SPECIAL 2006

2006年6月8日 第24号 掲載


バンクーバーから平和を
世界平和フォーラム2006
6月23日から開催


鹿毛達雄さん

  大規模な平和・反戦のイベント、「世界平和フォーラム2006」(World Peace Forum 2006)が、開催を間近に控えている。多様なプレゼンテーターによるワークショップから、参加しやすいピースウォークやアートイベントまで、膨大な数のプログラムが用意され、平和について考えるチャンスとなりそうだ。そのあらましについて、世界平和フォーラム協会のメンバーである鹿毛達雄さんに、お話を伺った。

都市とコミュニティ
 世界平和フォーラムは、6月23日(金)〜28日(水)まで、UBCキャンパスを中心に開催される。「バンクーバーは、1983年に非核宣言を行うなど、20年ほど前から平和・反戦運動の中心地になってきました。イラク戦争開始のときには反対デモも行われています。そんなバンクーバーで、2〜3年前から、コミュニティの平和・反戦に関心を寄せるグループが集まって、大規模な平和集会を開こうという話がでてきたのです」と鹿毛さん。

 テーマのひとつは、都市とコミュニティ内の平和・反戦グループの協力だ。「世界の人口の約半分が都市に住んでいる今、戦争が起こった場合、影響を受けるのは都市です。それなのに、都市に住む住民が、平和や戦争に対して、何もしないのはおかしい。また都市(自治体)も、道路造りやごみ集めだけをしていていいのか、と思われるのです」と鹿毛さん。今回のフォーラム運営も、主体はNGO中心の世界平和フォーラム協会だが、バンクーバー市も会場提供などで協力しているそうだ。

 フォーラムは、総会、テーマ別の会議、 ワークショップ、討論会、イベントなど膨大な数のプログラムで構成される。原則的には、テーマや地域ごとの会議が、それぞれ多彩なプログラムを企画・開催することになっている。例えば「戦争に対する女性と女性に対する戦争 Women Against War & War Against Women」「持続可能性と環境 Sustainability & the Environment」「平和に向けた芸術と文化 Arts & Culture
for Peace」「平和教育〜平和と公教育 Peace Education―Peace and Public Education」「アジア」「ラテンアメリカ」「アフリカ」「中東」などの会議に分かれている。

多角的に見つめる「アジアの平和」
 日本もテーマとなる「アジア地域会議」のプログラムは、25日にUBCで行われる。「朝鮮半島統一問題、北朝鮮の核問題など、アジアは平和問題に直接関係している。日本、韓国、中国などアジア北東部はもちろん、核問題やカシミール紛争などを抱える南アジアも検討対象です。世界で、今、起こっている緊張関係に対して、何ができるのか、またこうした緊張関係をなくすにはどうすればいいのかを考えていきます」と鹿毛さん。

 日本に関するプログラムでは、まずは原爆問題。ワークショップ「広島・長崎の悲劇 Tragedy of Hiroshima and Nagasaki」(午後1時〜)では、被爆者による証言も行われる。さらに「Obasan」でおなじみの作家ジョイ・コガワさんも登場。コガワさんは原爆問題にも深い関心を抱いており、日系人・クリスチャンとしての立場から見た原爆問題について意見を述べる。また韓国人被爆者によるスピーチもあり、多角的な視点から原爆問題にアプローチしていく。

 原爆問題に関しては、UBC以外でもイベントが行われる。イエールタウンのラウンドハウス・コミュニティセンター(181 Roundhouse Mews)では、午後7時30分から、井上ひさし原作 「父と暮らせば」の戯曲リーディングを開催。宮沢りえ主演の映画が大ヒットとなった同作は、被爆を経験した娘の恋を亡くなった父親が応援する、涙と笑いのストーリーだ。英訳された台本をもとに、日系俳優達が朗読を行う。その後には、被爆者による証言も行われる(日本語・英訳あり)。また同コミュニティセンターや、ガスタウンのStoryeum(142 Water Street)では、原爆写真展も 行われるほか、核問題の会議でも、さまざまなプログラムが用意されている。

 ワークショップ「アジア系カナダ人への補償(Redress for Asian Canadians)」(午後1時〜)は、最近、議論を呼んでいる中国系移民へのかつての移住禁止、人頭税問題について、日系カナダ人のリドレス運動などをモデルケースに考える、というユニークな試みだ。当時のリドレス運動のリーダーだったアート三木さんもパネラーとして参加する。

 鹿毛さんがモデレーターを務める、ワークショップ「撫順の奇跡 Miracle in Fushun」(午後1時〜)も興味深い内容だ。「1945年に日本がアジア太平洋戦争に敗北した後、満州国にいた日本の軍人などは、シベリア抑留を経て中国の撫順戦犯管理所に収容されました。彼らは非常に人道的に扱われ、寛大な措置を受けた。その過程で収容者は、民間人の虐殺や略奪を含めた中国に対する自らの行いを反省するようになったんです。中国側には、彼らが将来、日中友好に役立つ人材になるという期待があったんですね。実際に帰国後、現在にいたるまで半世紀以上も証言活動を続けている人がいます」と鹿毛さん。この事例は、あまりカナダでは知られておらず、戦争犯罪とその償いを考えるうえで、大きなインパクトを与えそうだ。

 さらに、日本をフォーカスしたものとして、「日本国憲法第9条―平和に向けた人類の共有財産(Article 9 of the Japanese Constitution: Common Treasure of the Humankind for Peace)」も行われる。「9条が国際的にどういう意味合いを持つかがテーマ。平和憲法を持つコスタリカからもスピーカーを招きます」と鹿毛さん。バンクーバー9条の会からも代表が参加して、当地の活動を、運動の国際的な広がりの最初の例として紹介し、運動の国際的な拡大を訴える。こちらは 日の午後1時から、UBCでの開催となる。

親子で参加できるイベントも
 もう少し気軽に参加できるイベントとしては、24日午後12時から、ダウンタウンで行われる「ピースウォーク&フェスティバル」がある。これはバラード橋近くのシーフォース・パークから、ウエストエンドのサンセットビーチまで、平和への願いをこめて、みんなで歩くというもの。サンセットビーチでは、コンサートやキッズ向けのフェイスペイントなども行われ、家族で楽しめるイベントだ。

  子ども向けのイベントとしては「私たちの住む世界、そして私たちが夢見る世界(The World That We Have, The World That We Want, Written in Colours)」もある。これは子どもたちが、それぞれが夢見る新しい世界を、絵で描くという楽しいイベントだ。8〜 歳の子どもが対象で、 日午後1時から、ネイティブ・エデュケーション・リソース・センター(285 East 5thAve.)で開催される。

 アート系のイベントもおすすめだ。25日午後7時30分からは、日本でおなじみの灯篭流しが行われる。参加者はランタンに平和へのメッセージや絵を描き、海へと流す。場所はサンセットビーチを予定。こうしたイベントは、英語が苦手でも楽しめるうえ、原則無料なので、参加しやすそうだ。私たちや子ども達の未来に関わってくる平和問題。「自分にできることは何か」、この機会にじっくりと考えてみたい。

(取材 宗圓由佳)

 

世界平和フォーラム
(World Peace Forum 2006)


日時: 6月23日(金)〜28日(水)
場所: UBCを中心に、バンクーバー市内のコミュニティ・
  センターや公園など(イベントで異なる)
料金: 通し参加225ドル、1日料金50ドル
  (ディスカウント料金あり)。
文化芸術関係のイベントは参加無料。
詳細・登録はウェブサイトで
問い合わせ:604-687-3223
Web:www.worldpeaceforum.ca


鹿毛達雄さん 歴史家・著述家     東京都出身。世界平和フォーラムには、同フォーラム協会のほか、アジア地域会議準備委員会のメンバーとして参加。JCCA人権委員会やバンクーバー9条の会でも活躍している。