SPECIAL 2006

2006年5月4日 第19号 掲載


日加ヘルスケア協会2006年度健康講座シリーズ第1回
「ファーストエイドを学ぼう!」
緊急時に備えるためのファーストエイド・トーク


会場の様子


人工呼吸用ポケットマスク


頭部の固定

Jaw thrust下顎挙上法

 4月19日セントジョン・アンビュランス・バンクーバー支部(St. John Ambulance Vancouver Branch)で日加ヘルスケア協会主催の日本語通訳つきファーストエイド・トークが行われた。セントジョン・アンビュランス講師のキース・プレストン氏がファーストエイドに関する法律、手当時に自らを守る方法、緊急時における現場管理やABC(気道・呼吸・循環)診断について実演を交えながら説明した。

◆手当に関する法律について
 ファーストエイドとは緊急時に救急車や消防車が到着するまでの数分間、その場に居合わせた人が行う初期的な処置のこと。しかし後日法的に訴えられるのではないかと手当をすることをためらう人がたくさんいるらしい。救助者が後で訴訟を起こされないようBC州やほとんどのアメリカ西部の州ではGood Samaritan Actという法律がある。手当に当たる際以下の原則を守ることが大切だとプレストン氏は述べる。

@善意をもって無償で手当をすること。
A手当を受ける人に「私は○○です」と名乗り、助けが必要か聞かなくてはならない。
B手当を受ける人から助けてもよいと許可を得なければならない。もしだめだと言われたら助けてはならない。12才以下の子供の場合保護者から許可を得る。傷病者が意識を失っているように見えても名乗り、助けが必要か聞かなければならない。返答できない状態だと「implied consent(黙示の承諾)」を得たとし応急手当をほどこしてもよい。
C手当を始めたら中途でやめてはならない。
D訓練を受けた範囲のことしかしてはならない。

◆手当時に自らを守る方法

 血液等の接触による肝炎・HIVエイズ感染から身を守るため手当の前後によく手を洗い、防護用にlatex手袋を使用すること。

 口対口の人工呼吸は危険。講習では「ポケットマスク」の使用を紹介。このマスクには一方向弁がついており、空気はマスクに入るようになっているが、患者が嘔吐しても吐しゃ物は弁によって止められる構造になっている。

◆緊急時における現場管理
 緊急時に最も大切なことは早急に911番することだとプレストン氏は強調する。

@「私が救助します」と宣言することで現場の管理を受けもつ。
A周囲の人に声をかけ協力者を求める。911番への通報や交通整理などをしてもらうため。
B現場の安全の確認。自分自身が怪我をすることがないよう障害・危険物を取り除く。感染から身を守るためlatex手袋をつける。
C傷病者が何人いるか確認。
D傷病者に名乗り、救助する許可を得る。首や背骨が折れていると動かしては危険。首の骨を折っていたら救助が来るまで頭部が動かないようにする。胸にひじをおき、ほお骨の部分を押さえながらもう片方の手で頭をおさえる(右写真参照)。
E傷病者に意識があるか確認。
F早急に救急車・消防車を呼ぶ。協力者に傷病者の数と場所を言い、911番をダイヤルするよう指示する。

※ 公衆電話や家庭の固定電話からダイヤルした場合、電話の所在地が緊急通報受付センターに自動的に通知される。そのため電話で話せない状態にあってもダイヤルだけして受話器を置いておけば救急車・消防車・警察が駆けつけてくれる。これは強盗が侵入したときなど犯罪の際にも応用できる。携帯電話からもかけられるが、所在地が通知されないのでなるべく固定電話を使用するべき。

◆ABC(気道・呼吸・循環)診断
●Airway 気道
 声をかけて返事ができれば開いているが、なければ気道が開いているかわからないのであご先を頭のほうに引きあげ気道を確保する。自分の耳を傷病者の口に近づけ15秒間呼吸の音が聞こえるか、吐く息を感じられるか確認。しかし首や背骨に損傷が疑われるときはしてはならない。そのような場合jaw thrust(下顎挙上法)というほお骨とあごの付け根をはさみ受け口になるように下あごを持ち上げる方法で頭部を動かすことなく舌根を気道からはずすことができる(右写真参照)。

問 「首の損傷はどう確認できるのですか?」
答 「外部からはわからないので、負傷者が『首が痛い』と言ったら首の損傷を疑うべきです。手や足先の感覚がない、痺れていると訴えても同じく首が損傷している可能性が考えられます。また事故状況から判断することもできます。はしごの上など高い所から落ちた場合も首を怪我している可能性があります。」

●Breathing 呼吸
 気道が開いているのを確認できたら、正常に呼吸をしているかチェック。15秒間呼吸数を数え、4倍して1分あたりの値を計算。「1 one-thousand, 2 one-thousand, 3 one-thousand…」と数えるとone-thousandと言うのに1秒ほどかかるので、ほぼ正確に15秒を計ることができる。

正常な呼吸数は
成人(8才〜)1分間に10〜20回
幼児(1〜8才)1分間に20〜30回
乳児(0〜1才)1分間に30〜50回

 4分間酸素が欠乏しただけで脳障害が起こるため、呼吸がないと判断したらすぐに人工呼吸をしなければならない。人工呼吸用のマスクがないときは傷病者の鼻をつまみ、口から口へ空気を送る。送る空気の量は胸部が膨らむ程度。5秒間に1回空気を送り、これを1分間続ける。(8才以下の乳幼児の場合3秒間に1回)。その後10秒間呼吸がもどってきたか観察。呼吸が回復していないようなら、再び5秒間に1回空気を送る。以上を救急車が来るまで続ける。

●Circulation 循環
 まず心臓が動いているか脈拍を確認。親指に近い側の内手首、または喉仏の脇、喉仏とあごの間に中指と人差し指をあてる。

 次にショック状態(体内へ十分に酸素が行きとどかず、体が異常反応を示している状態)か肌を観察。顔色が青白い、皮膚が冷たい、またはじっとり湿っているか見る。

 出血や骨折の有無を確認するためすばやく全身を触診。出血があれば手に血がつく。骨折はあるべきでない所にこぶが触れたりする。内出血の場合は腹部が異常にやわらかいか異常に硬い。皮膚が紫や青色に腫れていることもある。

◆ABCの確認後、救助が来るまで

 傷病者を毛布などでくるみ暖かくしておく。「救助が向かっている」など話しかけ続ける。何も飲ませたり食べさせたりしてはいけない。 救急蘇生法の詳細は別途ファーストエイド講習で学ぶことができる。
 日加ヘルスケア協会は日本語通訳つきのファーストエイド講習(4時間・8時間)を後日開催予定。参加希望者は電話604-773-6034 またはメールnikkahealth@hotmail.comまで連絡を。

 この記事はセントジョン・アンビュランスから許可を得てその講演を要約したものです。ここに記されていることを実行される方は、各人の責任において行ってください。それによって生じたいかなる損害に対しても日加ヘルスケア協会およびバンクーバー新報は責任を負いません。

(取材 船橋敬子)

 主催の日加ヘルスケア協会は日本語を話す、または日本の文化的背景を大切にする人々の心身を、より健康にすることを目指して設立された非営利ボランティア団体。

 セントジョン・アンビュランスは災害・事故・急病時など緊急時に行う手当法の普及活動を目的とした団体。