カナダといえばオーロラではないだろうか。寒さにはめっぽう弱い私はあきらめていた。真冬の極北なんてとても私には耐えられない。しかし、夏でもオーロラは見えるらしい。それを知った私はホワイトホース行きのバスに乗り込んだ。
バンフからホワイトホースまでは乗り継ぎを重ねて36時間。夏といっても早朝のホワイトホースは、10分も外に立っていれば凍える思いだ。あまり時間のない私は1日の滞在しか許されない。一夜にオーロラを賭けている。
どのようにしたらオーロラを見ることができるのだろうか。真っ暗闇でしばらく夜空を眺めていれば見ることができるのではないだろうか。街灯の光もない街外れまで行けば見られるのだろうか。そう考えた私は光のない方を目指した。
オーロラを見るにあたって注意すべき点が2つある。まずは寒さ。これは最大限の防寒着を着込めばなんとかなるだろう。上半身にばかり気をとられずに下半身にも目を向けていただきたい。足先の冷え込みはあなどれない。
次に熊。これは出会ってしまったらしょうがない、というよりはどうしようもない。出会わないことを願うだけだ。あまり人のいない光のない場所なのだから熊に出くわす可能性も高くなるが、そのぶんオーロラにめぐりあえる可能性も高くなるので我慢することにする。なるべくなら熊などには出会いたくない。いや、絶対に出会ってはならない。
どこかの街のサインの森 |
街灯の数が少なくなるにつれて、見える星の数が増えていく。ひとつひとつ、また増えていく。まったく光のない世界にたどり着いたとき、そこに広がるのは満天の星空であった。あとはここで寝ころびながらオーロラを待つだけだ。それにしても、同じ空のはずなのに、光がないだけでこんなにも美しい世界が広がるなんて。数え切れないほどの流れ星。願うことはただひとつ、「オーロラが見られますように」それだけだ。
光も音もない世界に訪れるのは寒さ。足先は完全に冷え切ってしまっている。小刻みに足先を動かしていてもだんだんと固まっていく。寒いというより冷たい。いつになったらオーロラは現れてくれるのだろうか。
結局、オーロラの女神は微笑んではくれなかった。オーロラはそんなに甘くなかった。しかし、これも旅の醍醐味として受け止めなければならない。自然に逆らうことはできない。またこの街に訪れる楽しみができたからいいではないか。素敵な星空に出会えたのだからいいではないか。
ホワイトホースを訪れたことに後悔はない、満足している。オーロラに後ろ髪を引かれながらも星降る街に別れを告げた。
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