SPECIAL 2006

2006年6月22日 第26号 掲載


カナダの年金制度
投資アドバイザー  島川大輔氏


投資アドバイザーの島川大輔さん

セミナー参加者

  カナダの年金制度についてのセミナーが6月8日、リステル・バンクーバーホテルで行われた。会場にはカナダに長く住む日本人/日系人の参加者が多く、熱心に耳を傾けていた。
              

公的年金・私的年金
 カナダの年金は大きく分けて、公的年金と私的年金とに分けられる。公的年金には例えばカナダ・ペンション・プラン(CPP-Canada Pension Plan)や、オールドエイジ・セキュリティ(OAS-Old Age Security)がある。また、私的年金には、企業年金、年齢に関係なく、収入により入る金額が異なるRRSP(Resisted Retirement Savings Plan)、一般的に69歳でRRSPから変えるRRIF(Registered Retirement Income Fund)、さらに事業主や、医者、弁護士などプロフェッショナルと呼ばれる職業のための個人年金(IPP-Individual Pension Plan)がある。今回は主にCPPについて詳しい説明がされた。


CPP-Canada Pension Plan

<積立金>
 積立金を払い込んだ人だけがもらえる年金。雇用主、本人が半々で負担する場合と、本人が事業主の場合は、全額本人負担となる。積立金は収入を基準に計算される。例えば2005年の場合、年間収入が4万1100ドルの方の年間積立金は約1800ドル。しかし、これが上限で、収入がこれを超しても積立金は増えない。集めたお金はThe CPP Investment Boardが運用。支払額は払い込んだ額と年齢により決まってくるが、この金額は4、5年に一度送られてくる、Statement of Contributionで参照でき、またウェブサイト(http://www.sdc.gc.ca/asp/gateway.asp?hr=en/isp/cpp/soc/proceed.shtml&hs=cpr)でも確認することができる。

 一時仕事から離れていたり、育児のために収入が0だったり、極端に低かったりする年を積立期間の最高15%まで外すことができ、これを Drop-out provisions といい、その期間は最高額を入れたと見なされる。配偶者、コモンローパートナーと離婚、別居をした場合、積立金を半分に分けることができる(Credit splitting)。CPP の満額をもらうためには 40 年間最高金額を入れなければならず、2006年の最高支給額は月額844.58ドル、年間1万134.96ドル。

 2005年の平均支給額は月額 463.95ドル、年間 5567.40ドルであった。支給額は毎年年初インフレ調整され増加するが、デフレになっても支給額が減ることはない。支給額は 65歳での支給開始をもとに計算されているが、早くて60 歳から支給開始可能である。早くもらい始めるほど額は少なくなり、逆に長く待つほど多くなる。その計算のしかたは、1カ月につき、0.5%月額が変わってくるというものである。例えば、65 歳で月額 600ドルの CPP 年金をもらえる予定の人が、60 歳で支給開始の場合、5年×12カ月×−0.5%=−30%、すなわち月額は420ドルに減る。70歳まで待った場合、月額は逆に30%増え、780ドルとなる。70歳を超えて待つことはできない。

<受給資格>

CPPをもらえる資格のある人は、過去に1回でもCPP 積立金を払い込んで、しかも65歳になった人、あるいは 60〜64歳で CPP 支給開始の前月末までに仕事を辞めた人、あるいは 60〜64歳で月収が CPP の最高月額(2006年の場合845ドル)以下の人である。

<申請>
CPP は 65 歳になったら自動的にもらえるわけではなく申告しなければならない。申請書は最寄りの HRSDC/Service Canada 事務所でもらうか、電話(1-800-277-9914)をして送ってもらう、あるいはウェブサイトwww.hrdc.gc.ca/isp からもダウンロードができる。申請時、出生証明が必要で、日本で生まれた場合、戸籍謄本あるいは戸籍抄本を提出するが、翻訳の必要はない。

<申請先>
 申請時、海外に住んでいる場合、最後に住んだ州により申請先が決まる。QPP (Quebec Pension Plan) と CPP は一緒に考慮される。両方に払い込んだ人は申請時にどこに住んでいたかにより申請先が決まる。申請は支給開始希望月の1年前から可能。追加書類が必要なことが多いので、余裕をもって少なくとも半年前には申請したほうがよい。

<障害年金受給者の場合>
 すでに障害年金(Disability Pension)をもらっている人は、65 歳で自動的に CPP に変わる。これは金額が下がるため、変更の申請をする必要はない。CPP 年金支給開始後はいくらでも仕事ができ、収入があってもその後の CPP に影響はない。

<支給>
 支給は一般的にカナダドルの小切手を世界中どこにでも送ってくれるが、居住先の国が現地通貨で送ってくれる。カナダ・米国なら、銀行口座へ直接入金もでき、米国の場合は自動的に米ドルに交換してくれる。日本へ送る場合は 25% の Withholding Tax (源泉徴収税)が引かれた後、日本円の小切手で送られてくるが、日本での銀行手数料を考慮し、年1回か2回にまとめて送ってもらう様に申請することも可能(CPP 年金は課税対象となる)。

CPP は分けることもでき、例えば会社年金や RRIF のため、一方の配偶者の収入が他方より多い場合、高い方の CPP を半分に分けて所得税を下げるため、CPP 年金を夫と妻(あるいはコモンロー)で半々に分けることができる。その際、妻が過去に CPP 積立金を払い込んでなくてもよい。


The Agreement on Social Security between Japan and Canada (日加間社会保障合意)

 2006年2月15日に調印され、2007年後半から施行が予定されている日本とカナダ間の社会保障の合意では、Disability Benefit (障害給付金)、Survivor Benefit (遺族年金)、Death Benefit (死亡給付金)に関し、最低積立期間不足の場合、日本での国民年金などの積立期間が考慮される。カナダの OAS (老齢年金)は最低10年カナダに住まないと受給資格がなく、20 年住まないと海外へ移り住んだ場合、半年で支給が止まってしまうが、期間不足の場合、日本での積立期間が考慮される。

 日本の老齢年金を受給するためには、最低 25 年間積立金を支払う必要があるが、期間不足の場合、カナダでの CPP 積立金支払い期間も考慮される。但し、カナダから支給されるのはカナダへ支払った額の相当分のみ。


OAS - Old Age Security(老齢年金)

<受給資格>
OAS をもらえる資格はカナダに住んでいる65歳以上で、市民権または移住権保有者。例えば、18歳になったころから10年間以上カナダに住んだことのある人が、祖国へ帰り、リタイア後にカナダへ移住した場合でも10年経てば OAS がもらえる。

 国外に住んでいる65歳以上の人の場合、カナダを出た時点で市民権あるいは移住権を保有しており、18歳になった後20年以上カナダに住んでいれば受給資格がある。この年金は CPP と違い、積立金を払い込む必要はなく、また申請時に収入があってもかまわない。20年以上すでにカナダに住んだことがあり、OAS 受給後、国外へ移った場合は一生 OASを受け取ることができるが、その場合、25%の Withholding Tax (源泉徴収税)を引かれた後の額が小切手で送られる。カナダでの住居期間が20年以下の場合は、カナダを出て6カ月で支給が止まる。

<支給額>

 支給額はカナダに何年住んだかにより決まり、例えば18 歳になった後40年住めば満額もらえる。また、1977年7月1日以前に移住した人は、他の条件を満たせば満額もらえる。2004年の満額は月額462.47ドル。40年に満たない場合はその分(1年につき40分の1)減額される。

 仕事で海外に住んだ期間は、カナダに住んでいたとみなされる。支給開始後はその後何年カナダに住んでも支給額に影響はない。また四半期ごとにインフレ調整がされる。OAS は課税対象となる。年間収入が一定額を超すと、OAS は減額される。年収6万2144ドルで減額が始まり、9万4148ドルでOAS はゼロになる。支給されるには、HRSDC に申請しなければならず、申請が遅れた場合は、支給は11カ月までしか遡らないので注意が必要だ。

 その他、Disability Benefit (障害給付金)、Survivor Benefit (遺族年金)、Death Benefit(死亡給付金)、Allowance for the survivor (低所得シニアのための年金補助)の内容が話され、日本とカナダの年金を考える人にとって大変ためになるセミナーであった。詳しくは、島川さんへ。

(取材 上田由美)

投資アドバイザー 島川大輔氏
1955年 熊本生まれ。横浜国立大学卒。
1981年 カナダ移住。
1988年から4年間、カナダ大和証券(トロント)にて、日本株機関投資家営業(カナダの生命保険会社、ミューチュアルファンド会社、年金運用の投資顧問会社等を担当)を経て、1992年BMO Nesbitt Burns (ビーモ ネスビット バーンズ)に移る。7年間のカナダ株機関投資家営業(東京 ニューヨークの日本の投資顧問会社、 生命保険会社、 投資信託会社などを担当)後、1999年個人投資家部門に移る。
株式投資、債権投資、ミューチュアルファンドを扱える免許の他、保険の免許も保有。

BMO Nesbitt Burns
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