湯である。現在はジェットボートで温泉に行けるらしい。岸壁の割れ目からかなりの高温泉が湧き出している。この温泉はピット峡谷の岸壁の野天風呂で、小さな宝石のような温泉である。この野天風呂から眺めるエメラルド・グリーンのピット・リバーはため息がでるほど美しい。



 

 

 

第7位 Eucott Bay Hot Springs
 バンクーバーから1200km北西にあるべラ・クーラの町の近郊にある。アクセスはボートで1時間か、水上飛行機しかない。源泉は55℃で湯量は豊富。野天風呂は2つあり、夕暮れ時の湾内の風景は郷愁をそそる。透明な湯が洪水のようにあふれている湯船は、これぞ“秘境のいで湯”という感じがする。アクセスが恐ろしいほど悪いが、今の日本にはない自然のままの温泉でかえって新鮮である。


第8位 Lussier (Whiteswan) Hot Springs
 フェアモント温泉リゾートから15分ほど南下し、ホワイト・スワン州立公園の入り口から砂利道を25分ほど東に走ったところにある。ポピュラーな温泉で、年間6万人の入浴客がある。源泉の温度は43.5℃なので、冬季は少し肌寒い。野天風呂の脇を川が流れているので、日本の野天風呂に似た雰囲気が楽しめる。温泉は無料。駐車場に簡単な脱衣所とトイレがある。水着はオプションだが、人気の温泉なので水着を着用したほうが無難。カナダの野天風呂では、最もアクセスの良い温泉である。


 

 

 


第9位 Sloquet Hot Springs
 バンクーバーから約5時間のドライブで、冬季間は閉鎖される。四輪駆動走行が望ましい。駐車場から谷底に300mほど急坂を降りると、倒木の橋があり、3つの野天風呂がある。源泉は68℃で湯量も豊富。苔むした岸壁や自然の温泉滝は風情たっぷり。渓流のせせらぎとかすかな硫黄の匂いは、まさに秘湯探勝の趣がある。湯につかりながら眺めるスローケット・クリークの清流はまさに宝石のよう。温泉は無料、キャンプだけ10ドルでトイレや脱衣場はない。野天風呂が浅すぎるのと、泉温が高いのが難点。


第10位 Upper Halfway River Hot Springs
 ナカスップの町から23号線を26kmほど北上、その分岐点から林道を22kmで到着。ウエスト・クートニーで一番の野天風呂ではないかと思われる。「これこそ秘湯だ」と思わず歓声がもれるほどの大自然の中の野天風呂である。源泉は52℃あり、滝となって流れ落ちている。ボランティアが建設したにしてはかなり見事な出来。ただ未確認だが、野天風呂が土石流で流されたと言う報告もある。発見するのに困難な温泉である。


最後にマイクさんからひとこと
 「(温泉は)実際に自分で入ってみないとよくわからないので、あくまでこの温泉評価は私の個人的な評価です。リアードとホット・スプリングス・コーブを除くこれらの温泉はすべて水着はオプションで、裸で入浴できますが、ファミリーがいたり、混雑している時は水着着用がいいでしょう。この中の5つ以上の温泉に入湯していれば温泉通です。私の温泉評価に感想があれば、いつでもご連絡ください」  


(取材 西澤律子  写真提供 マイク佐藤)

マイク佐藤:世界38カ国を放浪の末、カナダに辿り着き、25歳の時にトロントで毛皮会社を経営。その後、大自然の中で湯煙をあげるカナダの「いで湯」に魅せられて、「日本風の本格的な野天風呂」 をつくるロマンに執りつかれている。「ミーガー温泉」はその第1号作品。この温泉はカナダ初の「源泉かけ流し野天風呂」としてオープン。4年に及ぶ困難なBC州森林省、厚生省、先住民、自然保護団体などとの交渉の成果を評価され、温泉関係者や地元の人たちからは“ミスター・ホット・スプリング”と愛称されている。その後、スコーミッシュの北西にあるケーリー温泉の開発権を取得し、2004年には米国ワシントン州の「シーニック温泉」を譲り受け、カナダとアメリカの2件の温泉プロジェクトに情熱を注いでいる。
E-mail: cayleyhotsprings@shaw.ca