SPECIAL 2006

2006年7月13日 第29号 掲載


サーモンフェスティバル開催
〜異国の地で日本文化に見入る〜


一体となり大和魂をみせる

若い女の子による「南中ソウラン」披露

想像しながら楽しめた紙人形

本物かと目を疑うパンフラ ワーの作品

美しい日本人形は 「愛」そのもの

 昔から日本人漁師移民の地として広く知られているリッチモンドのスティーブストンで1日、サーモンフェスティバルが盛大に開催された。カナダデーに行われるイベントの一つとして長い歴史を持つ同フェスティバルは今年で61回目を迎え、お祭り会場の中心であるスティーブストン・コミュニティーセンターの一角は多くの観衆で賑わった。

 毎年恒例となるサーモンフェスティバルの目玉「バーベキューサーモン」は総1500ポンドのサーモンを巨大な焼き網の上で豪快に焼いたもので長蛇の列をつくった。また今年は豆腐でできたケーキや飲み物、料理などを売るお店があり、大きな話題を集めた。その他にもクラフト販売や屋外に設置されたステージで行われるコンサートなど見所が多いこのフェスティバル。それらのイベントの中でも回を重ねるごとに魅力を増していくものの一つが「日本文化紹介」である。スティーブストンには昔から多くの日系人が在住し、異国の地で生きるからこそ日本の文化の良さを再認識し、様々な文化継承の会を創設し活動している。日本人町として知られるスティーブストンで生きる日本人として、自国の文化に対するそれぞれの想いが、人々の心を魅了した。

「粋にいきたい」御神輿にかける想い
 サーモンフェスティバルのオープニングを華やかに飾るのは、毎年100を超える参加団体によるパレードである。ゲーリー・ポイント・パークからレールウェイまで1.6キロを衣装で着飾った人や車が行進する。今年で4回目の参加となる「晩香坡(バンクーバー)神輿の会『楽一』」は前週の土曜日に御神輿担ぎの練習や声だしの練習をするなど、お祭りにかける想いは大きい。楽一会の会長であり、総まとめ役の山本実氏は「今日は粋にいきたいね!」と元気良く言っていた。また親子3代で参加している最年長の山口氏は「日本人はみんな心のどこかにお祭り好きという気持ちを持っているんだ。今日は心が騒ぐよ。楽しみたいね」と笑顔で語ってくれた。

 当日集まった担ぎ手は120人を越える。昨年のTシャツと変わって、今年は白のノースリーブ、表に黒で晩香坡、裏には赤で楽一と書かれている。なんとも「いき」のいい格好である。お神輿自体も20年の歴史があり老朽化したため、枠や土台を直し、金箔を張りなおした。土台には「楽一」という新しい金の文字が輝いている。変化したのは御神輿や服装だけではない。今年の担ぎ手は若者が多く集まったと実行委員長の田中衛吉氏は言う。真新しい御神輿を先導するのは「より祭りを盛り上げたい」という若者の想いにより行われた「南中ソウラン」の踊りである。これは日本で人気のあるTV番組「金八先生」の中で踊られていたものである。このパレードの為に前もって練習していたという。昨年にはなかった踊りの披露に観衆の日本文化への興味は大きくなった。

「御神輿を揺さぶることによって神様にエネルギーを与えている。そして神様から我々もエネルギーを得る。今日はそのエネルギーを観衆のみなさんに与えたい!」と田中さんは威勢よく言った。

 500キロもある御神輿に人が前と後ろに乗っている。担ぐだけでも大変なその御神輿を担ぎ手は紺のハッピを着た実行委員の合図に合わせて力一杯揺さぶる。炎天下の中、水を浴びながら「ソイヤ、ソイヤ」の掛け声と共に勇ましく街を練り歩く。彼らの「粋」の良さに観衆からは「最高!」や「なんてエネルギッシュなんだ!見ているだけで元気になったよ」、「日本文化に興味を持った」との声が。楽一の御神輿にかけた想いはしっかり観衆に伝わった。

作品は「愛」のシンボル
 「人形は愛そのものです」日本人形の会の先生として27年にわたり多くの作品を展示してきた加藤さんは言う。「人形はみんなの心を和ませてくれるもの、だから手塩に掛けて、愛を込めて作るんですよ」

 同フェスティバルで今年は日本文化紹介の為に2つのビルディングで展示・実演が行われていた。この日本人形の展示は文化センター中で行われ、人々は日本人形の持つ魅力的な表情と色鮮やかな衣装(着物)を観賞し心を和ませていた。隣のブースでは紙人形が展示された。鮮やかな色紙で作られた着物を纏った顔の10倍あるスラリとした胴体を持つ人形の小さい顔には目も鼻も口もない。つまり観賞する人の心によって表情が異なって見えるのである。観衆は人形の持つ歴史や感情を想像することでより楽しく観賞していた。

 折紙のブースでは林さんを中心に折り紙の実演が行われ、多くの子供が詰めかけた。みんなで輪になって「朝顔」を作り、折りあがった朝顔の花を壁に飾りつけた。日本文化の傑作とも言える「折紙」を楽しみながらも、新たな大傑作(みんなの作品の朝顔を集めたもの)を作り楽しんでいた。大傑作といえばパンフラワーの展示も見事だった。パンのみみを取り除いたものにクラフトのグルーを入れて練り、出来上がったものに油絵の具で色付けをする。本物ではないかと目を疑うほどの出来栄えであった。

 ロビーにはスティーブストンの日本語学校の生徒が作った七夕の飾りが展示された。シニアクラフトの展示では動物の人形がついたかわいらしい磁石や紙で作った置物の傘、ビーズで作った鍋置きなど多種多様にわたる作品が並べられ、売られていた。シニアクラフトのメンバーはその場でもみんなで輪になっておしゃべりをしながら作品をつくるといったような楽しい一日を過ごしていた。売り上げの一部は文化センターに寄付され、そのお金は新たな日本文化紹介に向けた活動の資金となる。すべてのブースで、多くの作品は手塩を掛けて作られていて、「愛」があふれているものばかりであった。

 剣道場では生け花、ポトリー、書道、盆栽などといった日本文化を象徴する多くのものが展示された。またミニチュアのフィッシングボートも多く展示され、漁師移民としての歴史を物語る。更に今年は日本から宗家木村峰翠先生、家元木村峰与先生をはじめとする木村流大正琴のグループ50名による日加親善特別演奏会が行われ、大正琴の持つ流麗な音色に多くの観衆が魅了された。

 道場では柔道をはじめ剣道、空手といった日本武道の実演や伝統舞踊の盆踊りが行われ多くの人々の目を釘付けにした。

日本文化の心〜サーモンフェスティバルから学ぶ
 「どこからそのアイディアが浮かんだの?」展示や実演を見て、毎年そう思わずにはいられないと20年以上もこのフェスティバルで日本文化紹介の総まとめ役を担当している平野千代子さんは言う。どの文化会も展示物や実演が観衆の目を引き付け、日本文化に興味を抱いてもらうために様々な工夫を凝らしている。完成した折紙の朝顔を壁に貼り付けて新たな作品を生み出すというアイディアはその一例である。その他にも日本の作品を他文化と融合させて新たな作品を生み出すこともある。生け花や盆栽展示では、他国のスタイルの陶器を使用したものなども見られ、日本文化でありながらも、外国の人の嗜好にあった作品であった。楽一の中でも最近のTV番組の中での踊りを取り入れるということがあったように、時代と共に日本文化の表現力は変化する。その変容とは文化の融合かもしれないし、新古の融合かもしれない。しかし日本文化を大切に思う気持ちは変わらない。

 「毎年コメントノートを展示場に置いているのです。ノートには毎年この日本文化紹介イベントを楽しみにしているという文や日本文化の素晴らしさを称える言葉などあり大変よい励みになっています。時にはアイディアやアドバイスも頂いているんですよ。文化を伝えようとする会のみなさんや、文化に関心を抱いて頂いたみなさんに、そしてお手伝い役としてこの素晴らしい文化を伝えることができることに大変感謝をしています」と平野さんは話してくれた。このサーモンフェスティバルにおける日本文化紹介は20年以上にわたる長い歴史を持ち、多くの人々によって支えられ、愛され、ここまで大きなイベントになった。

 「日本文化を大切に」そういうことは簡単かもしれないが、その文化を後世へと伝えるには一人の力では出来ない。今回のフェスティバルでは日本文化会の人々、日本から文化紹介の為来加した大正琴グループ、日本文化に触れようと訪れた人々、御神輿担ぎなどに参加した人々、その他多くの人々が励ましあい、感謝しあい、協力し、一体となることで日本文化の作品の魅力を伝え、更には作品には表すことの出来ない「日本文化の心」をも表現し、文化継承の大切な一歩を築き上げた。是非とも日本文化の素晴らしさを再認識し、人々と協力し合う「和」の心を持ちながらこの素晴らしい文化を伝えていって欲しい。

(取材 村岡清佳)