SPECIAL 2006
2006年2月16日 第8号 掲載
![]() 多賀敏行在バンクーバー日本国総領事と水野好紀貿易懇話会会長のお二人 |
![]() 講演する多賀敏行在バンクーバー日本国総領事 |
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企友会・バンクーバー日系ビジネス協会が、先月31日、ダウンタウンのリステルホテルで新春特別講演会を開催した。新年会も兼ねた今回は出席者も多く、多賀敏行在バンクーバー日本国総領事と水野好紀貿易懇話会会長のお二人を講師に招いての、盛大な講演会となった。
| 『これからの日本外交』 講師:多賀敏行氏 (在バンクーバー日本国総領事) |
2005年は戦後 周年の年Soul-searchingの年でもあった昨年度
昨年は、日本の国連安保常任理事国入りに反対するデモが中国各地で行なわれ、また終戦後60周年ということもあり、我々日本人とは何であったのかというSoul-searching(内省)の年となった。ここバンクーバーでも、5月4日に中国系カナダ人によるデモがあり、日本について語ることの重要性を認識した。国連における各国の分担金は、米22%、日本20%、英6%、仏6%、中国2%、露1%となっており、日本は米国に次いで多くの金額を負担している。また、ここに挙がっている日本以外の国々は、皆常任理事国である。
戦後の歩み・世界に誇れる日本の功績
日本はかつて、植民地支配と侵略によってアジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えたのは事実であるが、戦後平和国家として再出発した日本の立派な功績については身内について自慢するのは控えるという日本文化も手伝い、あまり語られない。以下は世界に対する日本の貢献の一部で、このように自国が立派な実績を持つことも日本人として知るべきである。
【専守防衛】
自衛のための必要最小限度の防衛力しか保持せず、攻撃的兵器を保有しない。
・戦後、一度たりとも武力を行使したことがない
・防衛費の対GNP比は1%程度。防衛政策、防衛力も透明
・核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず(非核三原則)
【国際紛争助長の回避】
武器の供給源とならず、武器の売買で利益を得ない(武器輸出三原則)。
【国際の平和・安定への積極的貢献】
国連予算の2割を負担する以外にも、日本は1991年から10年間にわたり世界最大のドナー国で、過去10年間で世界のODA(財政的・物的支援)の5分の1を貢献した。また、人的貢献としては、カンボジア・モザンビーグ・東ティモール・ゴラン高原などにおける国連PKO参加
やインド洋上での給油活動など、自衛隊による対テロ協力支援活動、イラクにおける自衛隊による人道復興支援活動などが挙げられる。
カナダとの関係
日本は市場経済の国で、成熟した民主主義国家、平和国家で、人権を尊重する国である。カナダとこれらの基本的価値を共有している。カナダから見た日本はComfortableな国である。
日本についてFactsを知ることが大切
マスコミを含め、身内や自国を過小評価することの多い日本人であるが、実際に日本はどんな国であるかを知ることが大切である。
日本の経済的大きさ
【日本のGDP(国内総生産)】
・中国の3倍、カナダの5倍、インドの7倍
・日本>中国+韓国+ASEAN+インド+その他のアジア
・日本≒英+仏+伊
・日本のGDPの2%=シンガポール、マレーシアのGDP
【日本とBC州の経済関係】
・BC州の輸出総額310億ドル(2004年)
米国65 %、日本へ12%(38億ドル、対日輸出全加総額 億ドル)、中国へ4%
・BC州の輸入総額328億ドル(2004年)
米国から39%、日本から14%( 億ドル、対日輸入全加総額134億ドル)、中国から18%
日本は良い社会!
日本に住んでいると、日本の悪いところばかりに目が行き良いところに気付かないが、傍から見れば、これほど良い国・良い社会は珍しいといえる。例えば、宅配の荷物が指定した時間どおりに届くなどの効率的な社会、治安の良さ、機能している健康保険システム、訴訟社会ではないこと、金銭以外のものにも価値があるという考え、などが挙げられる。
自分の頭で考えることが大切
私は学生時代、日本の著名な学者が書いた本の中で「欧州の列車内で談笑している乗客たちは、列車が国境を越えるたびに使う言語を変える」という箇所に出合い、ヨーロッパ人とはすごい人たちだなあと感心したことがあった。実際にスイスで勤務して、それは誇張であることを知った。二カ国語を話せるのは国境近くに住んでいる人たちだけで、それ以外の人たちは自分の母語である1つの言語しか話せないというのが普通である。過去の曲がって伝わった事実には、マッカーサーの「日本人は12歳」発言、ECの報告書の「日本人はウサギ小屋に住んでいる」、ブット・パキスタン外相による「日本人はエコノミック・アニマル」発言などが挙げられるが、それらも真意が伝わらずに日本は中傷されたと思い込んできた。
「日本人はウサギ小屋に住んでいる」
私は「そんな発言はあるはずない」と思い、20年かけて事実を調査した。その結果をまとめたものが「エコノミック・アニマルは褒め言葉だった」(新潮新書)である。例えば括弧《ウサギ小屋》発言についてだが、フランスでは、一般的に集合住宅を「cage
a lapins」(カジュ・ア・ラパン=ウサギ小屋)と俗称する。来日してアパートが林立する様を見たフランス人のEC関係者が「日本には《ウサギ小屋》がたくさんある」とフランス語で感想を述べたものを、ブリュッセルにある日本の通信社の現地人秘書が俗称であることに気付かず、そのまま「Rabbit
Hutch」と英訳してしまったことから誤解が生じた。情報は鵜呑みにせず、自分で分析することが大切である。
韓流ブーム
日本語を少し話せる在バンクーバー韓国総領事と、韓流ブームの火付け役となった「冬のソナタ」の《ヨン様》こと、ペ・ヨンジュンについて話題になった時のこと。「ヨン様と、ヨンさんはどう違うのか」と問う韓国総領事に、「《さん》はカジュアルで、《様》はもっと丁寧で正式なものだ」と答えると、「彼は日本で尊敬されているのか」と非常に喜んでくれた。そういった一般大衆レベルでの韓国との関係は大変良くなっており、また民主主義という基本的価値の共有という部分でも、今後韓国とはもっと親しくなってゆくと思う。
多賀氏の各国語でのモノマネやジョークを交えた巧みな話術によって、難しい外交の話も非常に親しみやすく、出席者は皆熱心に聞き入った。
| 『航空会社の話』 講師:水野好紀 (日本航空バンクーバー支店長/バンクーバー貿易懇話会会長) |
航空会社という事業
旅客、貨物・郵便の航空運輸サービスの提供が主な事業で、運輸形態には定期便と「チャーター便」と呼ばれる不定期便がある。また、運送契約は「約款」と呼ばれるあらかじめ定型化された契約条項に基づいて締結する形態を取っている。船と同様に「地点間輸送」が特徴で、空港と航行援助施設(空路上の灯台のようなもの)があればどこからどこへでも行くことができ、そのため、相対的に長距離を短時間で輸送することが可能である。商品(座席などのスペース)は再販できないため、運営上のリスクとなる。同時に重量にも制約がある。
飛行経路について
実際の飛行経路は、「どの飛行地点においても、1つもしくは2つののエンジンだけでどこかの空港まで3時間以内に到着できること」という決まりがあるため、最短距離より若干ずれる。つまり、必ずどこかの施設付近を航行しなければならないのだが、これによって万一の時でも常に安全が確保されている。
飛行機はチームワークで飛ばす
一機の飛行機が飛ぶためには、パイロットや客室乗務員(フライトアテンダント)を始め、旅客業務担当(チェックイン・ゲートでの業務)、貨物・手荷物搭載担当、ケータリング(機内食など)担当、整備担当、オペレーション担当など、100人近いスタッフの手が必要である。空港に着陸した飛行機が再び離陸するまでの持ち時間は僅か2時間。その短時間の間に、機材の安全性の確保や1時間ほどかかる給油も含め、それぞれの任務を確実にこなさなければ、飛行機は飛ぶことができない。なお、以前「スチュワーデス」と呼ばれた客室乗務員はJALでは現在、「フライトアテンダント」で統一されている。
航空会社はあとから参入する
一般的に事業は、商社などのように新しい土地で新しいビジネスを開拓するものだが、航空会社はすでにある程度経済的に確立された地域に後から参入する事業である。航空事業は、それなりの需要が無ければ成り立たない。近年、中国の経済成長が目覚しいが、それに伴い、中国・北米間の直行便も増えている。ボーイング社の予測では、2004年から2023年の24年間にかけ、航空業界の需要伸び率は、北米・ヨーロッパが4.1%に対し、中国は8.1%、南米8.0%などとなっている。
日加間の旅行需要
日本はカナダにとり、大きな市場である。観光定期会議では、両国合わせて100万人の旅行者を目指すことを目標としているが、現在、日本を訪れるカナダ人の数は約
13〜14万人で、カナダを訪れる日本人はその4倍程度となっている(同時多発テロ、SARS問題が起きた年度を除く)。両国とも、それぞれに誘致キャンペーンなどを行なっているが、この数値を引き上げる要となっているのが航空会社である。しかしながら、便数や目的地の拡大と需要とのバランスは今後の課題といえる。
ジェット燃料の急騰
原油の高騰化によって、ジェット燃料も急勾配で値上がりし、航空機利用者への負担を余儀なくさせてもらっている。しかし、1カ月連続で燃料価格が65ドル/バレルを下回った場合、負担金額を値下げし、また、連続で40ドル/バレル以下となった場合は負担金自体を廃止することが定められている。
格安航空会社
LCC(Low Cost Carrier)と呼ばれる格安航空会社が台頭してきている。北米地区ではウエストジェット、ハーモニーエアウェイズ、サウスウエストなど、日本ではエアドゥー、スカイマークなどがそのLCCに該当する。自社内の路線だけで飛ばし、乗り継ぎなどのコストを極力抑えて低価格運賃を打ち出したもの。日本航空でも、国際線ではJALウェイズ、国内線ではJALエクスプレスを運行している。
最後にJALのプロモーションビデオの上映があり、水野氏は「これからもJALを宜しくお願いします」と結んだ。
航空輸送の枠組み
◆国際民間航空期間(ICAO=International Civil Aviation Organization)
1944年、国際民間航空条約(シカゴ条約)に基づき設立された国連機関の1つで、本部はモントリオール。国際航空の安全・保安・環境保全の他、事故の際の賠償責任のような法的枠組の確立、国際航空運送の経済面に関するガイドライン作り、監査事業などを行う。
◆国際航空運送協会(IATA=International Air Transportation Association)
1945年、民間定期国際航空会社の組織で、本部はジュネーブとモントリオールの2カ所。各航空会社相互間の乗り継ぎの仕組み(金銭の分配など)の作成や、旅行代理店の審査などを行なう。
◆国土交通省航空局(JCAB=Japan Civil Aviation Bureau)
国土交通省管轄の航空事業を監督する行政機関。
◆国際民間航空条約(シカゴ条約)
各国の上空通過、緊急着陸、自国発の貨客輸送、相手国発の輸送、自国発着の相手国と第三国間輸送(経由便)、自国経由の第三国間輸送、自国と無関係の第三国間輸送を承認する条約で、1947年に発効された。戦闘地域、軍事施設関連は除外される。
日本航空沿革
1951年8月創立。 '54年2月東京・ホノルル、東京・サンフランシスコ間で国際線運行開始。'68 年バンクーバー路線運行開始。'87年民営化。'02
年日本エアシステム(JAS)との統合。'06 年国際線・国内線事業会社の統合により、現在に至る。保有機材はボーイング747・ 機、同777・26機など、計277機。'04
年度より、東京・バンクーバー間にも全客席にパーソナルテレビが搭載された新機材747‐400を導入した。
(文・藍智子/写真・斉藤光一)
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企友会インフォメーション |
プロフィール |
プロフィール 多賀敏行(たが・としゆき) 1950年9月22日生まれ。一橋大学法学部卒、ケンブリッジ大学にて法学修士号取得。‘74年、外務省入省。外務省アジア局、外務報道官組織勤務を経て、在マレーシア大使館一等書記官、在ジュネーブ日本政府代表部公使を歴任。‘03年、在バンクーバー日本国総領事として着任。主な著書は「エコノミック・アニマルは褒め言葉だった」(新潮新書)、「ワンランクアップの英文法」(筑摩書房)、「シャープなリンゴとルーズなトマト」(小学館)など。 |