さわやかな笑顔で流ちょうな日本語を話す、弁護士のブライアン・ダンさん。カナダではまだ数少ない、日本語が堪能で日本の事情にも精通した弁護士として活躍中だ。トロントや東京の法律事務所を経て、今年1月から、バンクーバーの法律事務所Davis LLP(以下デイビス)にパートナーとして所属している。
まずダンさんの担当分野について教えてください。
「デイビスでは、ジャパン・グループに所属しています。私はもともと、買収・合併、投資など企業法が専門ですが、今は移民法や親族法などの分野も手がけています」
日本を専門的に扱うグループがあるのですね。
「デイビスはもともと、日本人や日系人、日系企業の顧客の割合がかなり高いのです。それは、第二次大戦中に財産を没収された日系人が、戦後補償を求めた訴訟で、デイビスが日系人サイドについたことに関係しています。日系人の弁護士を雇ったのも、多分デイビスが初めてでしょう。その後、カナダに進出した日本企業が、おそらく日系の方々の紹介で、デイビスに来られました。こうして日本や日系のお客様との関わりが自然と拡大したのです。現在、東京にもオフィスがあります」
移民法、親族法の場合は、個人の顧客ですか?
「はい。移民法では、移民申請やワークパーミットの申請などですね。親族法では、離婚がほとんどです。特に国際結婚の場合、離婚は複雑。税法などと違って日本・カナダ間には条約がなく、法律制定が進んでいないのが現状です。国際結婚が増える中で、企業法や移民法と同じく、親族法も国際化が必要だと感じますね」
企業の場合、どんな依頼が多いですか?
「日本企業の場合、カナダにおける企業買収や支店売却など。カナダの日系企業では、日本食レストランの顧客も多いですね。リースや機械の輸入からお酒のライセンス取得まで、いろいろな側面からサポートします。私は日本食が好きなので、個人的にも興味があります(笑)」
日本に比べると、北米では弁護士の存在感が大きいですね。
「日本では普通、弁護士に相談するのはもめごとが起こったときですよね。先日、虎ノ門の駅で、ある弁護士事務所の広告を見ました。そこには『ビジネスの新しい発想があれば、まず弁護士』とあったんです。革新的だなと思いましたよ。でもカナダでは、それは普通のこと。何か新しいことを始めるときは、まず弁護士に相談するんです」
ビジネスを始めるのに弁護士に相談というのは、日本人にはない発想ですね。
「ビジネスのチームの一人と考えていただければ。例えば日本食レストランを始めるとしますね。場所を決めてリース契約をして、それから弁護士のところに行くのではなく、最初から、少なくとも実際に動く前に弁護士に会った方がいい」
“弁護士慣れ”していない日本人にとっては費用も気になるところです。
「正直言って弁護士の費用は安くはありません。だからこそ、弁護士は費用をあやふやにしてはいけない。お客様も費用については、前もって弁護士に尋ねてください。私は、1回目の相談は必ず無料でお受けしています。そして見積もりをお渡しし、後はお客様に(依頼するか、しないか)ご判断いただきます。また、移民やワークパーミット申請の場合、あまり可能性が高くない方には、はっきり申し上げます」
ところで、ダンさんが弁護士になったのはなぜですか?
「弁護士は言葉の商売なんです。言葉を道具に仕事をしていると言ってもいい。そこに興味を感じました」
日本語を学んだのも、言葉への関心のひとつですか?
「そうですね。10年生からはじめた空手の先生が日本人で、私は『この人と、この人の言葉で話したい』と思ったんです。その後、UBCで日本語を専攻しました。当時は日本語を学ぶ人は珍しく、学者くらいしか道はなかった。私が大学で学んだのは夏目漱石や森鴎外などでした。学生時代、私は森鴎外が読めたのに、バンクーバー新報は読めなかった(笑)。でも、今では日本文学は趣味の一つ。川端康成全集を持っているのが自慢です(笑)」
弁護士としては、デイビスで新しい領域もカバーされています。新しいことはどうやって学ぶのでしょうか。
「自分で勉強もしますが、やはり同じ事務所の専門家から学ぶことが大きいです。一緒に仕事をしていると、わかってくる。そこは法律事務所の強みですね」
(取材 宗圓由佳)
プロフィール
オンタリオ州・ロンドン生まれ。UBCのロースクールを卒業、91年にオンタリオ州で弁護士資格を取得。現在は英国とBC州の弁護士資格も持つ。トロントの法律事務所、クリフォード・チャンスという世界最大の法律事務所の東京支店を経て、91年よりDavis LLPへ。趣味は日本文学のほか、フィットネス、ダイビング、ヨット、料理など。 |
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