SPECIAL 2006

2006年6月15日 第25号 掲載


世界経済を見極める 企友会主催
2006年度特別講演会
テーマは「JETROバンクーバー50年の軌跡とこれから」および、
「資源大国カナダと日本」


講演会のようす

JETROの中島淳一氏

JOGMECの中塚正紀氏

 企友会の「2006年度特別講演会」が5月18日に、ロブソンストリート沿いにあるホテル・リステルバンク−バーで開催された。

 今回の講演者は『日本貿易振興機構(JETRO)』のバンクーバー事務所長・中島淳一氏と、『独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)』のバンクーバー事務所長・中塚正紀氏。JETROの中島さんは「JETROバンクーバー50年の軌跡とこれから」というテーマで講演し、JOGMECの中塚さんの演題は「資源大国カナダと日本」というものだった。会場に訪れた人々は、世界情勢と密接に関係がある、「貿易」や「資源」の話に興味深気に聞き入っていた。


《JETROの中島さんの講演》
■日本とカナダの貿易・50年の歴史
 午後6時半から始まった講演会は、まず『日本貿易振興機構(JTORO)』のバンクーバー事務所長・中島淳一さんが演壇に立った。

 中島さんは、日本とカナダの貿易・投資の歴史をかいつまんで簡単に説明。

 1950年代に始まった貿易は、52年のサンフランシスコ講和条約後、活発に。当時はカナダから日本へは鉄鉱石、日本からカナダへは玩具や雑貨などが輸出入されていたそうだ。

 60年代にはカナダからは小麦、日本からは鉄鋼・自動車・織物などが輸出されるようになり、そして80年代には日本がアメリカにつぎ第2の輸出相手先になるまでに成長する。90年代には製造業・ホテル投資が活発になるが、 年代に入りアメリカ・メキシコ・カナダの間で「自由貿易協定」が締結され、同国同士の結びつきが強くなると、逆にカナダと日本間の関係は薄くなっていったという。

■BC州からの輸出の内容は昔と変わらず 
  現在の世界の流れとしては、どんどんと貿易圏が構築されているという。代表的なのは「NAFTA(北米自由貿易協定/1994〜)」であり、それに対しては「東アジア経済統合」がある。

 BC州と日本の関係で見れば、2005年度のBC州からの輸入は、31%が木材、そして18%が石炭、銅鉱石などが18%などとなっており、木材・鉱石類が輸入のメインとなっているのは50年前とさほど変わらない、と中島氏さんは解説した。

■日本経済を活性化させるジェトロの役割
 ここで中島さんはジェトロの事業内容を説明。その役割の一つとして、「海外企業を誘致し、日本経済活性化への手助けをする」ことを挙げた。

 「海外企業を日本に招くことで、これまでにはなかった新しいビジネスモデルを取り入れ、いきずまった経済を活性化することができます」と中島さん。

 成功例として日産とルノーなどを挙げた。

 対日ビジネス促進事業の重点分野はやはり、ITや環境、バイオなどのハイテクになると中島さんは述べ、ジェトロ事業としてカナダ政府と共催の「日加ビジネスセミナー」や、米国ビジネスイベントでの日加企業のマッチング、日本への招聘、個別のサポートなどを行っているという。

 日本からバンクーバーへの輸出促進も行っていて、最近では北米で人気の「日本酒」(プレミアムサケ)や「抹茶」などを紹介している。

■ジェトロのこれから 
 中島さんは最後に、ジェトロのこれからと、バンクーバー、日加関係のこれからの展望について話を進めた。

 ジェトロの事業目的はなんといっても日本経済の活性化。そのための対日投資支援、中小企業の輸出支援を行っていく。そして東アジア経済圏の確立支援―例えば知的著作権の規制の整備―も視野に含めている。そしてなにより「顧客の立場に立ったサービス」が求められているとも。

 バンクーバーのこれからのキーワードとしては、環太平洋の「ゲートウェイ」としての役割。そして鉱物、木材などの資源に代表される「エネルギー」の強み。それから2010年のオリンピックに代表される「観光」だという。特にリゾート、レストラン、ホテル、シニアハウスなどの「ホスピタリティ」の分野でバンクーバーは強みを持っており、日本はここから学ぶことも多いと中島さんは語った。

 またコスモポリタンシティとしてのバンクーバーでは国際感覚を持つ人材を育成するのに適しており、ジェトロではバンクーバーの学生をインターンシップとして日本に派遣する事業も行っているという。

《JOGMECの中塚さんの講演》

■エネルギー・金属鉱物資源をどう安定供給するか
 まずは日本のエネルギー事情の説明から。日本は資源に乏しく、銅や石油、天然ガスなどの資源はほぼ輸入に頼っているのが現状。金属鉱物資源についても日本は大消費国。

 日本経済のライフラインになっているエネルギー、あるいは金属資源を、安定的に供給していくことが日本の経済発展につながる、と中塚さん。
 そのための政策的支援を行なっているのが『独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)』であると説明した。

■「JOGMEC」の4つの仕事

 具体的にどのような仕事かといえば、第1に企業の探鉱活動にかかわるリスクマネー(資金)の提供、地質調査の実施、情報の提供。

 第2は石油・レアメタルの備蓄。これはオイルショックの経験をいかしたもので、石油では国の備蓄で91日分(5000万キロリットル強)の管理をJOGMECが行っている。第3としては、リスクの伴う探鉱開発に新たな技術を導入するための開発。第4は休廃止鉱山からの鉱害を防止するための資金や技術サポートを、企業や地方公共団体に提供している。

■世界の市場に構造変化を もたらした「中国」
 ここで中塚さんは、「原油価格」が国際情勢や資源災害といったものに直接影響を受けることを改めてレクチャーし、最近では中国経済の成長が大きな影響を与えていることを、銅の需要と価格の変化の表を使って具体的に説明。それを『構造の変化』と呼んでいることにふれた。

 「西側諸国の景気指標と銅価格はほとんど連動していたのに、2004年後半から景気が後退しても銅の価格は下がらずにそのまま上昇を続けました。この現象を関係者は『構造変化が起こった』と分析しています」

 「どういうことかと言いますと、銅需要の推移を見てください。2000年から2004年まで世界全体で2.2%伸びていますが、西側諸国の合計ではむしろ減っている。じゃぁ世界全体の需要の伸びを支えたのはどこか。中国なんですね。中国ではこの時期に銅需要は年平均 %で増加しています」と中塚さん。

 中国経済成長とともに銅需要が拡大。一方で供給が対応できず、価格の上昇に繋がった。これまではアメリカを中心とする西側諸国の経済が銅の価格を決めてきたのに、中国を中心にした東アジアの需要状況が価格を決めるように変化しており、これを『構造変化』と呼んでいると中塚さんは解説した。

■埋蔵量が増えない中、どんどん資源を食べている世界の状況

 ここで、中塚さんは世界の中堅メジャー鉱山会社が、どんどんと大きな会社に買収されている状況を解説。

 「世界で需要が増え、各鉱山会社では生産量を増やしています。一方でそれは鉱山会社の埋蔵量を食いつぶすことにもなる。したがって鉱山会社では埋蔵量を拡大するために新たに『探鉱投資』をしなければなりませんがそれは非常にリスクが高い。そこで企業買収が出てくる。優良企業を必要な資金で買ってしまえば、その分、埋蔵量・生産量がついてくる」。だが、そこには大きな問題が隠されているという。

 中塚さんは「企業買収は非常に重要な企業戦略ですが、世界全体の埋蔵量は増えない。どんどん需要は増えているのに…。埋蔵量全体を増やさなければ、我々の将来の資源を今消費していくことになる」と指摘した。

■今後の金属市場
 中国の経済は以前として好調で、インドも順調に経済発展し需要が伸びている中、供給体制はなかなか追いついてきていない。また、政治的に不安定な資源国の地政学的な問題も市場価格に影響してくると予想される。

 ここで、中塚さんは今後の課題として、「確実に生産に移行していくための供給体制の確立。埋蔵量の確保―メジャークラスの新しい鉱床の発見。不足している鉱業労働者の確保(価格低迷時代に人を雇わなかったため)」などを挙げた。

■資源のない日本の課題

 経済発展をとげる中国は、その資金をもとに国外の探鉱投資を推進している(アルバータ州のオイルサンドもその一つ)。そんな中、日本はこれまでに評価の高かった「日本方式」(少ない投資で、確実に原材料を確保する)から脱却し、構造変化に対応した新たな戦略展開への移行が求められている。

 「それはプロジェクトの初期の段階から投資をし、そして確実な原材料を確保する『初期探鉱への投資』です」と中塚さん。

 現在、日本企業の「初期探鉱への投資」活動としては、チリやペルーで新規プロジェクトへ参入、またアジア地域での新たな探鉱などが挙げられる。もちろん安定的に資源を供給できるカナダ資源への参入活動も活性化しているという。

(取材 吉川友恵)