SPECIAL 2006
2006年11月2日 第45号 掲載
![]() 沼田大使 パンパシフィックホテルにて |
在カナダ特命全権大使・沼田貞昭氏は、10月26日、27日の2日間、バンクーバー市内パンパシフィックホテルで開催された第6回アジア太平洋サミットに出席するため当地を訪れた。大使円卓会議においてはスピーカーも務めるなど忙しいスケジュールのなか、サミット開催中のパンパシフィックホテルで、核兵器をめぐる北朝鮮問題、日本・カナダの関係などについてお話をうかがった。
Q:国際的に注目を集めている北朝鮮の核問題についてお聞きしたいのですが、日本の対応と現在の状況を教えてください。
北朝鮮のミサイル開発の問題と核兵器開発の問題というのは、日本にとって当然大変な関心事ですね。皆さんご記憶のように1998年の8月の末、北朝鮮は弾道ミサイル「テポドン」を日本の頭越しに撃ち込み、日本海に落としました。そういうことを通じて、北朝鮮は核兵器を運搬する手段を開発してきているわけです。そして、北朝鮮の持っているミサイルの中にはノドンと呼ばれるミサイルがありますが、これの射程距離は、日本のほぼ全域に届くことが分かっています。このミサイルを北朝鮮はすでに配備しているわけです。そういう状況のもとで、今年7月に北朝鮮は、射程距離が短いミサイルから、ノドンを含め、それからテポドンまで全部発射するという実験を行ないました。これは日本にとって非常に警戒すべきことであり、日本は7月の時点で北朝鮮に対して厳しい態度で臨むべきだという決議案を国連安保理へ提案し、結果的に決議案は採択されました。
加えて今度、10月8日に北朝鮮は核実験を実施したという声明を発表しました。10月8日という日は、まさに安倍総理大臣が韓国を訪問されている真っ最中だったわけです。北朝鮮はその運搬手段としてのミサイルをずっと開発してきて、その上に核兵器そのものを持つようになったということは、日本の安全にとって非常に重大な脅威ですから、日本としては極めて深刻に受け止めざるを得ません。
この問題について日本が主張しているのは、日本の安全や北東アジアの安全にとって重大な脅威であるばかりでなくて、国際社会全体にとっての重大な挑戦であるということです。なぜかと言うと、核兵器が世界に広まることを防ぐために、核兵器不拡散条約(NPT)のもとに国際的な体制がありますが、北朝鮮のこういった動きというものは、このNPTのもとにおける国際的な体制に対する重大な挑戦でもあるからなのですね。これは決して受け入れられることではないということを日本としても感じておりますし、日本だけではなくて、中国も韓国も米国もロシアも、皆同じように感じているわけです。そういう状況のもとで国連安保理が新たな決議を今回採択し、北朝鮮に対していろいろな制裁、措置を取っていくということが決められたのです。現在は安保理の決議を確実に実行していくためにどうしていくかということを、緊密に協議しつつあるという状況です。
Q:カナダは北朝鮮問題をどのように捉えているのでしょうか。
カナダも日本のこの重大な懸念というものを共有しています。日本の立場も理解していますし、それを支持するということを明らかにしています。ですから、カナダとしても、先に説明しました安保理の決議を実行していくために、どういった措置を取ったらよいのかということを真剣に検討しているというのが今の状況です。
Q:ところで、国連は韓国外相の潘氏を次期国連事務総長にアナン氏の後任として任命しましたが、どのように思われますか。
国連事務総長は、さまざまな国の方が今まで就任されていますけれども、アジアから最後になられたのがウ・タント氏(ビルマ=現ミャンマー、1961〜71年)でした。そしてウ・タント氏が辞められてから、35年たっています。その間アジアからは誰も事務総長に選出されなかったというのは、私たちにとってやはり残念なことです。今回、日本のお隣の国である韓国の方が事務総長になられるわけですが、アジアからもそろそろ事務総長が出て然るべきだと私たちは思っていました。潘基文氏は、韓国の外務大臣として非常にベテランの外交官として有能な方だと思いますし、日本でもよく知られている方です。ご活躍に期待しております。
Q:次に、ブリティッシュ・コロンビア州のゴードン・キャンベル首相が今月、貿易使節団を連れて日本を含めるアジア諸国を訪れることについてですが、この件についてどのように思われますか。
まず、カナダと日本との関係は、今、ここで開催されているアジア太平洋サミットでもいろいろと議論されていますけれども、カナダと東アジアの関係は、もっともっと緊密になってもよい関係だと思うんですね。カナダに対しても、東アジアにもっと関心を払ってもらいたいという感じがあります。日本との関係で言えば、カナダの連邦の政権が自由党政権から保守党政権にかわり、ハーパー首相になってから、今年の6月末に当時の小泉総理大臣がオタワを訪問し、ハーパー首相と首脳会談をされました。このことによって、新しいカナダの政権との日加関係は、良いスタートが切られたと思います。そして今度、安倍総理大臣になりましたが、ただ、日本の場合には政権が替わったからと言って、それほど外交が変わるわけではなく、引き続き日加関係を重視していくということには変わりがないわけですから、こういった流れのなかで、日加の関係を一層緊密にしていこうという気持ちが両方にあるわけですね。
ブリティッシュ・コロンビア州はそのなかで、やはり、日本とカナダの経済関係を考えると非常に重要な位置を占めています。そういう意味でブリティッシュ・コロンビア州のキャンベル首相が日本に行かれるというのは、非常に重要なことだと思います。キャンベル首相の関心は、例えば、木材の輸出とか、そういうことが考えられると思います。それから、2010年にはバンクーバー、ウィスラーで冬季オリンピックが開催されますが、そういう観点から言えば、日本の長野オリンピックの経験からも学びたいということ、あるいは愛知万博からの経験なんかもブリティッシュ・コロンビア州にとって役に立つのではないかという話もあるようですから、そういったいろいろな観点から有益な実りある話し合いが行なわれるのではないかと思います。
そして、日本とカナダの全体という関係で考えますと、2008年は日加の外交関係が樹立されてから80周年になります。ですから、その節目に向けて、日加のいろいろな交流を深めていくためにどうしたらいいかと、これからいろいろと考えていったら良いかなと思っています。
Q:最後になりますが、沼田大使には2005年の春に一度インタビューのお時間を頂戴し、これまでの経歴から個人的な趣味までご紹介させていただきました。今回アジア太平洋サミットのHPで紹介されている大使のプロフィールの趣味に関して、フライ・フィッシングとスキーと書かれてありますが、カナダを代表するスポーツをどのようにエンジョイされているかお聞かせください。
オタワの周辺では、フライ・フィッシングをする機会は仲々ないのですが、今までに二度ほどモンテベロの湖にマス釣りに行きました。また、この前の冬から、妻と共にクロス・カントリー・スキーを始めたので、今度の冬も挑戦しようと思っています。
それから、ブリティッシュ・コロンビア州を訪れたのは、今回を入れて7回目になると思います。9月にサスカッチュワン州とマニトバ州に行きましたので、これでカナダ全
州を一応まわりました。後は準州ですね。ブリティッシュ・コロンビア州にはまたお邪魔する機会があるかと思いますが、それを楽しみにしております。
(取材 ダウ美智子)
| プロフィール: 沼田 貞昭(ぬまた さだあき) 在カナダ特命全権大使 1943:兵庫県に生まれる 1966:東京大学法学部第三類卒業後、外務省入省 1972〜1976:北米局北米第一課 1984:北米局安全保障課長 1985:北米局北米第一課長 1989:在オーストラリア日本国大使館・公使 1994:在英国日本国大使館・特命全権公使 1998:外務報道官 2000:在パキスタン特命全権大使 2003:沖縄担当大使 2004・12月〜:在カナダ特命全権大使 |
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