SPECIAL 2007

2007年2月22日 第8号 掲載


企友会新春懇談会「新春特別講演会」
〜在バンクーバー日本国総領事館大塚聖一総領事、
バンクーバー貿易懇話会松浦史一会長を迎えて〜


あいさつする吉武政治会長

大塚聖一総領事

松浦史一会長

 企友会の2007年度年次総会と新春懇談会が1月29日バンクーバー市内ダウンタウンにあるリステルバンクーバーで行われた。総会では2期連続で会長を務める吉武政治氏があいさつ。今年創立20周年を迎える企友会にとって飛躍の年であることを誓った。

 続いて、新春懇談会恒例の「新春特別講演会」が行われ、今年は在バンクーバー日本国総領事館大塚聖一総領事が『これからの日本外交』、バンクーバー貿易懇話会松浦史一会長が『変化の時代−総合商社の一断面』と題して講演を行った。


2007年の企友会について
 吉武会長は、「今年もやりたいことはたくさんあります」と前置きして、まずはこれまでも勧めてきたバンクーバーにある団体と民族間の垣根を越えた交流を推進していくこと、日本にある商工会議所やその他のビジネス団体とのコラボレーション、さらにバンクーバーの姉妹都市である横浜市との関係強化など、「まずは企友会のメンバーにとってビジネス的に有益で、会員の輪が広がっていくような環境を築いていくことを目標にしています」

 さらに、今年創立20周年を迎えるにあたって、会の歴史や創立からの関係者など多方面に渡るテーマでの懇談会や講演会などを予定。

 会員がメリットを感じるようなマーケティング部分の充実と「会員増員はもちろん、起業した人、したい人にとって今後のビジネスが広がっていくような交流の場であることを目指していきます」

 現在ホームページにも力を入れている。検索でカナダビジネスと入力すると上位に「企友会」が表示されるという。直接入力派の人は、www.kiyukai.orgへ。


新春懇談会恒例の「新春特別講演会」
 当日行われた講演内容の要約をここに紹介する。

在バンクーバー日本国総領事館  大塚聖一総領事
『これからの日本外交』


WTOとFTAとEPA
 2001年11月に開始が決定した通称ドーハ・ラウンドが、2006年7月交渉の一時凍結が発表された。そこで、WTOを主体とした自由貿易体制の構築を目指してきた日本は、FTAもしくはEPAを推進する体制を促進している。とりわけ関税の撤廃など通商上の障壁のみを取り除くFTAよりは、投資環境の整備、人の移動なども含めた円滑な経済交流を構築できる自由貿易において広い概念を持つEPAに力を入れ、協定締結に取り組んでいる。

日本とNAFTA・ASEAN

 自由貿易地域という意味ではEUが最も進んだ地域といえる。物・人・サービス・資本という4つの基本事項が基本的にEU域内であれば自由である。NAFTAは、米・加・メキシコ間で多くの関税撤廃を達成しているが、物と人の移動を厳しく分け、日本はメキシコとEPAを結ぶことでこの一角に入り込むという戦略を取っている。

 ASEANは域内貿易が各加盟国の20パーセント程しかないなどあらゆる面で問題は抱えているが、日本はASEAN諸国とのEPA締結を優先目標にし、実際両者の思惑はおおむね合致している。

ASEANを核とした東アジアにおける自由貿易圏
 東アジアはASEANだけでは弱いが近隣諸国を合わせると世界経済の約30〜40パーセント、APECも合わせると65パーセントという巨大経済圏となる。しかし、地理的、文化的、宗教的、政治的にも多種多様なアジアの国々がEUのような地域統合が可能かというのは世界が注目するところである。
 
カナダの政治的動きについて
 カナダは現在NAFTAに加盟しているがそれ以外では大きく遅れている。日本とも現在協定は結ばれていない。カナダ連邦政府主導が思い切った政策をとらなければ、現在の東アジア共同体の動きやAPECの地域協力からカナダの陰が薄くなっていくことは必至で、東アジアとの経済的関係を強めていこうとするBC州政府にとっても懸念すべき懸案だろう。

グローバルな存在として発展していく日本

 現在の世界貿易体制は、大きな磁力となる国、日米・日中・米中・米EUがWTO体制に依存し、その中で周辺諸国をFTA/EPAで結びつけるという模様を描いている。

 日本としては、約4割を占めるアジア貿易を考慮すると、ASEANの一員となることが経済的発展を促すものではあるが、既存の日本企業のグローバルな展開を考慮すると無理に東アジア共同体の一員と位置づけるのではなく、G8のメンバーであり、OECDの主要国でもあり、グローバルな存在として経済活動を続けていくことがこれからの発展を約束するものではないかと推測する。


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バンクーバー貿易懇話会  松浦史一会長
『変化の時代〜総合商社の一断面』


「パラダイムシフト」
 三菱商事社長が社員に向けた言葉である。その意味は、ある時代に共通して認知しているルールや方法がシフトする、つまり昨日まで当たり前のように使われていたものが今日は使えないという変化の中で、時代を先取りして手を打っているか?ということを示唆したのではないかと自分なりに推測している。

 このルールをシフトしていく大きな要因となるものには、人口の増加、食糧危機、水資源の問題、少子高齢化問題などがあり、地球温暖化、エネルギー不足も世の中の仕組みを変えている。そこにビジネスチャンスを見いだすのである。

「直面している問題をビジネスチャンスに」

 人口増加と食料不足を考えてみる。現在地球の人口は、20世紀初めの16億人から60億人に増加している。国連は地球が養える人口は約80億人までと推測している。

 そこで問題になるのが食糧不足である。単純計算で摂取量を全て穀物で摂取すると1人1日600g、1年で219kg、60億人で13億トンとなる。現在世界の年間穀物生産高が約20億トンで、これであれば賄えることになる。ところが、牛、豚、鳥なども食すると家畜用穀物が必要となる。例えば、1日の1/3を鶏肉で、残りを穀物で摂取すると60億人で1年間29億トンの穀物が必要となる。

 そこでここにビジネスチャンスを見いだす。例えば食糧不足問題の穀物の場合、単位あたりより多く生産できる方法や、安心安全なものを他の地域に移動できる方法、畜養養殖技術向上など研究提供する。

 人口増加に伴いさらに深刻化する水不足問題も、慢性的水不足を解消するというところにビジネスチャンスを見いだすことができる。こうした地球規模で起こる様々な問題をビジネスチャンスに変えていこうというのが「パラダイムシフト」の趣旨だと考える。

三菱グループの取り組み
 現在海外80カ国に200以上の事務所があり、提携会社も含めて日本人6000人、世界中で4万8000人が三菱グループとして働いている。取り扱い品目もエネルギー、貴金属資源、機械化学品、食品・食料、繊維などあらゆる分野に渡る。その中で、中期経営政策を「イノベーション2007」と銘打って、「新産業でイノベーターになろう」を実現するために3つのコンセプトを設置している。(1)変化をとらえて未来を開こう、(2)人を生かして、人を育てよう、(3)足場をかためよう、である。

 これらは特別新しい発想ではなく、事業を展開していく上で最も基本的なものだといえる。だからこそ、そこに立ち返ってしかも変化を認識して対応しようというものである。

 カナダ三菱は昨年50周年を迎えた。商社というのは絶えず変化する社会情勢に対応して、自らも変化していくことが必要である。これからは、日本からやってきた出先の商社ではなく、地場にインサイダー化したカナダでの総合商社になりたいと希望しており、その方向でチャレンジしているところである。

(取材 三島直美)

企友会(バンクーバー日系ビジネス協会)
 1987年11月にバンクーバー在住の有志により結成。1993年に公益法人としてカナダ、BC州に登録された。カナダでビジネスに関係する人に情報交換をする場、討議する場を作ること、カナダ日系ビジネスの発展に貢献することを目的としている。現在会員は法人・個人含め87人。



 


省略語解説
WTO: World Trade Organization 世界貿易機関
FTA:Free Trade Agreement 自由貿易協定
EPA:Economic Partnership Agreement 経済連携協定
ASEAN: Association of South-East Asian Nations 東南アジア諸国連合
NAFTA: North American Free Trade Agreement 北米自由貿易協定
APEC: Asia-Pacific Economic Cooperation Conference アジア太平洋経済協力会議
OECD: Organization for Economic Cooperation and Development 経済協力開発機構
G8: 主要国首脳会議