SPECIAL 2006
2006年6月29日 第27号 掲載
![]() 明治18年に建てられた冨田屋を継承する田中さん |
![]() 当日は着付けのコツを伝授 |
京都で築120年を越える西陣織の呉服商「冨田屋」を営む傍ら、和の文化と町屋暮らしの伝承に精力的な活動を行う田中峰子さんが、7月15日(土)1時からウエストバンクーバー・ミュージアムできものの着付けのデモンストレーションを行う。当日は会場にきものが展示されるなか、田中さんがきものを上手に着るコツと、代々受け継がれてきた暮らしの精神を紹介する。その後、茶道・遠州流のランメル幸さんによる野立てが博物館の前庭で田中さんを囲んで行われ、参加者にお茶が振舞われる予定である。
町屋の伝統の精神を受け継いで
室町時代より織物の町として栄えた京都・今出川大宮。その地に西陣の呉服商である田中屋「(屋号)冨田屋(とんだや)」がある。1885年建立のその町屋(商家)には、3つの蔵に6つの坪庭、奥には茶室があり、離れ座敷ではかつて能が舞われていたという。その家を継ぐ田中家の
代目が田中峰子さんである。受け継がれているのは家だけではない。毎朝、炊き立てのご飯と神水と呼ぶ井戸水を、家に祭っている神々様にお供えするといった神々と共に暮らす精神をも田中さんは引き継いでいる。
有形文化財の町屋から和の文化を一般へ
田中さんは「女性がきものを着て生活する美しさ、その所作へのこだわりや代々受け継がれる精神が、生活をより上質にする」という考えから、文化活動を展開。1994年にきもの文化の継承のための「古都の風・和道会きものマナースクール」を開設し、1999年には「冨田屋」が国から有形文化財の指定を受けたことを機に、町屋の一般公開に踏み切った。見学者には単に建造物としての町屋を見る機会を提供するだけでなく、そこに代々伝わる暮らしぶりを味わってもらおうと体験型の会を開いている。
来加前の田中峰子さんに話を伺った
ー効率の良さ、便利さを求める生活のなかで、しきたりを守ることは容易でないことだとお察しします。先代であるご両親からどのような形で指導を受けてこられたのでしょうか。
母は、黙々と自然に大変な神仏事を一人でこなしており、(私は)強制されなかったことが良かったのではないでしょうか。人として、母が出来なくなってきたことで手伝う気持ちや、母の一生懸命な姿に報いてあげようと思う気持ちが芽生えてきたのは当たり前かもしれませんね。
ー田中さんご自身がその精神を貫くなかで、紆余曲折などはありましたか。
もちろんありましたよ。伝統産業は毎年売り上げが激減。「もう仕事なんていや」と何度思ったかわかりません。 しかし、日本の暮らし文化が今消えようとしているなかで、「誰かが守り伝えていかなければならない」という責任感が、続け伝えていく決意となりました。また「美しいきものを皆さんに知ってほしい」と思う気持ち、そして「日本の昔の暮らしを見知ることによって、日本人の心を思い出してほしい」という気持ちが自分を後押ししてきました。
―今回のカナダでのイベントに寄せる気持ちをお聞かせください。
我が家に外国の方々もたくさん体験に来られます。皆さん本当に喜んで着物を絶賛してくださいます。そうした素晴らしい芸術、日本文化を世界に…これが今の私の夢です。
「これを機にどんどん世界各地できものの良さを伝えられたら」と語る田中さん。京都から運ばれる和の心を、歴史的な建造物であるウエストバンクーバーの博物館で味わうというこの機会が、多くの人に生かされることを期待したい。
(取材 平野香利)
Wearing Tradition-Kimono- |
![]() West Vancouver Museum & Archives |
田中峰子さんプロフィール |