SPECIAL 2006

2006年5月18日 第21号 掲載


今年もたくさんの感動とドラマが生まれた!
BMOモントリオール銀行プレゼンツ
第35回 バンクーバー国際マラソン


ゴール付近の沿道から

走者にはゴールでサーモンをかたどったメダルが授与される

 雨がしとしと降るあいにくの天候の5月7日、今年も全世界35カ国から1万4395人のウォーカー、車椅子を含むランナーがバンクーバー国際マラソンに参加した。日本からも、クラブツーリズム主催の“地球を走ろう”ツアーからフルマラソン29人、ハーフ9人、日立マラソンツアーからはフル13人、ハーフ10人など、大勢が挑戦。その中には昨年、“ジャパニーズ・テリー・フォックス”と沿道で呼ばれた沖縄の島袋勉さんの姿もあった。

◆男子陣トップランナー、僅差のゲーム
 今年のフルマラソン男性1位は、昨年度に続いてエチオピア出身でNY州ピークスキルから出場したカッサン・カビソ選手で、タイムは2時間18分29秒。前回のダントツ1位より3分ほど遅かったが、2位のジョセフ・カフグ選手(ケニア)と4秒の僅差で栄誉の座を死守した。同じくフルの女子1位は、ポーランドのマルゴルザータ・ソバンスカ選手で、2時間37分6秒の大会レコードを打ち出す快挙。2位のマリー・アコア選手(カリフォルニア)とは実に8分27秒もの差を付けた。バンクーバー国際マラソン今年度賞金総額は2万5千ドルに上る。


●フルマラソン日本人男子1位●

奥本正さん(46) /千葉県市川市
3時間12分8秒、男子総合117位、年齢別11位
「目標の16分台を大幅に縮められて嬉しい。雨が涼しくて良かったです。バンクーバーは5回目の挑戦。これまで走った中国、ケベック、スイス、フランス、ニューカレドニアなど他のコースに比べ、アップダウンが少なくて走りやすいですね」。この日がフルマラソン参加49回目という超ベテランランナーは、バンクーバーでの自己ベストを更新!

●フルマラソン日本人女子1位●
山口美恵さん(33)/福岡県大野城市
3時間38分1秒、女子総合93位、年齢別25位
「フルマラソンは今回で10回目。バンクーバーは初めてですが、楽しませてもらった。人が優しくて親切ないい街。外国ということで、今日は遊び心いっぱいにチアガールのコスプレで参加しました(笑)。日本人女子1位?やった〜!」。現在彼氏大募集中、マラソンタイムは問わず、とのこと。男性諸氏、奮ってご応募アレ。



 

 

 

 

 

 

 

 

◆フル参加男子最高齢は日本人男性!
 フルマラソン日本人男子トップは、千葉県市川市の奥本正さん(46)で、男子総合117位、年齢別11位の3時間12分8秒。同じく日本人女子のトップは福岡県大野城市の山口美恵さん(33)で、女子総合93位、年齢別25位の3時間38分1秒だった。車椅子部門でも、東京の西村ヒロユキさんが4時間56分40秒で2位と健闘。また、フルマラソンの男子最高齢者は神奈川県横浜市の水谷良三さん(78)で5時間38分40秒、女子最高齢はニューメキシコ・サンタフェのマリー・カーさん(86)。全般的に若者より、高齢者の活躍が目覚しい印象だ。昨年度は快晴で気温も高く、体調を崩す参加者が多かったが、今年は寒さがむしろランナーにとって心地良いコンディションとなり、皆、元気にゴールインした。


益浩晃さん(62)/広島県東広島市/フル
3時間21分4秒、男子総合205位、年齢別1位
「マラソンは30回目で、その半分は海外での参加。40年前、長年勤務したマツダが最初に海外進出した土地がバンクーバー。いつかは来たいと思っていた場所なので感慨深い。3時間18分台を狙っていたけれど、2分遅かった!寒さで筋肉が硬くなってしまったのが原因。でも、年齢別ではトップの自信があります(笑)」お見事、予言どおり年齢別1位を獲得!

葛川佳代さん、野島未来さん(共に20代)
/バンクーバー/ハーフ

2時間38分34秒、女子総合3133位、年齢別235位
「ワーホリで滞在中です。日頃全然運動していないけど、楽勝で完走できました!参加したのはダイエットのため(笑)」。学校が一緒の友人同士で参加のおふたりは、仲良く同タイムで余裕のゴールイン。

長門和子さん(60)/大分県佐伯市/フル
5時間37分59秒、女子総合1490位、年齢別17位
「8回ほど出場しているホノルルマラソンは、ダイヤモンドヘッドがちょっと大変だけど、比較的走りやすいコース。それに比べてバンクーバーはきつかった。でも、途中少し歩いて景色も楽しみました。日頃は5〜7km走っています」マラソン歴10年のエキスパートランナーはマイペースで完走!

稲葉寿美(31)/青森県南津軽郡/フル
5時間58分58秒、男子総合1983位、年齢別320位
「今回は3年半ぶり、7回目のフルマラソン。過去参加したのはホノルル、LA、ナイアガラ、スイス、オーストラリアなど、すべて海外。パスポートが7月に切れるので、ちょうどゴールデンウィークだし、これが最後かなと思って参加しました。自己ベスト?5時間43分台くらいです(笑)」。来年もお待ちしています!

水書かほる(50)/東京都江戸川区/ハーフ
2時間45分26秒、
女子総合3312位、年齢別230位
「主人がフルマラソンをやっていて、私も応援だけではつまらないからと、始めました。バンクーバーは12回目だけど、1年前にドブに落ちて走れなくなって(笑)。今回は1年ぶりの復帰戦なので、今日は辛かった!」

鎌田智子さん(50)、紀美男さん(54)ご夫妻/
北海道函館市/フル

妻:3時間54分53秒、女子総合241位、年齢別17位
夫:3時間18分48秒、男子総合179位、年齢別9位
奥様の智子さんは、ご主人の紀美男さんのトライアスロン仲間から勧められて去年からマラソンを始めたビギナー。とはいえ、この記録!さすがアスリート夫婦。
妻「ほぼ毎日10km走っています。フルマラソンは3回目で、海外は初めて。応援が外人さんばっかりでちょっと寂しかった。苦しいけど、終わるとまた走りたくなるのがマラソン。でも今回は先にナイアガラなどの観光に行って来たので、マラソンの気分じゃなかった(笑)」
夫「トライアスロンの中でも一番ハードな、水泳3.8km、バイク180km、そしてフルを走るロングという競技をやっています。今日は28日に長崎で行われるトライアスロンの大会のウォーミングアップ(笑)」恐れ入りました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(文・藍智子/写真・菊池友理)



ジャパニーズ・テリー・フォックスが帰ってきた!
24時間マラソンに登山、
パワーアップした義足のランナー



沿道の声援の背中に笑顔でゴールを目指す島袋さん

沖縄県うるま市立具志川小学校の校内マラソンに参加(2006年3月3日)

ホノルルマラソン初完走までの道のりを記録した著書

◆昨年のタイムを約50分も短縮!
 昨年のバンクーバー国際マラソンで、沿道の熱い声援を浴びながら8時間40分44秒でゴールした、両足義足の島袋勉さん(43)がパワーアップして帰ってきた。この1年の間に、オーストラリアのゴールドコースト、NYシティ、ホノルルと3回の海外大会に、国内では久米島マラソンの他、なんと長野と愛知で行なわれた 時間マラソンにまで参加。その上、ハーフや10Kmクラスの短距離は数えきれないほど出場してきた。「普段からなるべくエレベーターを使わず階段を利用したり、自転車で通勤したりしています」と、相変わらず努力をたゆまない。24時間マラソンでは、80Km前後も走った。その成果は今年の記録を見れば一目瞭然。7時間33分44秒と、昨年のタイムを1時間近くも短縮した。

◆ドキュメンタリー番組にも出演
 沖縄で大規模な車両点検の会社を経営する島袋さんは、5年前、鉄道事故で両足を膝から失った。足だけでなく、事故の衝撃で記憶障害という重大な脳障害も被ったが、持ち前の『あきらめない』精神で、「社会復帰は無理」と告げた担当医も驚愕するほどの奇跡的な回復を遂げ、現場に戻った。そして『あきらめない』習慣を付けるために始めたのがマラソンだ。ホノルルやバンクーバーでの島袋さんの活躍ぶりは日本のテレビ局にも知れ渡り、昨年、フジテレビの人気番組『奇跡体験!アンビリバボー』でも取り上げられた。現在は教育委員会からの要請で、小中学校で講演することも増えている。

◆ハプニング勃発「妹の姿が見えない!」
 今回のレースには、妹の栗田智美さんご夫妻が伴走したものの、工具係のはずだった智美さんが遅れてはぐれてしまい、「義足の微調整に必要な工具がなかったので、足を痛めてしまった。遅れるのはいいけど、工具だけでも渡せよって感じです(笑)」。とはいえ、兄に遅れること約9分、7時間42分40秒のタイムで智美さんがゴールに姿を見せたときには、島袋さんもほっとした笑顔を見せた。これまでもずっと兄のマラソンを見守ってきた智美さんにとっても嬉しい悲鳴だろう。そんな仲の良い島袋兄妹は昨年12月、共著で『義足のランナー/ホノルルマラソン42.195Km への挑戦』(文芸社)を上梓した。

◆マラソンを通じ世界各地で交流が
 昨年は、島袋さんの妻・順子さんがブログに書き込んだのをきっかけに、バンクーバーに住む日本人学生やワーホリの若者らが応援団を結成、情熱的な交流が生まれた。その中の1人で、今もバンクーバーに残る松田義範さんは今年も沿道に駆けつけた。ゴールで島袋さんを迎えた村本修さん・喜子さんご夫妻(神奈川県川崎市)は、ホノルルマラソンに参加したときに島袋さんと知り合い、その後沖縄へ訪ねるなど親交を深め、バンクーバーでの再会が実現。修さん自身もフルに挑戦して4時間4分23秒で見事完走し、そのままマラソンの同志をゴールで待ち続けた。



〜あきらめない男・島袋勉物語続編〜
次なる夢はエベレスト登頂!



 島袋さんの次なる野望は登山である。それも世界最高峰のエベレスト制覇だ。去年の年末から今年の年始にかけ、さっそくアルゼンチンのアコンカウアという、アジア大陸以外では最も標高の高い6962mの山に挑戦してきた。

◆子どもたちに問いをきっかけに
 とある小学校での講演会で子どもたちに「島袋さんの夢は何ですか」と問われた。「そういえば夢は何だったろう」。少年時代から振り返り、一つひとつ検証していった。そして、エベレスト登頂という夢を思い出した。「足が無くなったくらいで夢をあきらめたらいけない!」。その日以来、エベレスト登頂を目標にトレーニングを開始した。

 驚きの連続だった。専門ショップに出掛け、登山の相談をした店員は「凍傷で足の指をすべて失ったのにも関わらず、『登山の仕方を工夫しなくては』と言うんです」。島袋さんに同行してくれることになった登山隊の仲間も、山で婚約者を亡くしたり、仲間が目の前で滑落して埋葬したなど、あまりに壮絶な体験ばかり。それでも皆、山の虜になっている。「始めはみんなおかしいんじゃないかと思って(笑)」。ところが、アコンカウアを下山する頃には、島袋さんもしっかりと「その仲間入りを果たした(笑)」

◆水や空気、日常に関する気持ち
 島袋さんがエベレストを目指していると聞いた専門家が勧めてくれたのが、アコンカウアだった。体力的なことは「マラソンができるんだから大丈夫だろう」と、意外にすんなりOK。さすが山の世界は懐が広い。アコンカウアは奇しくも5000m付近で肉体の膨張に義足が耐えられず、登頂は断念した。しかし、年内は日本国内の山々を冬山を含めて片っ端から登り、来年は、リサーチとしてエベレストのベースキャンプまで登ることになっている。登山用の義足だけでなく、ピッケルやアイゼンも特別なものが必要で、用具の開発も必要。「登山に比べれば、マラソンなんて楽だと思える。山は、食べ物だって運ばなければないし、水だって氷を溶かさないと飲めない。標高が高いとすぐに息も切れる。登山を始めて、日常生活にある当たり前のことに感謝するようになった」

 「マラソンでも登山でも、辛ければ辛いほど、厳しければ厳しいほど、あきらめない習慣をつけるという目的に符合する。苦手なものほど挑戦して克服したい。それができたら何でもできるような気がするんです。僕の姿を見て、子どもたちやいろんな方々が自分もがんばろうと思ってもらえたら嬉しい」。世界の登山家としてその名を馳せる日も、そう遠くはないようだ。

(文・藍智子/写真・菊池友理)


長い戦いがついに終了!去年の記録を1時間近く縮めてのゴール

里美さん「とても速くて全然追いつけなかった(笑)」
島袋さん「雨で松葉杖が滑りやすくて。天気が良かったらもう少しタイムを上げられたと思う。あと工具もあればね(笑)」


標高6.962m、アジア大陸以外で最も高い山、アルゼンチンのアコンカウア5000m付近で















◆ 島袋勉さんのブログ:
 http://blog.livedoor.jp/gisoku/
◆ 会社HP:http://www.rasi-ma.co.jp/