SPECIAL 2007

2007年2月15日 第7号 掲載


老後のための貯蓄に
節税メリットのあるRRSPー


浅野イサオさん

 毎年この時期、町中でよく耳にするRRSP。これはResistered Retirement Saving Planの略で、退職後のための個人の貯蓄プランのこと。今年は3月1日までにRRSPに入金すれば、2006年度分の税金申告の課税対象額が減額となる。それにより節税が可能であるうえ、RRSPの貯蓄への利子は非課税というメリットがある。

 このRRSPを理解するための基礎知識をカナダライフの浅野イサオさんに伺った。


1.RRSPの仕組みとメリットは?
 「RRSPを買う」と語られることが多いが、実際にはRRSPという金融商品はなく、金融機関(保険会社、銀行、証券会社、信託会社など)で契約した金融商品を、カナダ税務署(Canada Customs and Revenue Agency)に登録すると、それがRRSPとなる。RRSPへの入金額は課税対象所得から差し引かれる。また、RRSPの資産から生まれる利益(利子、配当など)はRRSPからお金を引き出すまでは税金がかからない。

2.RRSPは誰でも買えますか?
 勤労所得(Earned Income)のある人で、69歳になった年の12月31日までは購入できる。駐在員やワーキングホリデービザでの勤労者も購入可能。不労所得者(利息や株、投資、日本からの年金などで生活している人)は購入できない。

3.購入限度額は?
 2006年度の確定申告(Income Tax Return)に間に合うようにRRSPを購入する場合は、2005年度の収入(注1)の18%までか、もしくは上限の1万8000ドルのどちらか低い額が購入限度額となる。その額は2005年度の確定申告後、税務署より送られてきた査定表の「RRSP Deduction Limit Statement」の欄に表示されている。前年度のRRSPの購入額が購入限度額に満たない場合は繰り越すことができ、繰り越し年数に制限はない。

 (注1)労働で得た所得か、不動産の賃貸収入から諸経費を差し引いた純益収入、離婚者へ元配偶者から支払われる収入が対象となる。

4.購入時期や購入額はどのように決めると良いのでしょうか?
 所得税の税率は収入額によって決まる。RRSPの購入で課税対象となる収入額が減ることで、税率が変わる場合がある。RRSP自体はいつでも買えるのだが、多くの人は収入の課税対象額を減らそうと、年収の確定した後で購入額を検討する。そのため年始からRRSP購入締め切り(年始60日以内・今年は3月1日)までに多くの人がRRSPを購入している。そのため節税をするには、RRSPの繰り越し可能な点を利用し、収入の多い年にRRSPを多く購入するよう考えると良い。

<RRSP購入例>
 2005年度の収入に対するGross Income(粗収入)が5万ドルだった人は、その18%、9000ドルが今年3月1日までに購入できるRRSPの最高額となる。この人が2006年度、さまざまな控除額を引いた課税対象額が4万ドルだったと仮定して、9000ドルのRRSPを購入した場合を見てみよう。

 この課税対象額ならば、本来は連邦税22%・州税9.15%、合わせて31.15%の1万2460ドルが所得税となるが、RRSP購入により課税対象額が3万1000ドルと減ったため、税率が21.3%(連邦税15.25%+州税6.05%)と下がり、所得税は6603ドルにまで減額となる。RRSPを購入しない場合に比べ、5857ドルの節税となる。

<2006年度収入への税金一覧>

−Federal Tax(連邦税)−

Net Income (実収入)
税率
〜 $ 36,378
15.25%
$ 36,379 〜 $ 72,756
22%
$ 72,757 〜 $118,285
26%
$118,286 〜
29%




 


−BC Tax(州税)−

Net Income (実収入)
税率
〜 $ 33,755
6.05%
$ 33,756 〜 $ 67,511
9.15%
$ 67,512 〜 $ 77,511
11.7%
$ 77,512 〜 $ 94,121
13.7%
$ 94,122 〜
14.7%

 

 

 

 

 


5.Spousal (配偶者)RRSPとは?
 これは配偶者にRRSPを購入できる制度で、購入した勤労者からその額面分の税金控除がなされる。名義を分けて購入することで、将来年金として受け取る際に節税効果が高くなる可能性がある。

 これは正式に婚姻関係にないコモン・ローと呼ばれるパートナーに対しても適用される。

 配偶者が69歳以下であれば、自分が69歳を越えても、次の条件に該当すればRRSPの購入が可能である。

@ 自分に勤労収入がある場合。
A 自分に勤労収入がなくても、前年までのRRSPに買い残しがある場合。
 これも、正式に婚姻関係にないコモン・ローと呼ばれるパートナーに対しても適用される。

6.RRSPの種類は?
 大きく分けて3つのタイプがある。

(1) Deposite Type

 定期預金(GIC)など元金が保証され、利息が付くタイプ。
(2) Investment Funds (投資信託)
 投資家から集められた資金を専門家が株や債権などで運用し、投資家に還元するもの。元本保証はないが、一定の保証が付いている商品もある。
(3) Self Directed Plan
 口座を開き、株や国債などを自分で売買して運用するタイプ。

7.途中で引き出すことはできますか?
 引き出しは可能。税金対策として購入後すぐに解約する人もいる。ただし、解約時には源泉徴収税(Withholding Tax)が課せられるが、非課税で引き出すことができる場合が2例ある。

(1)Home Buyers Plan(自宅としての利用に限る)

 過去5年間に家を購入していなければ、家を購入時にRRSPを非課税で一人2万ドルまで、夫婦ならば合わせて4万ドルまで引き出すことができる。ただし引き出した金額は、毎年最低15分の1以上を返却しないと、その額(引き出し額の15分の1)がその年の所得と見なされ、課税対象となる。

(2)Life Long Learning Plan 

 RRSP購入者がフルタイムで学校に通う際に利用できるプラン。総額2万ドルまで非課税で引き出し可能で、年に1回1万ドルまで引き出しできる。有効期間は4年。10年以内に全額返却が義務付けられる。RRSP購入者の子供などには適用できない。

8.満期と解約の方法について教えてください。
 ほとんどの人は退職時に解約をしてその後の収入とする。退職時期は人によって異なるが、RRSPの満期日は69歳になった年の12月31日であるため、その日までに解約しなければならない。

 現金化した時点でその金額は収入と見なされ、所得税の課税対象となる。節税を考えるなら解約方法や時期には一考が必要である。仕事をリタイヤ後の方が収入が低いため、リタイヤ以後に解約すると課税対象額が少なく節税につながる。そのうえで、一括で解約するよりも解約時期を分散した方が節税効果は高い。

 解約方法には次の3通りがある。

(1)一括解約(Cashing In)

 貯蓄したRRSPを一度に現金化する方法。貯蓄額が大きいと解約時の年収が大幅に増え、税率が格段に上がることを考慮すべきである。

(2)RRIF(Registerd Retirement Income Fund)
 毎年引き出していく方式のこと。年齢と1月1日時点での貯蓄額により最低引き出し率が決まる。年齢が高くなるにつれて最低引き出し率は高くなる。引き出した額には税金がかかるが、元本は非課税のままである。

(3)終身年金制度(Payout Annuities)
 毎月一定の額を受け取る制度で、これは保険会社が扱っている。RRSPの解約時の年齢、性別、その年の金利、貯蓄額によって金額が決まる。生きている限りは一定額が受け取れる。受給金額が決まった後は変更が利かないため、金利を見定めて解約時期を考えることが必要。


(取材 平野香利
)

取材協力:浅野イサオさん
カナダライフに勤務。保険外交・投資アドバイザー。バンクーバーで27年にわたり、個人に合った賢い貯蓄計画の相談役として活躍。
問い合わせはTel:604-274-5234